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琉球新報への寄稿②<エネルギー自給率について>

先の投稿では、沖縄のエネルギー構造にかかる変革の必要性についてお話ししました。
今回は第2弾として、エネルギー自給率についてお話ししたいと思います。
「エネルギー自給率」と聞いてもパッと思い浮かぶことがあまりないと思います。
そうなんです。なかなか馴染みのない話ですので、2パートに分けて今回はお話ししたいと思います。

  1. エネルギー自給率が低いことで何が起こり得るのか(今回)

  2. なぜ沖縄の自給率は低い状況が続いているのか(次回)

エネルギー自給率が低いことで何が起こり得るのか

そもそも「エネルギー自給率」とは?

エネルギー政策を担当する資源エネルギー庁によると以下の通りの定義になります。

国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で確保できる比率をエネルギー自給率と言います。

資源エネルギー庁HPより

ちなみに少し簡略化されていますが、計算式は以下の通りです。
 エネルギー自給率(% )=国内産出/一次エネルギー供給×100
つまりは、「ある地域の供給エネルギー全体に占める、域外に頼らず自ら供給できるエネルギーの量」がエネルギー自給率ということになります。
国内産出のエネルギーは、再生可能エネルギーが最近ではメインになりますが、原子力もカウントされますし、少量ですが石油や天然ガスも国内で算出されています。

下図は各国とのエネルギー自給率の比較になります。
先の記事でも出しましたが、日本の自給率は以下の通りかなり低い状況ということが分かります。

資源エネルギー庁HPより

エネルギー自給率が低いと何が起こるえるのか?

エネルギー自給率が低いことに起因する課題は大きく2つあります。
一つ目は、「エネルギー価格の安定性」です。そして二つ目は「供給の安定性」になります。
一つ目は分かりやすいのですが、分かりにくいのは二つ目ですね。
一つずつ見てみたいと思います。

エネルギー価格の安定性


以下は最近の沖縄における電力料金の推移グラフになります。

沖縄電力の電気料金の推移(公表情報よりエネルギーラボ沖縄まとめ)

ご覧の通り2022年5月から高止まりしている状況です。
月平均では約1500円もの料金上昇が起こっているのが分かります。
これは沖縄電力のサービス価値が上がったことや利益上乗せ分などではなく、単純に輸入燃料価格(燃料費調整単価)の上昇によるものです。

ちなみに、沖縄のガス料金も上昇しています。沖縄ガスの「原料費調整制度に基づく単位料金」(電気料金の燃料費調整単価に相当)は
8月 35.37円/m3
9月 39.86円/m3

と1ヶ月で4.49円/m3も上昇しています。
月の平均資料用が大体30m3と言われているので、1ヶ月で約120円の上昇になります。

実はこれは沖縄ガスの場合で、電気料金と異なりガス料金の透明性は低いため、なかなかその他プロパン会社の料金はHPなどでは確認できないことがほとんどで、沖縄の中でも地域の実情が見えてこない状況です。。。。

供給の安定性

もう一つのリスクは「供給の安定性」です。
これは価格よりも現実味が低いですが、より深刻な話です。
実際に、関東地域では供給の安定性確保が難しくなったため、家庭や企業への「節電要請」が出されました。(この安定性については、猛暑による需要の大幅な増加も大きな原因の一つですが、需要に合う供給確保が難くなるケースとしてここでは取り上げています。)

NHKニュースより

実際に想定できるのは、日本周辺での有事が起こった場合に海外からの燃料輸入がストップしてしまうケースがあります。この場合、ある程度の備蓄が電力会社等にはありますが、それも限度があり(3.11後の記憶としてあるかと思います)「計画停電」によって需要側を強制的に調整することも想定されます。
さらにそれでも供給が追いつかない場合には、より深刻な「社会機能の停止」などがリスクとして想定できます。(電力・ガスだででなく、製造業や運輸業を含めたあらゆる化石燃料/輸入燃料を必要とする産業に影響が出ます。)

計画停電時の写真

「燃料が高い値段を払っても手に入らない」という現象は、日本でも最近100年をみても数回経験しています。記憶に新しいのは、、第1次及び第2次のオイルショック。
これは中東戦争を起因とする輸出制限がかかったことで、日本における供給不足の懸念から社会的なパニックが起こった例です。ただし、この時には価格は上がったものの、「供給が得られない」という状況は実際にはほとんど起こらなかったのが実情です。

「トイレットペーパーは十分あります」 昭和48年12月3日、静岡県富士市のヤオハンデパート(当時)のトイレットペーパー売り場の様子。(出典)静岡県富士市役所ホームページ

そして、その前ですと太平洋戦争前になります。
ABCD包囲網が敷かれまして、日本への石油の輸出が厳しく制限された結果、資源を求めて大陸・東南アジアに進出したという歴史があります。

ABCD包囲網

日本の太平洋戦争における行動の良し悪しは別にして、エネルギー自給率が低いということは、このような国家や社会として窮する場面に陥る可能性が高いことも意味するとも考えられます。
これだけ書いてみても、かなりの影響が出ることが分かります。
エネルギーの問題は国家の問題=国民生活の問題にもつながり得るのです。
そして、それがもはや遠い話ではなくなってきていることを、最近感じているのではないでしょうか?

沖縄の自給率は?

沖縄の自給率は幾らかというと。。。

沖縄県クリーンエネルギー・イニシアチブより

そうです。2019年時点で「2.7%」なんです。
日本全体が12.1%なので、いかに低いかが分かりますね。。。。

「2.7%」という数値以上に深刻

実は沖縄県は都道府県ランキングでは、43位になるのです。
そう聞くと、「沖縄よりも低いところがある」と思って少し安心するかもしれません。。。。
しかし沖縄県の下にいる地域を見てみると「京都府」「神奈川県」「大阪府」「東京都」と軒並み首都圏の地域が並びます。(なんと場違いなところに来てしまったのでしょう。)

エネルギーってもちろん都道府県で閉じて送ったり使ったりしているのではなく、都道府県を跨ぐことは当たり前です。
沖縄よりも下の4都府県も、その他周辺地域と融通し合いながらエネルギーを利用しています。
そう考えると、例えば最下位の東京都でも関東地域で見ると栃木県や群馬県が上位にランクインしているので、実は最下位以上の自給率は確保できる見通しがあります。

沖縄は自助が厳しく求められる

しかしながら、沖縄のエネルギーは近隣の都道府県(最も近い鹿児島県からでも)、船か飛行機で持ってくる必要があります。その輸送にも多くのエネルギーを要するので、国内においてもエネルギー自給率が最もリアルに反映されるのです。
つまりは、上記に記述したリスクが日本で最も起こりやすいのが沖縄県と言うことも過言ではないかもしれません。。。

沖縄は自ら自給率を上げて、有事に備えていく必要があるのではないでしょうか?
もちろん、自給率を上げることは「備え」という側面だけでなく、地域経済活性化という側面もありますが。。。(この点は別途書きたいです)

以上、長くなりましたがエネルギー自給率のリアリティについて書いてみました。
少しても危機感が伝えられればと思います。

次回は、なぜ沖縄の自給率が低いのかを探ってみたいと思います。

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