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Treat other as you want to be treated.

さて、今日はマネジメントのヒントと言うよりは、ホスピタリティー業界における重要な考え方のお話。技術や知識もさることながら、我々はサービス業に携わっているのでホスピタリティーマインド(考え方)が実は非常に重要である。このホスピタリティーマインドさえあれば、もっともっとお客様を喜ばせたいと言う気持ちになる。より良いサービスをするためには、知識やスキル、そして経験が必要になってくる。これをスタッフが言われてやるのではなく、ホスピタリティーマインドのあるスタッフは自動的にやりたくなるのである。

この考え方を若いスタッフへ教えるときに役立つのが、この「treat others as you want to be treated (自分が接してもらいたいように接する)」である。自分が受けたいサービスをお客様にしてあげたり、自分が言われて嬉しかったようなことを他の人にも同様に声掛けをしてみたり、素敵な笑顔を見てほっこりすることがあれば、自分もお客様に笑顔で接する。そんな話である。

そんなに難しそうではないが、スタッフとお客様と言う立場が違うため、実際にこれをコンスタントに行うのは難しい。スタッフは自分に余裕がなければ、お客様に呼ばれたときに笑顔になれない時もある。自分が手一杯の時に、ついつい手を挙げているお客様を見て見ぬふりをしてしまう時もあるでしょう。でも実はこの辺の真相は、本人にしかわからないのである。先輩や上司から「今見て見ぬふりしただろう」と言ったところで、実際のところはその本人にしかわからないのである。だからそもそも、先輩や上司としてそのような愚問を投げかける事は、スタッフを信用してないと思われかねない。それこそ自分の定規で相手を図っているのである。もちろん自分の経験や今までの実際にあった出来事などを元に思考が働くわけだが、これは完全にバイアスがかかっている状態で危険だ(とは言え9割以上の上司や先輩はこういう考え方をするでしょう、現実は)。

では上長や、先輩としてここで何が必要かと言うと、そもそものスタッフのホスピタリティーマインドを鍛えてあげることである。それができれば、スタッフは今日1日の振り返りをした時に「あぁ、あの時あのお客様に見て見ぬふりをしてしまったなぁ…。」と自分で反省する。そして、どうすれば次に同じ場面の時に自分は余裕を持ってお客様とアイコンタクトが取れるのか?と言う思考に変わる。どんどん自発的にスキルアップしていく。

とは言え、人のマインドを変えると言うのは非常に忍耐力が必要なものである。これが【マネジメントは忍耐力】と言われる所以でもある。この話はまた別の会でしましょう。

そんな時に役立つのが、この考え方です。非常にシンプルでわかりやすい。自分が接してもらいたいように接しましょう、と言う話。お客様を「素晴らしい技術や知識で感動させよう」と言う前にサービスマンとして、そして人として誰かを喜ばせる観点で言うと、必要最低限でありなくてはならない考え方である。逆に返せば、どれだけ知識やスキルがあっても、自分が接してもらいたくないような接し方をするようなサービスマンは失格であると言うこと。ちょっと大袈裟に言えば、この考え方はその人の人格を問われかねない話でもあると言うことです。

ぜひこの考え方を浸透させていただきたいのですが、ここで面白いポイントが2つあります。


1つ目は、英語で言うと、自分が接してもらいたいように接しましょう、と言うポジティブな表現です。一方で、日本でよく聞き慣れた似たような言葉がありますが、皆様お気づきでしょうか?
イギリスに留学していたり、オーストラリアで働いていたり、短期間ではありますがシンガポールでの仕事の経験などもあり、海外と日本の思考の差を知っているだけに、私はこれが日本だったら以下のような表現をされているのではないか、と考えています。

自分が嫌なことを人にはするな。

意味合い的には逆ですが、自分が相手の立場になって考え、行動をしてみよう、と言う表現を日本語にするとこのようなネガティブな表現になる。俗に言う、他人に迷惑をかけるな的な話である。和を重んじる日本は他の人に迷惑をかけてはいけない、と言う考え方がある。一方海外では、人は間違えるし、失敗もする。それは当たり前であって、むしろそこから成長しようと言うポジティブ思考。そして困っている人を見たら助けましょう、と言う施しの精神がある。考え方が非常にポジティブです。自分も色々と失敗してきているので、その都度いろいろな人に迷惑をかけたし、先輩にも怒られました。でもそこから学んで、自分が成長することでよりチームに貢献できたり、困っている相手を助けられるようになったり、余裕が持てるようになったりする。
なので、これを伝えるときに日本人と外国人では受け取り方が違う場合があるので注意してみてください。

そして2つ目のポイントは、果たして若いサービススタッフが、世界中のラグジュアリーホテルに行き慣れたお客様と同等の目線で全てが見れるのかどうか?と言うところも重要なポイント。自分がファミレスに行って、喜ぶようなサービスを、ラグジュアリーホテルでやってみたとしても、なかなか当てはまらないケースもある。だからこそ、若いうちに自己投資をして良いサービスを受けたり、おいしいものを食べたり、美術館に行って美しい絵画を見たり、感性を磨いていかないと本当の意味での良いサービスパーソンにはなれない。ホスピタリティーマインドはあっても、技術と知識と経験がなければ、それを具現化する事は難しいと言うことである。気持ちだけでは超一流のサービススタッフにはなれない。これも厳しいことを言うようだが、リアリティーである。因みにこれはラグジュアリーホテルに限った話ではない。これが餃子屋でも美味しい餃子を食べ歩いてなければ、無類の餃子好きのお客様とは対応に話せないのである。だからセンスを磨けと言われるのだ。

Four Seasons Hotel New York City


ちなみに、この考え方は25年前、新卒で働いたFOUR SEASONS HOTELで教えられた。前回の3つのPと同様、非常にクラシックな考え方だが、今この現代でも通用する素晴らしい考え方である。それは自分の今までの経験からも実感していることだ。

ぜひ、このフレーズを使ってホスピタリティーマインドあふれるチームを形成してみてください。

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