人事における3本の矢①
結論から言うと、
①採用
②教育
③評価
である。
「採用」とは正しく、精度の高い募集と面接にある。
募集は何でもいいと言うわけではなく、効果的で狙っている層の応募者にリーチしなければならない。採用媒体なども多々あるが、今やいろいろな媒体があるのでどれを選んでいいのか全くわからない。ここは正しく、採用担当者の経験が問われる部分。一方で、世の中がネット社会になっていく中で、この分野でも常に最新の情報を仕入れる広い視野が必要である。特に現場で必要とされる、若くポテンシャルのあるスタッフを採用したいならばなおさらだ。街場の飲食店とかだと、小さい会社だとこの手の仕事も店長に任される。大きな組織だと人事部に採用担当がいるので、ある程度任せることができる。
そして面接。面接の精度を高める事は、入ってからスタッフがしっかりエンゲージしてくれるかどうか、に影響してくる。ここがしっかりできないと、入ってもらっても長続きはしない。=結局現場の負荷となる。面接は、応募者にとっては転職活動、企業側にとっては採用活動である。双方が相手に何を求めているかを事前によく確かめておかないと、「あれ、こんなはずじゃなかったのに…」となるのである。だからある程度お互いにしっかりお互いの期待値を話してすり合わせる必要がある。企業側は、その企業文化を説明し、そのスタッフに期待する事をある程度明確に伝える必要がある。そして面接に臨むもの(応募者)は入るのが目的ではなく、長く続けることが目的なので、しっかりと自分が聞く事を聞く。むしろ自分が働く企業を見定める位の気持ちで臨むべきである(これには緊張をほぐす作用もある)。入社後のstaff engagementを高めるには面接はお見合いであり結婚相手を探す様なもの。そして仕事に望むものとして重要なのが対価だ。日本人、あるいは日本社会ではお金の話をタブーとする風習がある。僕は逆で、自分のパフォーマンスにいくら払う気があるのか?そしてその期待するパフォーマンスとは何か?を明確にしないで、どうやってプロとして対価を貰えるのか?なので、僕は必ず面接で「希望の条件」を必ず聞く様にしている。これは叶えられるかどうかは別として、一緒に働きたいと思った時に、それに近づける努力ができないからである。こちらがこれくらいだと思ったとしても、相手はそれ以上、もしくはそれ以下だと思ってるかもしれない。だからはっきり聞くのである。
余談だが、給与には適性価格がある。高ければ良いものでもない。もちろん低くては論外。自分の実力よりも給与をもらうと言う事は、自分の実力よりもパフォーマンスを求められると言う事でもある。特に役職者は、給与に見合ったパフォーマンスができないと、かなりシビアに戦力外通告を受ける可能性もある。この感覚は、プロスポーツ選手を見ればわかるだろう。チームの期待に添えない選手は、次年度の年俸交渉の時に年俸自体下がる。過去の成績が良くなければ、戦力外通告を受けることもある。非常にシビアな世界だ。ただこの感覚は、特に外資系のマネジメント層は理解しておいた方が良いと思う。高い給与もらう分、リスクも高くなる。
さて話を戻すと、面接の手法で1つ僕がずっと使っている手法がある。それはFOUR SEASONS HOTELで、マネジメント向けの採用面接の仕方のトレーニングで教わった。そして、それはオーストラリアメルボルンで働いていたCrownでも同様だった。非常に理論的で、慣れると使える手法だ。ただ習得するまで難しい。その手法とは、
BBI(behaviour Based Interview)
である。
実際にある場面で起こした行動を具体的に聞いていく面接手法。例えば、
「指導した通り部下が動かないときにはどうしますか?」
と言う質問をしたとする。この質問に答えるとき、応募者は正解の答えを見出そうとする。要は、変な答えをすると、受からなくなってしまうため、ベストアンサーを口に出して言う。実際には行動に移せてなかったにもかかわらず。同じ質問でも、以下のような質問の仕方で、具体的に起きた事案を思い出させて質問していく。
「今まで仕事をしてきた中で、あなたの部下があなたの指導通りに仕事ができなかったことを1つ思い出しやすいものでいいので、エピソードとして教えてください。」
