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No.405 あなたも江戸時代の老人度チェックしてみませんか?

 江戸中期の武士であり、国学者であり、俳人の横井也有(よこいやゆう 1702年~1783年)は、俳文集「鶉衣」(うずらごろも)を残していますが。「老人七首」という狂歌も残していることが、根岸鎭衛(しずもり、やすもり)の『耳袋』(『耳囊』)巻の四(東洋文庫207『耳袋 1』根岸鎮衛著、鈴木棠三編注。平凡社・1972年3月29日初版第1刷発行 P305~306)から知られます。

「老人へ教訓の歌の事    
 望月老人、予が許へ携へ來りし、面白ければ記し置きぬ。尾州御家中横井孫右衛門とて千五百石を領する人、隱居して也有(やゆう)と號せしが、世上の老人へ敎訓のため七首の狂歌をよめり。
  皺はよるほくろはできる背はかゞむあたまははげる毛は白うなる
   これ人の見ぐるしき(=みっともないと思う)を知るべし
  手は震ふ足はよろつく齒はぬける耳は聞えず目はうとくなる
   これ人の數ならぬ(=価値のない者と見る事)を知るべし
  よだたらす目しるはたえず鼻たらすとりはずしては小便もする
   これ人のむさがる(=汚らしいと思う)所を恥づべし
  又しても同じ噂に孫じまん達者じまんに若きしやれ言
   これ人のかたはらいたく(=苦々しくて)聞きにくきを知るべし
  くどうなる氣短になる愚痴になる思ひつく事皆古うなる
   これ人のあざける(=馬鹿にして笑われる事)を知るべし
  身にそふは頭巾襟巻杖眼鏡たんぽ温石しゆびん孫の手
   かゝる身の上をも辨(わきま)へずして
  聞きたがる死にともながる淋しがる出しやばりたがる世話やきたがる
 これを常に姿見として、己れが老いたるほどをかへり見たしなみてよろし。しからば何をかくるしからずとしてゆるすぞと。いはく、
  宵寢朝寢昼寢物ぐさ物わすれそれこそよけれ世にたらぬ身は」

 つまり、この七首を読んで、自分を映す鏡としながら、よく考えてみなさいと、ご隠居の横井也有はいうのです。そして、「世間に役立たない老人は、宵寢をし、朝寢をし、昼寢もし、物ぐさで、物わすれをする。それこそが良いのである。」と最後に付け加えています。もう老人の鑑(かがみ)、老人の味方、老人の救世主、老人の中の老人のような也有です。

※第三首目の「よだ」は涎(よだれ)のこと。「とりはづす」は粗相(そそう)すること。第六首目の「湯婆(たんぽ)」は湯たんぽのこと。「温石(をんじゃく)」は焼き石で、布に包んで懐炉(かいろ)にする。「しゅびん」は尿瓶(しびん)のこと。どれも老人の必需品?

 なるほど、七首の歌を私の場合に当てはめて読むと、
 1首目 私も皺が寄り黒子や痣あざが顔に浮かび、健康診断で毎年背が縮んでいます。
 2首目 手こそ震えませんが、足のよろつき、歯や、目や、耳は随分衰えました。
 3首目 涎や鼻水を垂らしたり目ヤニの悩みはありませんが、頻尿とお付き合い開始。
 4首目 人前での自慢はとても出来ませんが、人を凍り付かせるオジンギャグは得意。
 5首目 くどくどしい話はしません。短気になりがちな自分には気づいています。
 6首目 メガネは必需品。今の季節、襟巻はします。2月の厳寒期、湯たんぽも使用。
 7首目 世話焼きも出来なければ、出しゃばりも嫌い。一人遊びが出来るタイプ?
となりました。こりゃあ、也有の言う「老人」予備軍、いや、「ほぼ老人」の域に達しているようです。江戸時代の「老人度チェックシート」みたいな歌なのです。皆さんは、幾つ当てはまりましたか?私は、1~6までほぼほぼヒット、いや、該当しました。なるほど国家公認の「前期高齢者」扱いをされるのも無理はございませぬ…。ハイ。

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