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展示を作る時は自然の中から切り取るイメージです

みなさん、動物園は「博物館」の1種であることをご存じでしょうか?
博物館は「資料の収集・保管、展示 による教育、調査研究」を一体として行う機関であり、人々が、モノ(博物館資料)を通じて文化・歴史・自然を考え学ぶ場です。
その博物館には様々な種類があり、地域の歴史資料館や美術館、科学館、動物園、植物園、水族館などがあります。

博物館である動物園では、生きていている動物たちを集めて、健康管理しながら飼育し、展示して、その動物たちについて来園者のみなさんに知ってもらい、また調査研究しているのです。
博物館といえば動かない「標本」を展示している様子を思い浮かべて、「動物園が博物館?」とピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、生きた標本を展示しているのが動物園なのです。

今回はその展示している動物のうちの「カエル」についてお話しいたします。

カエル…好きな人は大好きですよね。
私も大好きです!
しかし、来園者の方の中にはカエルが「苦手」「嫌い」「気持ち悪い」という方ももちろんいらっしゃいます。

沖縄の野生動物コーナーを担当していた私は、カエルが持つそのマイナスイメージをすごくかっこよく見える「展示」で払拭したい!!!とずっと考えていました。

動物園では、来園者の方に言葉だけで伝えるわけではありません。
むしろ、スタッフに会わずに展示されている動物だけご覧になって帰る来園者に方の方が多いでしょう。
ということは、「展示」で来園者の方にカエルのすごさを「伝え」なければいけないわけです。

カエルなどの両生類の仲間は、そのカエルに合った環境で飼育をおこなわないと最悪死にます。
適応力がある哺乳類などとくらべて、両生類は住む環境が自分に合っているかどうかがすごくシビアに体調に出てきます。

そういったことも考慮しつつ、よりカエルが魅力的に見てもらえるような展示は何か。

フィールドで遊ぶうちにあるひとつの答えが自分の中に出てきました。

すごく長い時間をかけて、それぞれの環境に適応し進化してきた野生動物たち
その生息地にいる姿が一番しっくりくるし、フィールドで出会うカエルたちは本当にすごくキレイなのです!神々しいくらいに。
それだったら「生息地の様子をそのまま再現したらええやん!」でした。

先人の動物園・水族館関係者がもちろん考えてきたことではありますが、私もその考えにたどりついたのです。

幸い、私が担当していたカエルは身近な沖縄のカエルたちです。
海外や日本本土だとすぐには行くことはできませんが、沖縄のカエルたちでしたら(離島のカエルでなければ)園内でも観察できるし、仕事後に車を走らせれば3時間ほどで沖縄北部のやんばるに行くこともできます。

やんばるの渓流

こんな自然の中にいるカエル
種類によって見かける季節や場所が違います。
意外と同じ沖縄でさえ、それぞれの地域や島によって自然環境は微妙に違っていて、その場所に行ってみないとわからなこともたくさんあります。

こんな場所にカエルとかカメとか鎮座されていたかっこよすぎませんか?

いろいろな場所で、こんな場所にいたらいいかもー!などを妄想しながらフィールドで動物たちを探します。

そして作ってみたハナサキガエルの展示水槽です。
10年以上前に作った水槽なので今では少し恥ずかしいなと思う部分もあるのですが、当時完成した時はすごく達成感がありました。
さらにその3年後に、もっと嬉しいことが起こったのですが…♪
ハナサキガエルについてはまだまだ話したいことはたくさんあるのですが、そのことはまたの機会に書きたいと思います。

私にとっては、動物を飼育して展示する時は「自然が一番のお手本」です。
もちろんなかなか会いにいけない動物に関しては、本を読みまくったり、先輩に聞いてみたり、他の園館の方に聞いてみたり、研究者の方々に聞いてみたり、そして今の時代だとYoutubeで動画を探したりもできますね。
あとはひたすら飼育している動物たちがどんな様子かを観察して、微調整だと思っています。

みなさんがご覧になっている動物の展示には、より動物を魅力的に、健康的に見てもらうにはどうしたらいいのかなどというそれぞれの飼育員の考えがつまっています。
そういったことも考えながらご覧になっていただけると、さらにマニアックな動物園の楽しみ方ができるかと思います(笑)

もっと動物園の展示について知りたい方は、最近はいろんな動物園に関する書籍があるのでぜひいろいろ探して読んでみてくださいね。

※このブログは、2022年2月に沖縄こどもの国ゆんたくコミュニティにて掲載されたものを再掲しています。


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