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宮本武蔵はこう戦った

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短編小説『異形のサムライ』

短編小説『異形のサムライ』

見てしまった。

佐々木小次郎という剣士を。

その存在自体を見てしまった。

それは、今までに見たことのない存在。

自分の範疇の中に入らない存在。

得体のしれない怪物を知ってしまった。

自分にとって得体の知れないものは、本能に漠然とした恐怖をもたらす。

試合に臨むとき、勝負とは言え、対戦相手と一体の世界を作り上げて行く。

その共同作業の時、どちらかが主導権を取った瞬間、勝負は決まる。

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短編小説『天才佐々木小次郎の唯一の汚点』

短編小説『天才佐々木小次郎の唯一の汚点』

滑空する燕が真っ二つに斬られた。

斬られた胴体は、風に吹かれた木の葉のようにひらひらと舞いながら地に堕ちた。

「恐ろしい」

武蔵は、全身が金縛りにあったように強張って、身動きが出来なくなってしまった。

佐々木小次郎は、目の前で見た「燕返し」の技を私との試合に使うに違いない。

彼は私の太刀よりはるかに長い太刀で、遠い間合いから攻撃をしかけてくる。

相手が、遠い距離から仕掛けてこられると、

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