見出し画像

映画「怪物」公開記念? 是枝裕和監督の書籍「映画を撮りながら考えたこと」を読んでみて


こんにちは。沖縄で小さなエンタメの会社を立ち上げました。
W STYLEの神谷です。

現在 絶賛募集中の沖縄NICE映画祭シナリオコンテストですが、少しずつですが問い合わせが来ております。

さてさて2023年 今年の1月に沖縄NICE映画祭を開催しました。
当日映画祭には多くの来場者が訪れまして、大きな賑わいがありました

そして映画の業界で働いている自分としてもとても 大きな学びになりました。
同時に世界の映画祭はどんな取り組みをしているんだろうと知りたくなり、
あれこれ考えている時に 是枝裕和監督の書籍「映画を撮りながら考えていたこと」を読んでいたら
映画祭のことについて書かれていたので、こちらでシェアしたいと思います。

・世界三大映画祭の構図
 是枝監督はこの書籍の中で、今まで120以上の映画祭に参加してきたとの事(現在はもっと参加していると思いますが・・)
 ヨーロッパの映画祭のスタンダードはやっぱりカンヌ!現在公開されている映画「怪物」でも賞を受賞されるなど、素晴らしい実績を上げています。

そして ドイツのベルリン映画祭。 ベルリン映画祭は社会派な作品が多く上映される傾向が多いようです。ドキュメンタリー作品が「金熊賞」を受賞したり、過去に宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が受賞している映画祭です

イタリアのヴェネチア映画祭。世界最古の映画祭と言われており、ヴェネチアから水上バスで20分ほどの高級リゾート地リド島で開催されるほのぼのとした映画祭。この三つが世界3大映画祭と言われていますが、実際にはヴェネチア映画祭の映画は「商業」よりも「芸術」の映画祭として位置づけられているため、バイヤー(買い手)が積極的に参加しない映画祭になってしまったようです。

この書籍を読んでとても面白かったのが、 やはり海外の映画祭と日本の映画祭の文化レベルの差です。

海外の映画祭では審査員の評価と記者の評価がズレることもあり、中には映画の上映が終わってもブーイングが始まるケースもあるとの事
そして、ブーインングよりもきついのが途中退席 これはバイヤーと言われる買い手の人達が映画を15分くらい見て買わないと決めたら 次々と退席していく現象のことです。映画監督としてはキツイ状況ですね。 そしてヴェネチアの映画祭でフランス映画が受賞した時は「フランスの核実験反対」という垂れ幕を持って抗議活動をした人がいたんだとか・・・・受賞したフランスの映画は核実験を推奨しているわけではないのに、こんなことも起こるんですね。

書籍の一文に書かれていた 「日本の映画監督は基本的に映画の話しかできない人が多い。政治の話や音楽、建築の話については不勉強で話せない。なぜなら日本には国立の映画大学が存在せず、ほとんどの映画監督は独学か自主制作映画出身だからです。」

 この文章を読んだ時、専門学生時代に講師の先生が言っていた事を思い出しました。確かに、海外で「映画監督です」「映画のお仕事をしています」というと、医者か弁護士くらいの社会的地位なのに、日本だとそんな事はないですね。フランスでは映画学校に受かるのは司法試験に受かるより難しいと言われているという一文にも共感してしまいました。

東京国際映画祭が「アジア最大の映画祭」に慣れない理由
「1985年から始まった東京国際映画祭は残念ですが、世界から見ると非常に位置付けの低い映画祭です。」

この1行にはあらためて衝撃を受けました。

その他にも
コンペの部門にセレクションに部門を設けて、「おかえり」と言って再び迎え、育てていくような継続的な関係を作家と作れていない
海外からきた監督にもケアが足りていない
どこにいくと誰に会えるのか?も分からなかった。
仮にも「アジア最大の映画祭」というのであれば、監督が来日して1週間なら1週間どう過ごすのか?食事はどうするのか?をケアしてほしい
海外の監督たちからすると、東京の物価が高すぎて食事もままならない事があります。

その他にも地域との交流や、コンペのセレクション、参加者へのケア、映画教育を担うという感覚という点では東京国際映画祭は世界の国際映画祭レベルから相当遅れているという事をストレートに書かれていて、本当に驚きました。

この書籍には 是枝監督の今までの人生経験や予算がなくなって映画が突然撮れなくなってしまった経験など色んなエピソードが書かれており 映画を志す人は絶対に読んだほうが良いおすすめの一冊です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?