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伊阪幸太郎『逆ソクラテス』

逆ソクラテス

スロウではない

非オプティマス

アンスポーツマンライク

逆ワシントン


の5つの短編が描かれる『逆ソクラテス』。この題名を振り返ってみただけでも、「逆・ではない・非・アン・逆」という反対や否定を表す言葉が並んでいて、この本を物語っているなあという感じがします。

この本も友人からいただいた本で、確実に自分からは選ばない本でした。伊坂さんといえば、ミステリーや推理小説というイメージがあり、今となっては本当に恥ずかしいですが、読まず嫌いというか、勝手に避けてしまっていました。

でも、この『逆ソクラテス』は自分の中の大好きな本の一冊になりました。この本と出会わせてくれた友人に感謝したいと思います。

5つとも少年視点で描かれている物語です。そのどちらかといえば地味で大人しく善良そうな少年のまわりに、先入観を打ち崩してくれる友だちが現れるのです。

子どもならではの、まっすぐな心と考え、世界の狭さに対して、先入観で凝り固まった決めをする大人、が見事に描かれています。でも、おもしろいのは、「まっすぐなのは子ども、先入観を持っているのは大人」、このことですら先入観だということを教えてくれるところ。考えが偏っている子どもももちろんいるし、先入観に捉われない努力をしている大人もいる。先入観に捉われない努力というのは、「僕は、そうは、思わない。」とゆっくり伝えることであろうし、試行錯誤しながら子育てすることなんだろうなと思います。

人生、いろんな乗り越えなければいけないことがありますが、考えることは苦難を乗り越える武器だと教えてくれる本です。基本的には同じ本を何度も読まないのですが、人生に息苦しさを感じたとき、読み返す日がきそうな予感がします。

そしてミステリー・推理小説は苦手という先入観を捨てて、伊坂さんをはじめ、読書の幅を広げて、今まで手に取らなかった本も読んでみたいと思いました。

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