ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』
11月中旬ごろから、年末大掃除を始めた影響で読書の時間が減っています。ちょびちょび読んでいたら2週間ほどかかってようやく読み終わりました。
舞台はドイツなのかな?作者ヘッセの自伝小説と紹介されていて、年代が少し昔なことと、神学校という場所にも馴染みがなく、少しとっつきにくい印象を持ちながら読み進めましたが、ラストの結末をもって、色々と振り返って考えさせられる小説でした。
主人公はハンス・ギーベンラートという神童として育てられる少年。ハンスに寄り添いながら読むと、もっと自分の意見を主張した方がいいよ!とかそれで楽しいの?とかなんとかすごく口出ししたくなる。
読み終わってようやく、これはハンスがどんな人物でどんな一生を歩んだかというお話ではなく、ハンスという少年への親や先生という周りの大人の関わり方、社会の在り方、それが彼の尊厳を奪ったことで彼の人生がめちゃくちゃになった、そういう話なのかなと思いました。悲しいお話です。
子どもと関わる大人として、過度な期待や大人の都合を押し付けてはいけないなと。子どもが黙っていて従うからといって、それは本当にその子のやりたいこととは限らない。そして子ども自身もそのことに気付いていないことが往々にしてある。子どもが自分で自分の人生を選んだり、考えたりできる力をつけてあげることが大人の役割だなとつくづく思います。大人とか子どもとかいうより、より長く人として生きる先輩の役割、かな。
そういうことは頭では分かっていても、私も一人のハンスの先輩でありながら、読者として助けてあげられなかったな、とラストのハンスの死に直面して思うわけです。最悪の事態になって初めて、考える。それでは遅いのにね。となんか一読者として反省しました。だからこそ本で出合えて、よかった。
ハンスの神学校での友だちハイルナーとの出会い、付き合い方。地元に帰ってからのエンマという少女への恋心。ハンス少年が初めて友情や恋愛に触れていくその際の揺れ動く心の描写も、魅力的でした。
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