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No.1048 あわれ、秋風よ…。

「試みに、薔薇の花かなにかをこってりとえがいた西洋皿に、生きのよいサンマをのせて静かに観察してみたまえ」。昭和の時代に「お魚博士」と親しまれた水産学者の末広恭雄(やすお)が書いている▲「なで肩を思わせるようにくんねりと弧をえがいた肩、長くてすっきりした胴、軽いうけ口に細くとがった顔、そしてどことなくコケティッシュな(なまめかしい)目をしたサンマの感じは、フランス絵画などにでてくる麗人をしのぶに充分である」(魚の履歴書)▲のみならず「細っそりとしたスカートの洋装に、軽快なハンドバッグかオペラグラスでももたせてみたいところである」というから、そのサンマびいきも生半可でない。 

出典:毎日新聞「余録」2015年10月21日)から抄出

秋刀魚もここまでみごとに描かれれば、本望でしょう。そんな気がします。

今から8年前の秋の記事だったのですが、道東沖の海水温上昇や外国船の北太平洋での「先取り」の故に、サンマは記録的不漁でした。浜値でさえ前年(2014年=平成26年)の1,5倍だということでした。こんなにも前から、不漁続きだったのですね。
 
ちょっと気になって、サンマのことを調べてみたら、
1958年(昭和33年)、私が5歳の頃、秋刀魚の漁獲高は約57万トンでした。
1990年代(平成の初め)に台湾や韓国がサンマ漁に参入し始めました。
2000年以降の漁獲高は約20万トン~30万トン。40年で半減です。
2013年(平成25年)には中国もサンマ漁に参入し秋刀魚が不漁となります。
2019年(令和元年)の漁獲高は約5万トンでした。60年前の10分の1です。
2022年(令和4年)の漁獲高は、何と1万8000トンを切ったそうです。
2023年(今年)の漁獲高は、昨年と同じく1万8000トンを見込んでいるそう  ですが、65年前の30分の1にまで大幅に激減していたのです。
 
厳しい現実でした。えらい変わりようでした。海洋環境の変化と各国の沖合漁業の進出が大きな痛手となり、秋刀魚の不漁が続く状況を見てみれば、サンマの値段が高止まりしているのは、至極道理なことのように思われます。
 
秋刀魚の記事や画像だけを肴に、一杯やるしかなくないのでしょうか?
あわれ、秋風よ…。


※画像は、クリエイター・青柳 千さんの秋刀魚の1葉です。その説明に、「東北から届いた秋刀魚です。 脂がのって大変美味しゅうございました。」とありました。秋刀魚の良い匂いが漂って来そうです。うまそ!
お礼申し上げます。