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反出生主義は暗い思想なのか(GUEST: 久世) #0009

本記事はポッドキャストとして配信した脱字コミュニケーションの第9回エピソード「反出生主義は暗い思想なのか(GUEST: 久世)」の文字起こし(?)記事です。ポッドキャスト書き起こしサービスの「LISTEN」はコチラ

反出生主義について話した経験がなさすぎてメチャクチャ緊張しました(リ)

【トーク内容】

・感想読み上げ(左利き回について)

第6回のQ&Aに書いてくださった壁さんとohayoさん、どうもありがとうございました。

・真面目にやりたいリサフラと不真面目なもこみ

くぼはらさんからの感想。文面ではふざけているリサフラと真面目なもこみですが、ポッドキャストだと完全にその構図が逆転していることを指摘されました。鋭い。

・久世さんは何を書いている人?

久世さんのnoteのプロフィールには
USHiphop/日露仏近代文学/現代思想/ファッション
と書かれています。
主にUSHiphopの人として認識している人も多そう。

・うっかりインスタに課金

インスタで誤ってプロフェッショナルアカウントにしてしまい、それがきっかけで僕は久世くんのことを知りました。(も)

・チャリで来た

久世さんは収録場所にチャリで来ていました。健康的でいいですね。(リ)

・「脳盗」のプレゼント企画でマイクを頂きました

TBSラジオ「脳盗」のプレゼント企画で当選してShureのMV7というめちゃくちゃカッコいいマイクを頂きました。音声編集でのノイズ除去がすごく楽になりました。TaiTanさん、玉置周啓さん、TBSラジオさん、Shureさん、本当にありがとうございます。

・豆等

Spotify独占配信のポッドキャスト番組「奇奇怪怪(旧奇奇怪怪明解事典)」は僕がポッドキャストにハマるキッカケになった番組です。「豆等」が何なのかは「第101巻(中編)サウナと剃毛健康論」を聴けばわかります。(も)

・リサフラは久世ファン

ファンです。とても緊張しながら喋りました。(リ)

久世noteを全部は読んでないけど買ってはいます。(も)

・反出生主義について/それ言っていいんだ⇔そもそも自明だと思っていた

リ:反出生の考え方って世間からは"ネガティブ思考"みたいな感じで非難されることが多いですよね。僕もこの思想には肯定的な立場なんですけど、周囲からの反応を恐れて、そういった思いを抑制しているところがありました。だからこそ久世さんの記事にはかなり衝撃を受けましたね、そのようなトピックについても切り込んでいて。

も:"それ言っていいんだ"、みたいなことだよね。

リ:そうそう、そんな感じ。

久:"切り込む"というか、正直僕はけっこう自明なことだと思ってたんですよ。「生まれてこない方がよかったでしょ」、っていう。わざわざ言うことでもないというか。だからむしろそれが学問として体系付けられていることの方が衝撃的でした。

リ:なるほど、当たり前すぎて。

久:そうです。わざわざそんなこと言うまでもないでしょって思ってたんですけど、意外とみんなそうでもないんだってことがまず衝撃でしたね。

・すごい回になっている

も:初ゲスト回にしてすごいことになっているぞ(笑)初っ端から「生まれない方が正しい」、という。

リ:そうだね。普段話さないトピックだから、「変なこと言ってないよな」ってめちゃくちゃ緊張しちゃってるよ。(笑)

も:そうだよね、だってリサフラさっきから口震えちゃってるもん。

久:(笑)

・論理的には反論できない反出生主義の持つ注意点

も:「生まれない方が正しい」ということ自体に反論の余地はないわけでしょ?論理的には。

久:うーん、論理にはあまりないというか…。議題としてよく出されるのは絶滅主義との対比というのがあって。もし反出生主義が一般に浸透して、みんなが出生をやめていったら、どんどん人口が減って、社会的には最悪なことになってくるわけじゃないですか。絶滅に近付くほど社会というのは倫理的な世界ではなくなっていくわけで。

も:そうだね、それは容易に想像できる。

久:そういう論理から実践においての齟齬、軋轢はもちろんありますよってくらいですかね…考えられるのは。

・無苦痛主義/ある意味前向きな考え方かもしれない

も:反出生主義の人ってけっこう叩かれがちじゃないですか。暗い思想だから。

リ:そうだね、見方によっては子を持つ親に対する鋭い批判にもなり得るわけだしね。

久:そこは良くない所ですね。今生まれた命はもちろん大切なものだし、大切にしていかなきゃいけない。「生む」という選択をした人間に劣位のスティグマを与えるようなものであってはいけないとは思います。

も:そうだよね。「生きている側の人間が死んだ方がいい」とかそういう話ではないわけだね。どちらかというと、「これ以上苦しみは増やさない方がいい」っていうことでしょ。だからむしろ見方によっては前向きな思想ですらあるんじゃないかと思うんですが。

久:そうですね。それは"無苦痛主義"とも言い換えられます。そもそもの前提として、苦痛はない方がいいっていうのがありますよね。

・正義とは偶然を引き受けるということ

久:苦痛って何か動機付けされて乗り越えられるものじゃないですか。

も:というと?

