185. ふと思い出したシリーズ①
友人と終電近い満員電車に乗っていた
酔っ払いが床に座り込み
うわごとを云っている
隣にいた女性は
彼の言葉に相槌を打っていた
何事もなかったかのように
彼は電車を降りて
連れと思われた隣にいた女性は
ただ一言
「Have a day!」
と彼に告げた
どうやら知り合いでもないようだ
「Have a good day.」(= 良い1日を。)
彼女は意図して【good】を省いたのか
誰もが良い1日を過ごせるわけではないのだから
そんな思いを込めているんじゃなかろうか
友人に話すと彼は笑っていた
私達の声が聞こえた彼女は
「君、いろいろわかってる子でしょ」
そう言われた私は
「そうなんですよ、わかっちゃうんですよ」
と返した
彼女はみてくれも雰囲気も
明らかに異質な初老の女性だった
そんな彼女とやりとりをしていた私もまた
あの電車の中で浮いていた
私が友人と称する彼よりも話が合うのではないか
そう思ってしまう自分に一抹の不安を感じつつ
そしてまた
彼女に対して切なさと
哀しさと
彼女が独りでないことを願うのは
自分もそうではないと
信じていたいからなのだろうか
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