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私は何者か、306


アフォガート。今夜もいたって普通のシンプルなアイスにかけて食す。鼻からふんわりと抜けてゆく香りがまた素晴らしい。二月尽である。帰りの景色がくっきり浮かびあがる。足早にゆくもの。何もかもが移ろう間もなく吹き飛ばされては転げてまろびつ、もう、戻らぬつもりか。天鵞絨の手触りをふと思い出して、のめのめしたやはらかさにすべてを忘れてしまおうか、連れて行ってくれるのか、そこへ。などと、問うことすら恥ずかしくなって、元の姿勢に戻るのである。あと少しだと思うと、寂しくなったり、精いっぱいなんとかしようと思ったり、息苦しくなったり。口笛なんか下手くそなのに、そうそう、黄昏のビギンだか。誰に教わったのか一年ほども前だろか。知っていたのに知らないような、しらばっくれたり、しらかばばやし。だけかんばは赤い肌。アカショウビン、翡翠。似て非なるもの。とか。唯一無二の自身を持て余すでなく、かと言って途方もない方向へ我らは向かっているのかも知れぬが。解明できないことを嫌うのは、それはそれぞれ人の勝手ではあろうが、解明できぬことばかりを抱えた集団こそが人そのものかと。わかる問題から解きましょう。と、習ったような気がする。後回しにしていたものは、解らぬ問題ばかりではなく、嫌い、面倒、負の計算。負はいつも置き去りか。秋山真之氏の三日前の夢に見た敵艦の話。それが頭を離れない。夢の続きが現実で、今このときが夢へと繋がるのか。誰もわかっていまいが、この世は全て誰かの脳のなかの出来事でしかないのかも知れぬ。


眠り続ける火山のように。


決して目覚めぬが、いずれ、そのときが来るのではないかと。


誰かが誰かの脳から脳へ、まるで、宇宙旅行のように、逃避行しようと企てているのかも知れぬ。


放たれ、引っ張られ、gであるな。


躊躇いながら、小川へ。


オフィーリアの衣装は確か天鵞絨。



野の花を摘む。


私は何者か。


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