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長期投資の入門 第3回 企業の業績は長期的に維持されるのか

【編集部より】


 長期投資について理論と実践を進めている山本潤氏の過去コラムシリーズを再掲載いたします。普遍性の高い内容ですので、色褪せず参考となるものと考えております。
 なお、内容は執筆時点(2022/8)のものですので、留意の上ご覧下さい。


【企業の業績は長期的に維持されるのか】


 仮に企業規模が拡大せずにずっと売上や業績が横ばいだと仮定しましょう。
 それでも毎年の配当の再投資により投資家の持ち分は複利で増えていきます。
 このことを複利効果と呼びます。
 たとえば2%の配当利回りならば2倍になるのに50年はかかりません。
 もう少し早くて35年で2倍になることを計算で確認しました。

 (1.02^35=2.00) 1.02の35乗が2


 投資家が2%の配当利回りであっても資産を単利の50年でなく、再投資の複利35年で2倍にできると同様に、企業は利益が横ばいであっても再投資によって企業規模を複利で増やしていくことができるのでしょうか。
 残念ながら、それは「できない」のです。

 100の売上で10の利益を出す企業(利益率10%)があるとしましょう。
 市場が飽和していてこれから将来を考えても100を売るのが精一杯であるときどうするべきでしょうか。毎年の10の利益を使って人を新たに雇うべきでしょうか。
 人を雇っても市場は飽和しているので売上は増えません。利益を再投資しても拡大再生産に寄与できません。その場合、利益は投資家に全額還元されるべきです。
 仮に還元がなければ利益はそのままキャッシュとして内部に留保されます。
 そうすると自己資本は増えるのですが、翌年以降の利益が10のままでは自己資本利益率(以下ROE)が低下してしまいます。

 すわなち、企業がROEを一定以上に保つためには、

1)よい再投資先を見つけなければならない あるいは、

2)利益を配当として還元しなければなりません。


 よい再投資先を見つける経営努力を放棄するのであれば利益は配当とすべきです。


【経営者の仕事 利益の再投資と社員の生きがい】


 利益の再投資は経営の永遠の課題です。投資先の開拓が必要となるからです。
 経営が社会のニーズを把握し、現場が強く差別化された商品を開発できたとしても、利益率が確保できる商品価格で売れるかどうかは未知数です。よい投資先は考えたらわかるというものではありません。新領域にチャレンジすることは重要です。しかし誰もやっていない領域は訳があって誰もやらなかったのですから。難しいチャレンジかもしれないのです。


 失敗を許容する文化を醸成するのは難しいものです。失敗から学び、成功へと導くのが理想です。
 社員のやる気が高いだけではなく、それが継続するためにはどうしたらよいでしょうか。私見ですが、自由闊達な企業文化が根付く必要があるのではないかと思うのです。そして企業経営者には覚悟やリスクテイクの気概が必要です。
 新製品や新サービスが社会に受け入れられるには、現場の努力だけではなく経営の目利きや決断や覚悟も大事です。
 投資ですから失敗することもあります。
 よい投資先を開拓することは経営者の重要課題のひとつです。絶えず組織を活性化し、社員の人生を豊かなものすることが経営の仕事です。


 事業を将来どう拡大していくのか。事業の将来性をどう考えるかは経営者のみならず投資家にとっても非常に重要なことです。

 経営者の仕事は事業をどの順番でどう拡大していくかの優先順位を決めることです。

 持続的成長のためには、付加価値の高いものを従来よりも高い値段で頑張って提供するサイクルを作り出すことです。
 わたしの投資戦略の基本(3つの条件である「市場の成長、シェアの上昇、商品価格の上昇」。この点は後述)は付加価値戦略を評価することにあります。


(つづく)


(山本潤)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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