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自社スタジオ、5.1chから9.1.6chへ。その1

皆様お疲れ様です、株式会社okidesignの沖田純之介です。
私の自己紹介は以下にリンクしてあります。

かれこれ20年以上、音楽ライブDVDやBlu-rayの5.1chミックスを作ってきました。その中で特に売れたのは、安室奈美恵さんか少女時代さん東方神起さんでしょうか。全て5.1chミックスと2chミックスをしっかり作って来てます。

世の中には「2chを作ってからプラグインで5.1chに広げて(変換して)終わり」というのも多いのですが、自分はしっかり5.1chミックスを作ってます。プラグインで広げて終わりだと、AVアンプの機能と同じになってしまいますが、パッケージに「5.1ch」と記載出来るので販売で有利なのです。
そんな変換物でも、評論誌には「臨場感あるよいサラウンドミックス」とか書かれてたりします。それ見てから評論家は一切信じない事にしました。

自分の場合は、収録時にオーディエンスマイクを追加したり、リアにダイレクトボーカルをこぼしたりと、、かなり工夫をかなり凝らしてます。
それも25年以上、小さい賃貸物件の時から色々な5.1chシステムを組んで来て、実験して見て聞いて来た結果を取り入れてます。いろいろな環境にいるオーディオファンに少しでも届けば良いなと思って作って来ております。

そんな業界に長く居るわけですが「自宅に5.1chホームシアターがある」というエンジニアや作家、ディレクターに殆ど出会った事がありません。

アーティストだと、布袋寅泰さん葉加瀬太郎さんは自宅や事務所に組まれているそうで、オーサリングしてチェックディスクをお渡しした記憶があります。

過去には、4K収録でのハービーハンコック5.1chなんてのもミックスさせて頂き、こちらは海外なのでリニアPCM5.1chでデーターチェックでした。

映画もお手伝いしているので、5.1ch納品を沢山しておりますが、長年の疑問が、、
「一体どれだけの人が自宅で5.1chを聞けているのだろうか」という事です。恐らくですが、日本ではあまりいないのではないでしょうか?
だとすると家庭用販売物で5.1chを作るのは、かなり冒険的ですよね。

家庭用はその様な環境だと思いますが、映画館はどこも最低限5.1chのシステムがあります。そしてこの5.1chフォーマットはこれからもメジャーだと考えてます。という事で今後のサラウンドミックスは「映画館向けに力を注ぐ」事にしたいと考え、さらに弊社で行う映画の多くはミニシアター系で上映で、フォーマットも5.1chが基本、多くて7.1ch。それ以上のフォーマットは劇場側の施設や制作費用を考えると難しいです。
アニメとかであれば予算つきそうですが、自分がアニメ見ないので仕事は出来ないでしょう。そこで弊社はミニシアター系の7.1chにターゲットを向ける事にしました。

ミニシアターのシネクイント

では何故9.1.6chにするのか。
これは単に「自分が良いと思ってないと人に勧められない」からです。主な大手は「スタジオをアトモス対応にすれば客が来る」と思ってる所がまだあります。このような失敗は5.1chの時代にも多く見てきましたが、スタジオ所属エンジニアやサウンドデザイナーが情熱を持って「作品のグレードが上がるので、アトモスやりましょう!」と言えないと、仕事として進まないのです。自分はサラウンド作品が好きなので自宅でも聞きますし、監督やプロデューサー、レコード会社に営業を多くして来ました、だから自分にはそのような仕事が多いのだと考えてます。
当時自宅に組んだ5.1chと同じ様に、9.1.6chは勉強や研究用なので、実験として低予算で組むことにした訳です。因みに弊社のホームシアターは2014年から7.1.2chのアトモスイネーブルで、勉強は続けて来ております。

制作物予算の話し
メジャーアーティストの音楽物Blu-rayの2chと5.1ch、ライブミックス1本の予算は350万円程。ミニシアター上映映画の効果音とミックスの予算も大体350万程度です。いずれも外部スタジオ代金や経費は別途です。1日8時間15万円で予算を組み、土日は休んで週に5日稼働。そうすると大体1ヶ月で仕上げる計算になります。これを初めから外部スタジオに入ると、仕込み日程が圧迫されるので、販売音楽物は9割、劇場映画は7割の仕込みを自社でしていきます。自社スタジオの代金は先ほどの350万の中から捻出しますので、機材に大きなお金はかけられません。そして音楽物は1日、劇場映画は最低4日、外部スタジオに入る形になります。要は外部スタジオで研究する時間は無く、自社で研究部屋が必要になるわけです。そこで弊社は設立当初から自社で5.1chを組んでおります。

日活ダビングステージ

現在のシステム
そんな弊社の5.1chシステムはブルースカイのMediaDesk5.1、
ルーカスフィルムのスカイウォーカーサウンドで使ってるスピーカーです。これはベースマネジメンント回路内蔵スピーカーでして、各チャンネルの80Hz以下がLFEから鳴ります。これは一般的な民生機の5.1chシステムと同じ構成で「どれだけLFEに行ってしまうか」を確認しながらミックスが作れ、かなり重宝してます。そんなブルースカイも15年使いましたが「そろそろ入れ替えないとな」と考えておりました。これに代わる物はジェネレックから出ておりますが、ジェネの固い音が苦手でして、、どうしたもんかと数年考えておりました。

