No.874 大江健三郎の残したもの
「大分合同新聞」(5月3日)の投稿コラム「灯」欄に、高校時代の恩師である後藤宗俊先生の「大江健三郎さんの訃報に寄せて」が掲載されました。是非、ご一読ください。
その翌日の5月4日、亡くなった大江さんをしのび、NHK総合テレビ(午前10時05分~午前11時24分)で「あの日 あのとき あの番組 大江健三郎さん 日本人へのメッセージ」という番組が組まれました。1994年(平成6年)のNHKスペシャル「響きあう父と子~大江健三郎と息子 光の30年~」の再放送でした。
番組のゲストだった小説家の平野啓一郎さんは、
「文体の非常に瑞々しい感受性と強靭さ、社会問題を扱う時の社会との間の緊張感」
に大きな衝撃を受け、
「小説は、こういう人が書くもんだなと思わせるくらい一文一文が強烈で、やっぱ圧倒されます。」
と印象を述べていました。
番組の最後で、平野さんは、大江さんが広島・沖縄に取材したノートから、
「(障害を持って生まれた息子を持つ)親として、作家として、困難な状況下で生きようとしている人々への共感と敬意を抱いている。」
「当事者の声に耳を傾け、対話を通じて思索し苦悩した作家である。」
ことなどを挙げられ、
「対話と行動を通して我々に問いかける姿を示した。」
そんな作家であることを強調されました。
偶然ですが、私には遥かな存在だった大江健三郎について、二日間にわたり思いをはせる時間を頂くことで、親しみと尊敬を覚えることができました。
※画像は、クリエイター・川中紀行/コピーライターさんの、大江健三郎さんの言葉を紹介したユニークなタイトルがついた作品をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。そのタイトルには、
「僕は、あらゆる職業の人間が、基本的な人間として畏れをもたなければならないと思っています。ところが、このところ政治家が、自分の仕事にそうでない。妙に大きいことを言う。畏れを感じない人たちが言い始めるのが、伝統とか文化とか、歴史とかについての『美しい言葉』です。言ったことが実現しなくても責任は問われない。その間、細かな現実で苦しむ弱い者は、何もしてもらえない。」
とありました。これは、サンデーモーニング(2023年3月19日 放送)でも流された、在りし日の大江さんが語った映像にあった言葉でした。