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日曜朝のパラレルワールド

休日。

私は体が欲するがまま、眠りを貪るタイプだし、なんなら目が覚めてもしばらくはベットの上でスマホを開きだらだらしてしまう。

それに対し夫は比較的規則正しい時間に起き出し、リビングでテレビをつけながら、もうひとつの画面でゲームをしている。これが定番の日曜日の風景だ。

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今朝も目を開けると、いつのまにかダブルベッドのど真ん中で両手両足を広げた状態でうつ伏せに寝てた。廊下を挟んだリビングからは小さくテレビの音が聞こえ、薄く開けた寝室の窓とリビングとの間を流れる風が体の上を撫でていた。

そろそろ朝食を作らなくちゃいけないと、足をぶらぶらさせて30分程逡巡した後、意を決して布団を蹴り上げ、リビングに足を踏み入れた。

リビングは窓が全開で、小さな音でテレビがついていて、無人だった。少し拍子抜け。

こんな事はままあって、その度にある錯覚に囚われる。

実は、夫なんて存在してないのかもしれない。夫なんていないで私はひとりなのではないかと。

ひとり分のコーヒー豆を挽いて、ドリップしながら考える。

ここは、パラレルワールド、夫がいる私は向こうの世界の私。

こちらの私は、ひとりでひとりっきりで、ふたりにしては少し窮屈なこのマンションに住んでいる。マンションの部屋はひとりだと思うだけで少し緩んだ様で広々と感じ、部屋の端に少しだけ寂しさが停滞してる・・気がする。・・その寂しさが、いい。

コーヒーを片手に席についた、テーブルの上にも私のコーヒーカップ以外何もない。

ひとり、ということは独身ということで、しばらく離れていた恋愛というものをまたするのかもしれない。恋愛の様なものから離れていたせいか、恋愛への免疫が下がっている為なのか、漫画のような恋が出来るかも。と心がちょっと弾む。

だらだらとしながら、本日1杯目のコーヒーを飲み切ったところで頭が覚醒し、昨日の夫の言葉を思いだした。

「明日、朝からバイクのオイル交換に行ってくるよ、近所のバイク屋だから、あなたが寝ている間に戻ると思うけど」

※※※※※

そろそろ夫が帰ってくる。私はふたり分のコーヒー豆を挽き始めた。

こちらの世界の私も、きちんと幸せだ。

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おわり

追記☺︎ 近所のバイク屋に行くと言っていた夫は、結局、家を出て4時間後に鎌倉のパン屋の袋を抱えて帰ってきた。我家は都内にある。

おいしかった。


筆休めのつもりで書いたのに存外長くなって驚いた。


最後までありがとうございます☺︎ 「スキ」を押したらランダムで昔描いた落書き(想像込み)が出ます。