4 更に性犯罪神話を強めようとする具体的事例たち

制度面でも特別な方法を求めることも、性犯罪特別視論に一役買っている。

その力は通常の事件や事案では考えられないような注目度があり、多くの人の関心を抱くようなことがあれば、その力によって現実まで動かしてしまうこともある。

しかし、それゆえに危険な力にもなりうるものとなっているものではあるが、運動の熱気の中でそれに気が付くことは少ない。

いくつか具体的な事例を紹介するのではあるが、事例を見ることによってその力の一端を垣間見てほしい。


(1)沖縄県の米兵の強姦事件

強姦関連で大きな力を感じられる事案としてわかりやすい事例としては、沖縄県における米兵の強姦事件があげられるだろう。

時折問題になるのではあるが、沖縄県において米兵が事件を起こすと抗議集会を起こすようなことがあるだろう。もちろん日米地位協定の内容によって、犯罪者の引き渡しを拒否できるなど日本に不利益を与えるという側面もあるのだが、その抗議に関して明らかに性犯罪の時には熱量が高いという事実がある。

主催者によると、参加者は6万5000人。1995年に発生した米兵3人による少女暴行事件に抗議するため8万5000人(主催者発表)が参加した集会以来の規模となった。

https://toyokeizai.net/articles/-/123381

引用している抗議集会が起こった背景については、当時沖縄県うるま市に住んでいた会社員女性(当時20)が遺体で見つかった事件で、元米海兵隊員であり軍属のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(当時32)が逮捕された事例である。

強姦目的で女性を襲い、行為後に殺害して雑木林に死体を遺棄したという犯罪なのではあるが、この事件において犯罪者の引き渡しを求めて抗議集会が開催されたという形だ。

その事実の上で引用した部分を見てほしいのだが、周回に集まった人数は6万5000人であり、過去にも性的暴行事件が起こったときに次いで多いというのだ。

その一番集会に集まった人数が多かったという件については、こちらの記事に譲るわけではあるが、端的に事件の概要を述べると1995年(平成7年)9月4日に沖縄県に駐留するアメリカ海兵隊員2名とアメリカ海軍軍人1名の計3名が、当時女子小学生だった女の子を拉致した上で、集団強姦したという事件である。

事件自体はどちらも凄惨なものだとはいえるのだが、いずれも性犯罪が絡んでいる事件だというのがわかるだろう。

他にも抗議集会というのはあったわけだが、殺人だけという事件ですら及ばないほど抗議集会の熱というのは性犯罪に集まっているというのだ。

このことは端的に性犯罪を許さないという熱量が大きいという証左であり、性犯罪というものそのものが大きな影響力を与えていると言えるのだ。そしてその力というのはあらぬ方向に向かう可能性が出てきてしまう。

皮肉なことに、それだけの大きな力があるからこそ政治運動などにも利用され、まるで犠牲を待っているかのようにある種の黒魔術かの如く利用されているである。

(2)Metoo運動という名の私刑について

性犯罪においてひとつ大きなムーブメントになった事例がある。それはMetoo運動と呼ばれるものであり、かつて世界的なブームとなったものだ。

(イ)かつて起きた運動のきっかけとその問題点

そのきっかけであるのだが2017年末付近にアメリカで巻き起こったものである。2017年10月5日、「ニューヨーク・タイムズ」紙がハリウッドでプロデューサーとして活躍していたハーヴェイ・ワインスタイン氏が、長年にわたる性暴力・セクハラ疑惑を報道したことに端を発している。翌年に世界各地に広がりをみせることとなり、日本においても#MeToo運動は一定の広がりを見せた。

この運動によって告発された人が何人も出てきたわけではあるが、この運動には非常に大きな問題がある。

告発された事例はすでに何十年も前に起こったものもあれば、そもそも証拠らしいものが必ずしもあるわけではない。いや、逆にそもそも証拠なんてものはなかったというようなことの方が多いだろう。

まるで告発されたものはそれをされたら罪が確定しているかのような扱いをされ、抵抗しようにも悪魔の証明するようなことにつながるために、うまく抵抗できないというようなことにもつながった。

