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彼女との距離と夏の訪れ。


彼女がびしょぬれで僕の部屋に現れた。
「突然雨が降ってきたの……」
と、言いながら、泣いていた。

「涙じゃないの。雨なのよ」
僕は彼女を部屋に入れ、タオルと着替えを貸した。

僕は彼女の手を握りながら、
「……」
「……」
お互い、何も語らず、ただ、心を温めあった。

雨がやんだようだ。
「このシャツ借りていい?」
「勿論」

僕は、彼女を改札まで送る。
「ありがとう」
と、彼女が笑顔になった。
「またね」
「うん」

僕と彼女はまだ付き合っているわけじゃない。
けれど、これでグッと距離が近づいた気がした。

改札を入っていく彼女の背中を見送った。
「ん……」

彼女に貸したシャツは背中に「ちんちん君」と書いてあった。
ヤバい、面白シャツだった。

「……」
もうすぐ夏になる。




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