Yamahaに救世主が居ました
そんな中、YamahaDME24Nが中古で出回るようになったのを知ります。これはWinPCと接続して自由に回路が作成出来る機器で、弊社のは16in16outです。これを使えばベースマネジメンント回路も作れ、余ったチャンネルで天井スピーカーもアサインできます。もちろんスピーカーそれぞれにEQもかけられ、7.1chも問題なく、9.1.6chまで対応出来る事がわかりました。

スピーカープロセッサー類

このDMEを駆使して作った9.1.6ch回路は以下のようになります。
LCRには31バンドGEQを入れたかったのですが、エンジンが足りませんでした。これで96kHz稼働しており、Yamahaのサイトによると48kHzまで周波数特性が伸びているそうです。まあそこまでは聞こえませんけどね。

DME24Nの内部回路
DME24Nのコントロールパネル、自由に作れます。

先ほど書きましたが、弊社の作る9.1.6chは「映画の仕込みをするスタジオ」です。映画館のサラウンドスピーカーは、壁面に配置された多数のサラウンドスピーカーが一度に鳴り、1本のサラウンドスピーカーから鳴るダイレクトサラウンドではなく、ディフューズサラウンドになります。簡単に言うと、後ろがボヤけた定位になります。
解りやすいサイトがありましたので、貼っておきます。

これをダイポールスピーカーで構築出来れば良いのでしょうが、気軽に購入出来るものでその仕様はありません。長引くコロナ状況もあり各メーカーのスピーカー生産が大幅に遅れており、主要なスピーカーは「生産未定」となってます。そこで考えを整理いたしました。

日活スクリーン裏のLch

映画館というのはフロントLCRのスピーカーが同じ機種で、サラウンドのスピーカーが同じ機種という所が普通。全チャンネル同じスピーカーというのは設置の問題や予算の問題であり得ません。そこで弊社もLCRは同じ物で、映像編集室でよく採用されている「Yamaha HS5」を採用しました。事前にペアを購入しテストしましたが、空気感は不足気味でアンプ性能も低いと感じましたが、DMEのEQで多少は回避でき、小さな音の仕込みであれば全く問題ないと考えました。

回路図

LFEは「Yamaha HS8s」です。たまにLFEだけ別メーカーを採用するスタジオがありますが、帯域毎のスピードが変わってしまうので、同じメーカーで同じ機種ラインで揃える事をお勧めします。

サラウンドは民生機のパッシブ「Yamaha NS-C210」です。
ここに今迄作業してきた考えが纏まっておりまして、
「作業はフロントで音処理をしてから後ろにアサインする」「ベースマネジメントするので100Hz以下は要らない」「リアに低域を持っていくとミニシアターではフロントLFEから鳴ってしまうので低域では勝負しない」「一般的に売られているのはバータイプのホームシアターでリアとトップはシュミレーターである」「ミニシアターではサラウンドスピーカーがお手製という事も多い」「いずれイヤホンでバイノーラル視聴の時代になる」という考えから「自分の作業では全チャンネル同じスピーカーは必要無くサラウンドは安物で良い」と結論づけました。

アマゾンのリンクを貼りましたが、実際にはヨドバシ.comにて、
WL/R、SideL/R、BL/R、TopFL/R、TopML/R、TopBL/Rの12台を購入しました。頼んで3日後には到着したので在庫余っていたのでしょうね。
このスピーカーにしたのは、「次回バージョンアップ時に使わなくなれば、ホームシアターに回せばよい」と考えたからです。
現在ホームシアターは、140インチ、7.1.2chのアトモスイネーブルで、フロントはB&WCM9で組んでます。こちらに持っていけば良いかなと考えました。

自宅ホームシアター。140インチ、7.1.2ch。天井はイネーブル。

9.1.6chのアンプはWL/R、SideL/R、BL/Rに「CLASSICPRO CP500X」
TopFL/R、TopML/R、TopBL/Rには「CLASSICPRO DCP30 mini」としました。アンプはそれぞれサウンドハウスショールームにてチェックし、問題なかろうと判断してます。本当はアンプも「Yamaha XM4080」あたりにするのが正解でしょうが、予算オーバーですので、次回更新時に考えたいと思います。

天井用の6本。

まとめ
このように、ミニシアター映画向けの9.1.6chシステムを組んでおり、準備を進めております。既に天井はワイヤリングも終わっており、現在行っている5.1chの仕事が終わり次第、いろいろと入れ替える予定でおります。
記事は一旦ここまでとさせて頂きますが、次回はどうやって天井に組んだのか等書かせて頂きます。
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2月6日現在の自社スタジオ。

その2から最後の11までは以下でございます、よろしくお願いいたします!

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