ある種の魔女狩りといったような私刑がそこにはあり、ほとんど疑問を挟むことなくブームが去るまで動き続けたわけである。

時効もない、反論する機会も乏しい、証拠がなくても責められるなど。法律ではおおよそ考えられないような狂気がそこにはあった。

(ロ)Metoo事件の成れの果てとして起こった草津町性被害冤罪事件

運動の流れを受けて大きな問題になったものもあるのだが、Metoo運動において最も問題点を浮き彫りにしたのが、草津町で起きた性被害告発事件だろう。

既に知っているだろうが、群馬県草津町の黒岩信忠町長が元町議の新井祥子氏に対して町長室で性被害にあったということでもめた事件であるのだが、事の顛末としては新井祥子氏の訴えは嫌疑不十分で不起訴。逆に名誉棄損及び虚偽告訴で訴えられるというのが顛末だ。

最終的に冤罪になるだろうというわけであるのだが、そこに至るまでの町長に対する批判はまさにMetoo運動の負の側面をまざまざと見せつけたのだ。

告発当時ですら証拠もないし証言もかなり怪しいのではないか?と言われていたにもかからわらず、マスコミや複数の著名人、学者、運動家などが批判に対して封じ込めるかのような動きを見せたのだ。

まだ覚えている人もいるだろうが、その時に発言された内容には「セカンドレイプの町 草津」

とまで批判されたのだ。まだ、裁判で事実すら認定されてもいなければ、怪しい点があったにもかかわらずだ。しかも訴えた側は海外特派員まで使って海外にこの告発を発信までしてしまった。

批判すら許さない姿勢だけではなく、町長や町民の名誉を害していたとしても、誰もそれを止めるようなことができなかったのだ。告発した段階で有罪がすでに決まっているかのように動き、反対する者は差別主義者や性犯罪擁護者などと更なる追い打ちをかけることもあった。

本当ならどこかで運動側が止めるべき事情があっただろう。だがそういった動きを見ることは当時ほぼなかったと言っていい。

法的な面でやっと逆転するようになり、この事件がようやく正しい道筋で収まりそうになったのは何年もの時がたってからだった。

この事件はMetoo運動の負の側面を大きく出したものと言っていいだろう。

そしてかつて草津町及び町長を糾弾してきた者たちは、そのほとんどがいまだに謝罪をしてすらいない。無実の人間が一方的に名誉を傷つけられて、その回復はなかなかされないというのがこの私刑の恐ろしさである。

(3)御堂筋事件と女性専用車両

この事件に関しては過去に具体的な検証記事を上げさせてもらったものなので、簡単に詳細と結論を述べる。

事の始まりは、武蔵大学の千田有紀教授が出した記事がきっかけであり、突如として御堂筋事件があったおかげで女性専用車両ができたというのだ。

結論から言えば、この二つの事例は碌な関連性がないどころか、むしろ拒絶されたというべき事情も発見できるなど。

本当なら箸にも棒にもかからないレベルの事実認定しかできなかった。下記noteにくわしい調査結果はまとめたのではあるが、何処を探しても千田有紀教授などのいうような発言を肯定できる内容はなかったと言えよう。

そもそも論として関連性があると言っている側が何か具体的な証拠を提出していない。普通ならこの事件があってどんなことを行ってきたのか、どのようなつながり方をしたから女性専用車両まで行きついたのか?

という因果関係なり道筋なり資料を基に読み解いていくわけだが、そんなものはどこにもない。何もないのになぜ出てきたのか全くわからない。

だが、何ら資料もないにもかかわらず、一時期はごく当たり前の事実かの如く広く伝播したということで、非常に頭を悩ませるようなこととなった。

近年ではかなり収まったものとはいえ、事実認定すらろくにされないで噂が広まるほど力があり、これは次にでてくる震災の件などにも関連性がある事象だと言えよう。

(4)阪神淡路大震災とレイプ事件の噂


震災後に治安が悪化し、噂やデマが流れて被災者などが混乱するようなことがある。それらが合わさって犯罪についても性犯罪事案における具体的事例の一つである。

簡単に説明すると、震災時にレイプ事件が多発しているという噂が立ったのではあるが、その事実検証をしたところ、伝播されていた情報は虚偽であったことが判明。震災時におけるパニック時において、他人に無用な不安や危険な状態を産み出す危険なものとして世間では認知された。

本件もこれで終わり…。とはならなかった。当事者たちは別の意味であきらめなかった。今度は東日本大震災にて同様の調査を行い、再度我々の前に姿を現したのだ。しかも最悪の形でである。