「それは過去のどこの職場の話ですか?」
「その人とはどれぐらい一緒に働いていましたか?」
「その部下はいくつ位の方でしたか?」
「その時あなたは実際になんと部下に話しましたか?」
「どのような場面、場所で、その話をしましたか?」
と、具体的に起きた事例を聞いていく。これらの質問には、ベストアンサーなどない。単なる事実を聞いていくことである。どういうことかと言うと、その人がその場面でどのような行動や態度(behaivor)を起こすのか?と言うのが見えてくる。さらに言えば、もし仮に作り話だったり嘘だったりしたら、どんどん質問していくと、何となく本当か嘘か分かってしまう。
ネットで調べるとわかるが、このbehavioral based interviewの質問には、いろいろな定型質問がある。何を聞きたいかによって、どういう質問をすればいいのか、と言うのを調べることができる。例えばマネジメントで、この人のリーダーシップを知りたいのであれば、それに対する質問がある。接客の専門職で、どれだけお客様の満足度に対してコミットしているかがわかる質問など。マネージャーであれば、自分の部署内のポジションごとに、聞くべき質問をいくつか用意しておいて、面接の時に適宜最適なものを選んで、質問していけば良い。本当にこれは非常に使える手法なので、習得するまでに時間がかかるが、より高度なマネジメントを目指しているものであれば、ぜひ習得したいスキルである。
コロナ禍が明けて、外国人雇用促進するときに、1つ注意しなければならないことがある。それは面接でも常に公正公平であると言うこと。外国人だからといって、面接中に宗教のことを聞いたり、家族構成の事や、趣味などを聞くと問題になる場合がある。特にその応募者が面接で落とされたときには注意が必要である。仕事に直接関係ないことを聞くと、バックグラウンドも見れて非常に良いのだが、一方で受けてからすると仕事とは全く関係ないことで落とされたと感じる場合もある。例えば中東出身の応募者がいたとする。その応募者に対して、興味本位で「出身がオマーンであれば、イスラム教ですか?」などと聞いてしまったりすると、宗教で振り分けられたと思われる可能性がある。たとえそれが、単なる雑談だったとしても、そもそも面接で聞く質問だから、それが適切な質問かどうかをしっかり考える必要がある。こちらから質問したのではなく、相手が自分で言ってきたのはもちろん問題ない。こちらが聞いたことに対して答えた、と言う事実が危険なのである。よって上手な手法は、直接的質問をしないが回りくどく間接的な質問しながら自発的にその人の口から言わせるような質問の仕方。この手のテクニックは、Crown Melbourneと言う大企業で働いていた時に、移民文化のオーストラリアで差別(discrimination)にならない面接方法をトレーニングを受けたときに教わった。会社としては、管理職がこんなことで訴訟問題になると、非常に面倒な問題になるので、マネージャーは徹底的にトレーニングを受けさせられた。日本は正直、この辺の感覚がまだまだ甘い。日本の法律でもズブズブなので、訴えられることも少ないでしょう。だから過剰反応する必要はありませんが、外国人を面接するときには(特に欧米人)、この事実を頭の片隅に入れとく必要がある。
あとは聞くべき事を全て網羅したjob interview sheet (面接シート)を用意しておく事。面接官によって聞くことがブレると面接の精度が人頼みになる。面接官によって有望な人材が落とされる時も、逆に問題のある応募者を通してしまうこともある。だから最低限聞く事はある程度、面接シートに全て入れておく。その質問を聞きながら、熟練者はその時、その人、その状況に応じたエクストラの質問を出していく。そのエクストラの部分は、俗に言う「センス」や「第六感」と言うことである。このセンスで面接に精度はグッと上がる。
採用の話がかなり長くなってしまいましたので、今日はここまで。次回は教育の部分を少しお話しします。
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