マガジンのカバー画像

ことのは箱

45
エッセイや絵日記、コラムもどきをしまってます。思いつきで書き散らかした言葉たち。
運営しているクリエイター

#エッセイ

あの夏

中学と高校の6年間、軟式テニス部に所属していた。 秋田県のド田舎の学校には硬式テニス部というものが存在しなかったので、選択の余地なく土のコートでゴムのボールを追いかけていた。 中学生になった時にちょうど「行け!稲中卓球部」という漫画が流行っていて、卓球部に入りたいと母に言ったら猛反対されて学生だった母と同じテニス部にさせられたんだけど、今思い返しても基本好きなことをやらせてくれていた母が私のやりたいことに強く反対したのはあの時だけだった気がする。 卓球部に対するイメージが相

どうしてトナカイは空を飛べるのか

クリスマスが終わると一年が終わるなーという気分になる。 今年もサンタクロースが夜中にこっそり家にやってきてプレゼントを置いていくという体の自己満足イベントが終わった。 子どものためというより喜ぶ子どもたちを眺めて私がほっこりするイベントであり、おもちゃをねだられた時にサンタさんにお願いしようと提案して購入を引き延ばすことができ、且先送りにされたのに子どももなんだかしあわせな気分になれるイベントでもある。 楽しいとか嬉しいと感じる瞬間は、思い出が薄れてもじんわりと沁みて残る

ポーション

「ママのageはなに?」 と、ベッドの中で長男が聞くので、一体いままで何度答えただろうと思いながら「Thirty-nineだよ。」と答えると「えっ もうすぐFortyじゃん!」とまた驚く。 何度も聞いているのに何度も驚けるのもすごいなと思うし、それでいて意外なことを覚えていたりして、まぁそれは私もだからなんかわかる。 結局のところ私の年齢なんて彼にとってはどうでもいいのだ。 「ママはおっきくなるのすごい時間かかるねぇ。」と意味不明なことを続けて言うので、「ママはもう大きくな

海が好き

海が大好き。 何もしなくてもいるだけで幸せ。夕陽なんて拝めたらもう文句のつけようがない。 うる星やつらの藤波竜之介のお父さんも好きでした。(もちろんラムちゃんには到底敵わないけど) 海はいい。なんかいい。そこに在ってくれたらいい。 月曜日が祝日で三連休だったので、とにかくゆっくりできそうな海の目の前にある宿を探して行ってきた。 ベランダの目の前は海で、真下はプールで、道を渡ったらビーチ。 最高か。 せっかくの三連休で家にいたらゆっくり作業できたのに、ぶかぶかのサングラスを

船越さんとの一日

2012年5月─── タイに移住した当初からブログを始め、日常のことを綴ってきた。 私みたいに何もなくても、意識が低くても海外移住できるっぽいよ!ということを発信するために。 その4年後心機一転ブログの引っ越しをし、その際にやらかしていくつか記事を紛失、復元不可能となってしまった。 その失われた記事のひとつを、思い出せる限り書いておきたい。 ブログではなくnoteに書こうと思ったのは気分です。 *** 前書き、はじめてのアパート暮らし 2013年、私はタイの東北部ノンカ

崖の上

バリ島にある、その場所の名前はもう忘れてしまった。 土埃の舞う空き地のような場所をバイクで進むと崖に出た。 視界は一面の海。潮のにおいがする風。 崖っぷちに建つゲストハウス。そのコテージのテラスに腰かけて、主人らしきおばあちゃんにチキンライスを注文する。 あれがケチャで有名なお寺だよと指をさされて、昨夜ちょうどそれを観に行って猿に髪の毛を掴まれたよと話した。 目の前に展ける真っ青な海面は、真上からの日差しを浴びて眩く輝いていた。 「サーフィンの大会を観に行こう」と言われ

Dung beetle

この間、子供たちとネイチャー系の動画を観た。 おなじみの虫たちのリアルな画像と、接写による未知の世界が楽しかったようでふたりともずいぶんと食いついていた。 「Baby Beeねぇ、自分でCocoon作るんだよ!ぼく知ってるよ!」などと嬉しそうに語る長男。 「ぼくSpiderこわくないよ!!」と強いんだぞアピールに余念のない次男。 しばらくするとフンコロガシが登場した。 おなじみではないやつだ。 「Beetle...?」 長男が首をかしげる。 「ママこれなーに?」と聞かれて