久:例えば「この苦しみはこのためにあった」みたいな。カトリック的に言うと"神が与えてくださった試練"といった感じのものです。無苦痛主義はそれ自体に対する批判でもあるというか。

も:ふむふむ。

久:やっぱり正義って偶然を引き受けることだと思っているので。

も:正義が偶然を…

久:ちょっと話がデカくなりすぎたな(笑)

も&リ:(笑)

・話がデカすぎる

久:ここらへんの話に関しては色々込み入っちゃうのでここらへんにしておきます、これまで僕がずっとnoteで言ってきたことでもあるので。

リ:そうですね、文として読むとより分かりやすいかもしれません。

も:今までのnote記事の中だとどれがこの話と近いかな?

久:Vince Staplesに関する記事ですかね。

↓Vince Staplesに関する記事

・気になる人は参考文献(下記)で

久:もしよければ参考文献とかもお出しするので読んでみてください。

も:参考文献が出てくるポッドキャストというのも中々ないな。

久:(笑)。僕は色々なものの橋渡しをしているつもりなので、そこからどんどん深いところまで行っていただければ、乗り越えていただければと思いますね。


ということで、今回の話に関連する本を久世さんがピックアップしてくださっています。この記事の下の方に載せてありますので、気になった方はぜひチェックしてみてください!

・音楽について書くなら

も:さっき久世くんが言ってた「橋渡しをしたい」みたいなのってめちゃくちゃ大事だと思う。音楽の記事にしたって、ただ音楽だけの話をするっていうのもすごく価値のあることだと思うけど、それと同時に"閉じちゃっているな"という気持ちもある。できれば他のものと結びつけて開いていきたいなって。

久:そうですよね。ポピュラーミュージックについて何か書くとなると、音楽のことだけ書くか、社会学的視点から書くかという二択になってしまう感じがありますが、そこに他のものをつなげたいというのはありますよね。

リ:そういう試みが、したいッ。

・noteの使い方が三者三様

も:そういえばnoteというと、我々はnoteの使い方がそれぞれ全然違う感じだよね。

リ:そうだね。僕が書いてるものに関してはもはや記事と呼んでいいのかすら分からないし…。

久:それぞれ真似するのが難しそうなスタイルですよね。

こうして並べてみると本当に三者三様って感じがしますね。(リ)

・「ツイッターやめたくないですか?」

も:あともうひとつ対照的なのが、ツイッターの使い方。久世くんはあまりツイッター動かさないよね。年始の時期とかは特に音沙汰がなくて、身を案じてしまった。

久:その時期に関してはインフルエンザで体調崩してたっていうのもありますね。

リ:他にも何か理由があったりするんですか?

久:そうですね…ツイッターはやめたくないですか?

・ツイッターはやめたい

ツイッターはやめたい。(リ)

・最近は特にやめたい

最近は特にやめたい。殺伐としすぎている。(リ)

絶対にやめないよ。(も)

・ようやく明かされる「脱字」の意味

も:ツイッターで、「言葉がちゃんと通じてないな、届かないな」みたいなことを感じることがほんとにすごく増えた。

リ:めちゃくちゃ増えてる。

も:だからポッドキャストを始めたってところもあるんですよ。今まで絶対に触れてこなかったけど、「脱字コミュニケーション」っていうタイトルは、そういった状況に対してどうにかならないか、みたいな思いがあるんですよね。

今読み返すと何を言っているのかよく分からないというか、だいぶぼやけている感じがしますね。詳しくは「脱字コミュニケーションとは何か -Take 2」という回で喋っています。(記事もそのうちできます)(も)

・初心に立ち返ろう

も:ツイートが誰の得になってるのかって言ったら、自分の得にはなってないなっていう思うことはめちゃくちゃ増えた。

リ:今って別にそこまで怒らなくても良くない?っていう内容でもめちゃくちゃ総叩きにされてるような光景をよく見るじゃん。何も言いたくなくなっちゃう、怖くて。

久:SNSで育ってない僕からすると、見ず知らずの人間にそんな言い方できます?みたいなことを思いますね。やっぱりSNSでのやりとりも人と人との会話だし。

リ:向こう側の顔が想像できてないですよね。

久:インターネットリテラシーの、本当に初歩の初歩の感覚を僕はずっと持ってるんで。

も:現実だと道端で知らない人に「コラ、お前!」とは言わないですからね。

リ:立ち返った方がいい。インターネットを始めたあの頃の気持ちに。

久:もっと素朴な気持ちでね。

仲良くしなくてもいいけど、そこまで殺伐とする必要もない。「友だち幻想」回で言ったように、「ルール関係」が大事ですね(も)

