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野川の藤袴を育て、匂い袋を楽しむ

 藤袴は、秋の七草の一つで、万葉集や源氏物語にも出ており、古くから日本人に親しまれてきました。しかしながら、近年、自生地が減少して、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種です。今では、貴重な植物です。三鷹市付近では、30年ほど前までは、国際基督教大学構内でも自生していましたが、現在では、消滅しています。ところが、9年前の2011年8月に国際基督教大学の近くの野川の水辺に、自生していることがわかりました。

 多摩川の支流・野川の水辺は、年3回、東京都によって草刈りが行われています。藤袴は、多年草で、根が残っていると、春、新たな芽生えがありますが、成長する前に刈られてしまっていました。東京都北多摩南部建設事務所と相談し、藤袴が自生している場所約100㎡を、草刈りを除外していただいたところ、秋には草丈が1.5メートルにも成長して、薄紫色のきれいな花が咲きました。また、藤袴の花にひかれて、長距離の旅をするアサギマダラの姿が見られるようになりました。アサギマダラの写真は、2020年10月2日に野川の藤袴保全地区で撮影しました。

https://youtu.be/WeO5hpd0d4Y

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 この野川で咲いた藤袴の花の種を採種して、ポットに蒔いて、出来た苗は、これまで、三鷹市大沢コミュニティ・センターの花壇、三鷹市星と森と絵本の家の花壇、野川の源流日立製作所中央研究所の庭園などにも植栽し、花を楽しんでいただいています。今回は、鉢植えにして、三鷹市民の皆様に楽しんでいただきました。次の写真はセルポットに種を蒔いたフジバカマの芽生えです。

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「令和」の出典になった万葉集の大伴旅人邸での梅花の歌32首の序文に

『于時初春令月 氣淑風和  梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香』
とあります。

『折しも、新春の佳き月で、気は清く澄みわたり風はやわらかにそよいでいる。梅は美しい人が鏡の前で白粉をつけているかのように咲いているし、蘭は貴人の飾り袋の香のように匂っている』と伊藤博氏は現代語訳されています。

「梅」の花と対比して、「蘭」の香りが出てきます。この「蘭」は藤袴です。
野川に自生している藤袴の葉を乾燥し、粉にして、匂い袋をつくりました。桜餅の葉のような、クマリンの香りがします。「令和」の香りとも言えるこの藤袴の香りを、万葉の時代の人々は楽しんだようです。

 乾燥したフジバカマの香りを知っている人は少ないので、地元の野川のフジバカマの葉を採取して、1ヶ月ほど乾燥したものを、すり鉢で粗く粉にして、お茶パックに7gほど入れて、それをコットン麻布の巾着袋(ネット販売で既製品を購入)に入れました。すこしめんどうなのは、すり鉢で粗く粉にするところぐらいです。今年は、古いミキサーを使って粉にしました。 ほのかな、いい香りがします。

匂い袋

古くからの友人に差し上げたら、大変よろこばれました。


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