紙の本のチカラ

自分で自分の本を買った。 電子書籍のみの発売だったはずの本が、POD本(プリント・オン・デマンド本)という、いわゆる注文後に印刷される形の紙の本としても販売してもらえることになり、発売からは少し時間は経ってしまったのだけど、母への誕生日プレゼントに添える形で贈った。 送料が高いからプレゼントは要らないと言う母。 娘たちが仲良くて元気で幸せなのが一番のプレゼントだって言ってたけど、日本のAmazonで注文するから心配要らないよと、本も送る旨を伝えたらそれは欲しいって。 自

ตลก(タロッ(ク))

※ตลก(タロッ(ク)) おかしな、滑稽な、愉快な 「ウケる~」みたいに使います。 弊社はここんとこちょっと忙しくて、それでいてぼっすは出張中だった。 タイ人スタッフたちは、通常作業中の使用を禁止されているスマホを作業台に置き、イヤホンで音楽を聴きながら黙々と作業してるので静か。 上がってくる数字も悪くない。 みんなの関心は専らぼっすがいつ戻ってくるかで、代わる代わるに聞いてくる。 キトゥン(恋しい)でしょ?なんて冗談を言いながら都度答える。 戻ってきたら戻ってきたで、

おこづかい

「Level 1のClassがいいの。」 幼稚園クラスの二年生に進級したちびこいのは、そう言ってサマースクールのうちから毎朝泣いた。 一年生に戻りたいと言われても私も先生も困るばかりで、夕方家に戻ると「今日School HAPPYした!」と言うし、慣れるまでだろうなと思ってなんとか連れていっては先生になだめてもらっていた。 長期休みや連休明けはどうしても泣く。 慣れて楽しく登校できるようになった頃にまた長期休みに入って一からやり直し。というループは小さいうちはもうどうし

今日も赤ちゃんの声がする

ここ1-2年、私の働く会社はちょっとしたベビーブームだったので、現在1歳前後の子供がいるパパとママが3人働いている。 内ひとりは親族の協力を得てベビーシッターを雇うお金を工面しているけど、ふたりは遠く離れた実家に子供を預け、夫婦でバンコクで働いて仕送りというタイの田舎あるある育児スタイル。 お金持ちは別だけど、タイは子育ても介護も親族家族が協力してするのが一般的なので地方出身だと後者が多い。 ふたりの内ひとりはパパでひとりはママ。 ふたりとも休憩時間やお昼休みによくLIN

感覚

タイ人スタッフと一緒に駅の長い階段をひーひー言いながら上って、はぁ~っと息をついたら、 「มีอากาศน้อยมาก ミー アーガー(ット) ノーイマーック (空気が少ない)!」って言うのでふふっとなったし、そういう風に感じるのかなるほど~と思った。 もちろんタイ人だって「疲れた」も言うけど、こういう風にも言うのね、みたいな。うん。たしかに息苦しいもんね。 タイにいると、自分が選ばない言葉や感覚がおもしろいなぁって時々思うことがあって飽きない。 人間はひとりひとり違うのだ

悟ってなんていません。

「悟ってるね。」と言われた。 基本的に他人には期待しない、という話をして、 「こうして欲しい」「変わって欲しい」「これぐらいできるはず」 と、 「私はこんなにしているのに、どうして」 は、 一本の線で繋がっていて、下手すると地獄みたいになって誰もしあわせにならないので、期待はしません。と言ったら「悟っている」と言われた。 違うんですよね。面倒だからです。 より良い関係を築くために時間をかけて分かり合うとかいうのがどうも苦手で。 人はどうせ変わらないと思ってるのもあり、合

うれしい日

LINEでおめでとうと送ったら、真新しいセーラー服を着た姪っ子の写真が送られてきた。 私の記憶している姪っ子はもっとずっと小さいので、おっきくなったんだなぁというありきたり且つじんわりあったかい感動を抱いた。 今日は姪っ子の小学校の卒業式で、その母親である妹が再婚した日。 新しい名字になって、名前はちょっと地味になっちゃったんだけど、全米一幸せ!だそうだから良かった。 おめでとう。 そして今日は私が書いた電子書籍が世に出された一周年記念でもあって、日本ではホワイトデーとい