・ずっとニコニコしている爽やか好青年

も:久世くんってドストエフスキーのアイコンとかのせいでめちゃくちゃ怖いイメージあったでしょ。でも会えば分かるけど全然怖い子じゃないからね(笑)。

リ:本当にそうです。

も:ずっとニコニコしてますからね。ポッドキャストだと伝わりませんけど。

久:そうですよね~。

も:(笑)。そうですよねって言ってもそれが嫌味にならないぐらいめちゃくちゃ好青年。

・反出生主義でありながら明るく生きることは可能

も:さて、今日は反出生主義について話しました。さっきも言ったけど、これはある意味絶望的ではあっても、ただ暗いだけの話ではなかったね。

リ:
そうだね。「だから、もう終わりなんだよ…」みたいな感じでは全然ない。

久:
はい。日本で反出生だと森岡正博さんという方が有名ですけど、その方は「誕生肯定の哲学」というのを反出生から導き出して打ち立てようとしている方なんですよね。「生まれてこないほうが良かったな」とか「人生つまんねえな」って思いながら明るく生きていくことは僕は可能だと思ってます。

・noteより本を

久:僕のnoteとかよりやっぱり本を読んでください。

リ:本の方を…

久:超えていって欲しいです、マジで

も:じゃあなんか参考文献リストとか作って載せるか


というわけで読書案内と題して反出生主義に関する久世さんセレクトの書籍一覧を下に載せています!


ーーーお便りーーー

・腕が妙に長いことについてどう思う?

リサフラの身体的特徴として、腕が妙に長いというのがあります。久世さんにどう思うか訊いたら、「バスケとか得意そうですよね」と言ってくれました。嬉しすぎる💞


【参考】

・久世さんが参加した季刊誌『AGI 4 / MERZBOW Ⅱ』(https://bit.ly/3NdggwN)(KYOU RECORDS)

・「ダークでアイロニカルなリアリスト、Vince Staples(Vince Staples「RAMONA PARK BROKE MY HEART」全曲解説)」(https://bit.ly/3Hdc8sN)(久世)

・TaiTan(Dos Monos)と玉置周啓(MONO NO AWARE)によるラジオ番組「脳盗」(⁠https://www.tbsradio.jp/noutou/⁠)(TBSラジオ)


【出てきた固有名詞】

・ポッドキャスト番組「奇奇怪怪明解辞典」(https://onl.la/Wjfj44F

・Dos Monos(https://onl.la/Z1z9eQN

・MONO NO AWARE(https://onl.la/5VKfMAd

・Shure MV7(https://onl.la/iSKtWdp

・Vince Staples『RAMONA PARK BROKE MY HEART』(https://onl.la/va2QP4c

・チャンス・ザ・ラッパー(https://onl.sc/bj2bUGW

・菅野仁『友だち幻想 ――人と人の〈つながり〉を考える (ちくまプリマー新書)』(https://amzn.to/3HLneF6

・カニエ・ウェスト(https://onl.sc/H9WJ396


【反出生主義についての読書案内 by 久世】

・森岡正博『生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ!』

・リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯: リベラル・ユートピアの可能性』

・西郷甲矢人、田口茂『現実とは何か』

・國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理

・エミール・シオラン『生誕の厄災』

・『現代思想 2019年11月号 特集=反出生主義を考える ―「生まれてこない方が良かった」という思想―』

・末木新『自殺学入門―幸せな生と死とは何か』

・ニーチェ『道徳の系譜学』

・ジョナサン・ゴットシャル『ストーリーが世界を滅ぼす――物語があなたの脳を操作する』

・藤井聡『〈凡庸〉という悪魔』

・齋藤純一・田中将人『ジョン・ロールズ-社会正義の探究者』

・田川健三『イエスという男』

・田川健三『批判的主体の形成』

・アマルティア・セン『不平等の再検討―潜在能力と自由』

・松尾隆佑『確率・亡霊・唯一者――政治学的想像力のために――』(論文)

https://researchmap.jp/kihamu/published_papers/21355774/attachment_file.pdf

収録日:2023年3月29日
収録:もこみ、リサフランク、久世
収録場所:都内
音声編集:リサフランク、Adobe Audition
記事編集:もこみ、リサフランク

【話者】

久世(https://bit.ly/41zM3MF

もこみ(⁠⁠⁠https://bit.ly/3XC7QkU⁠⁠⁠)

リサフランク(⁠⁠⁠https://bit.ly/3hUzHNH⁠⁠⁠


【デザイン】

●アートワーク:nao miura(⁠⁠https://bit.ly/3Bd2HX0⁠⁠

●OP・BGM・ED:林舜悟(⁠⁠https://bit.ly/42LKEDe⁠⁠⁠


【番組アカウント】

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note(⁠⁠@okmiscommnctn⁠⁠

Instagram(⁠⁠⁠@ok_miscommunication⁠

連絡先:okmicommunication@gmail.com

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