下記の記事に詳細を譲るが、やってくれたことは碌に反省していないどころか、より間違えた対応を繰り出している。

端的に挙げれば

・当事者は一切出てこないだけではなく、事件があったとするがその顛末や証拠、事件処理について何も報告されていない。
・神戸のように第三者の検証記事があげられていない。
・女性専用スペースなどの実例が出てきてしまった。

ということであろう。特に最後は本気で怒りをぶちまけそうなレベルである。なぜなら、同じようなことを外国人に行ったら、確実に我々は差別を糾弾されるだろうからだ。そして、われわれは震災時において、外国人の犯罪などに関して例え本当に外国人の犯罪が起こっていたとしても、確証のない情報に惑わせるようなことはしてはいけないと必死に言ってきたはずなのだ。

にもかかわらず、他人にやってはいけないことを私たちは平然とやっていい。とやってしまったのだ。

関東大震災における話や、熊本地震の話など。色々な話題があったわけだし、東日本大震災でもデマについてはいくつも注意喚起なり検証をしてきたはずである。

だが、この一件はそれをすべて破ったところに大きな問題があると言わなくてはならない。

(5)結局これらの事例は何を伝えているのか?

これらの事例で言えることはいったいなんなのだろうか?なぜこれらの事例を挙げたのだろうか?

(イ)性犯罪という事象における力強さ


先ほどから何度か述べてはいるのだが、性犯罪という事象についてはかなり強い力を持っている。

沖縄県における米軍に対する抗議集会の人数にしてもそうであるし、Metoo運動のような一大ムーブメントといったように、色々なものを動かす力がある。実際の報道や動員人数を見ればわかることであろう。

その力があるからこそ、危険な部分も見えてくる。

(ロ)力がある故に超えてはならないところを超えてくる

力があるがゆえに超えてはいけないラインを超えてくることも、ここまで読んでいるのであればわかると思う。Metoo運動にてあげたが、事項の概念から私刑の肯定というような、本来では超えてはいけないラインを超えてくることが容認される可能性が出てくる。

ミーガン法といったようなものについても、憲法違反など散々超えてはいけないラインがあるのではないだろうかと語ってきたのではあるが、それらすべてを超えて他人を処罰することを実現した経緯がある。

その他にも女性専用車両の制定もその一つであろうし、今後の性犯罪の刑法改正に盛り込んできそうな内容などもその一環と言えよう。

これはいけないと思って止めようと思っていても、性犯罪を許さないという力のほうが上回った場合にはだれも止められなくなる。

そういった恐ろしさを秘めている。

(ハ)事件を利用しようとする動き

超えてはならないラインを超えてしまってことによって、本来なら守られるべきところまで破るということにつながるのではあるが、これを知ってか知らずか利用しようとする動きがある。

どういうことか?これは先ほど御堂筋事件に関して取り上げた事例に戻るのだが、彼女たちはなぜそんなウソをついたのだろうか?というのは疑問に思わなかっただろうか?

単に自分たちがやってきたことを手柄にしたかったのだろうか?何か未練があったからではないだろうか?と考えることもあるだろう。

もちろんそれ自体を否定することはない。だがそれだけというものでもない。一つの目的がある。

それを紐解くのがミーガン法の話なのではある。思い出してほしいのだが、この法律も特定の事件が起こったことによってできたものだ。

この事件があったのだから、今後こんな事件が起きないように何とかしてほしい。その思いで出来上がったものではあるのだが、その熱量及び法案が超えたラインは前述したとおりだ。

これを女性専用車両と御堂筋事件に当てはめるとどうなるか?答えは簡単だ。

「こういった凄惨な事件があったからこそ、この制度は正当化される。」

ということになるのだ。

あの人たちが本当に狙っていたのは、特定の事件を基に制度を正当化しようとすること及び、制度を利用して事件を神格化しようとしたのである。

しかも、時がたつにつれて、デマであるかやデマがなぜいけないのかを超え、「事件そのものがあった(仮に嘘でも)」という事実が独り歩きして、制度そのものを正当化・神聖化するということまで起こっている。

より問題を複雑にし、解決しえない手段としてより強化されるからこそ、余計に厄介なのだ。

単なる嫉妬心や手柄欲しさにあんなことをしたわけではない。だからこそより醜く、卑怯な魂胆がどす黒く輝いている。


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