ことばの解釈(『思い出のマーニー』に関して)

先日はじめて『思い出のマーニー』を拝見しました。

どんな物語なのか、どんな世界観なのかなどの前情報が一切ない状態で見始めたのですが、なんとも不思議で冷たくて柔らかい話だと感じました。

というのも、最後までずっと引っかかっていた台詞があり、ラストの部分で私なりに解釈した結果がとてもリアルでファンタジーを感じさせないものだったからです。

以下、完全に私個人の解釈で話を進めていきます。

勝手に感心したりしますが、本当に、完全にただの私の解釈です。





マーニーは森の中で杏奈に「今まで会ったどの女の子よりもあなたが好き」と言うのですが、その後の杏奈は「誰よりもあなたが好き」と返すのです。

杏奈の台詞を聞くまでは特段気にも留めなかったのですが、この台詞と比較するとわざわざ「どの女の子よりも」とカテゴライズしたマーニーに違和感を抱いてしまいます。

初めは、この2人が互いに向ける感情に差があって、その温度差を表すためにこういった比較をしているのかなと感じていました。

ですが、後半に明かされた事実(マーニーは一人娘がいたこと、事情があり娘を施設に預けていたこと、再会後和解できなかったこと、娘の産んだ子が杏奈だということ)を踏まえて考えると、少し意味が変わってきます。

マーニーは、最後まで娘を愛することができなかった。懸命に”母”になろうと苦悩しながらも、自分を拒否する娘のことを受け入れることができなかった。

でも、娘の遺した子には、娘に与えた以上の愛を向けていた。マーニーは娘を愛せなかった代わりに孫である杏奈に深い愛情を抱いていたのだと思います。

一方の杏奈は、幼くして両親を亡くしているため、親からの愛を知りません。比較が分かりやすいようにあえてあからさまに言うと、男性からの愛も女性からの愛も受け取れず、杏奈からも愛を感じたことがない。

そんななかで自分を育ててくれた祖母マーニーには、彼女同様に深い愛を感じていた。

そう考えるとあの台詞は2人が互いに向ける”愛”の差を表しているのではなく、祖母と孫との間の愛を暗喩しているのだと読むことができます。


私がここですごいと感じたのは、「娘を愛することができなかった」という暗く冷たい感情を想起させる言葉を織り交ぜていることです。

家族や親子の愛情についての物語なら、無理やりにでもいい話風に纏めてしまいそうなものですが、実際そうではない。

このリアルな感情、綺麗事だけで片付けられない親子の感情を、作品の中に綺麗に描写しているというのが、本当に美しい作品であると感じました。

夏にまた見たいです。

追記:今度しっかり考察や公式の設定を読みます!


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