【フリー台本】悪魔の恩返し　女悪魔ver.（男女二人向け）

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【概要】

あらすじ

疲れたサラリーマンが家に帰ると、可愛い女の子が出迎えてくれた⁉︎
話を聞くと、どうやらこの子は悪魔で、恩返しに三つの願いを叶えてくれるという。

男女逆バージョンもあります。

情報

声劇台本　二人用
編成　　　男性1人　女性1人
上演時間　約20分

＜＞内はト書き。

登場人物

男性（男性）
　疲れたサラリーマン。疲れすぎて、悪魔の存在もカンタンに受け入れてしまっている。
　後半に声色の変更を求める箇所があります。

悪魔（女性）
　見習い時代に男性に助けてもらったので、恩返しに来た悪魔。
　途中、少女声から大人声へ、声色の変更があります。

【本文】

男性
　はぁああ。仕事つかれたぁああ。鍵かぎをあけたら散ちらかった真まっ暗くらな部屋。これから適当てきとうにご飯はん作って……。あぁああ……全部めんどくさい。癒いやされてぇー……。

　　　＜男性、鍵を開ける＞

悪魔
　おかえりなさい、おにぃさん！

男性
　……あれ？　家、間違まちがえたかな？

悪魔
　ふふふ。なに言ってるの？　今、自分で鍵　あけたでしょ？

男性
　じゃあなんで、その鍵のかかっていた独ひとり暮ぐらしのアパートの部屋のなかに　小学生くらいの見知らぬ女の子がいるのかな？

悪魔
　ひどぉい。わたしのこと、わすれちゃったの？

男性
　こんな、めちゃくちゃ可愛かわいい子、知り合いにいたら覚えてると思うけど……。
　記憶にございません。きみは……誰だれ？

悪魔
　まあまあ、まずは玄関げんかんに突つっ立たってないでお部屋にはいろ？

男性
　う、う……ん？

　　　＜男性、悪魔に手を引かれて部屋に入る＞

悪魔
　では、あらためまして。わたしは、昔あなたに助けてもらった悪魔あくまです。

男性
　……は？　悪魔？

悪魔
　はい。悪魔です。

男性
　いやいや、悪魔って……。　助けた記憶も、まして会った記憶もないけど？

悪魔
　わたしが見習い悪魔だったころ、あなたのお友達がわたしのことを召喚しょうかんしたんですけど……

男性
　ちょっとまて。それ、俺の厨二病ちゅうにびょう時代じだいの黒歴史くろれきし掘ほり返かえされるやつじゃない？

悪魔
　え？　時代や歴史というほど昔の話では……

男性
　いやいや、それは比喩ひゆ表現ひょうげんだけど……。
　うん……ちょっと思い出してきた。
　確かに友達と、夜中の河川敷かせんじきで悪魔召喚しょうかんの儀式ぎしき、やったわ。
　でも結局けっきょく、悪魔は出てこなかったような……。

悪魔
　ちゃんと呼ばれてはいたんですよ。
　ただ召喚失敗で、わたし、その時　実は、エグい事態じたいになっていたんです。
　召喚魔方陣まほうじんの不備ふびとわたしの力不足のせいで、ニンゲンの前で実体化できるかできないかという、すごく微妙びみょうな状態になって　四肢ししがバラバラの散ちりぢりになるところで……

男性
　そういえば……なんも起こんねーな、なんて言ってたら、そのうち魔法陣から黒いモヤが出てきたっけ。
　で、めっちゃビビって、儀式をやってた友達はさっさと逃げちゃってさ。
　俺は、ロウソクの火で火事になってもヤバいから火だけは消した気がする。

悪魔
　その、火を消していただいたのが良かったんです。
　あと数十秒でも火が燃え続けてたら、わたしは消滅しょうめつしていました。

男性
　へえ、そうだったんだ。
　……ん？　でも、それだとやっぱり、会ったことはないのでは？

悪魔
　あれぇ？
　あ、そっかぁ。結局、実体化した姿は　見せず終じまいだったっけ。
　それは、失礼しました。

男性
　はあ……

悪魔
　とはいえ、おにいさんがわたしのことを覚えてるかどうかは問題じゃなくて。
　つまり今、どうしてわたしがここにいるかってことだけど……。

男性
　うん。問題はそこだね。

悪魔
　あの時の恩返おんがえしがしたいんです。

男性
　悪魔が恩返しって……やってること真逆まぎゃくのように思うけど。

悪魔
　案外あんがい、義理ぎりと人情にんじょうを重んじるんですよ。

男性
　それで、いったいなにしてくれるの？

悪魔
　三つの願いを叶かなえます。

男性
　それ、全部叶ったら魂たましい取られるやつでは？

悪魔
　本来そうです。

男性
　じゃあいらねぇよ。

悪魔
　本来、ですよ。
　 確かに、わたしたち悪魔はニンゲンの願いを叶えたら　見返みかえりに死後の魂をいただきます。
　でもこれは恩返しですから、魂をもらわずに済すむ範囲はんいでのお願いをききます！
　その代わり、出来ることは限られてしまいますけど。

男性
　んー……魂が取られないなら……。いいのかな？

悪魔
　ニンゲンにとって、こんなに条件のいい話、そうそうないですよ。

男性
　正直まだ半信半疑はんしんはんぎだし、よくわからないけど……現状は理解した。


悪魔
　では、一つ目のお願い、何かありませんか？

男性
　じゃあ……うーん……。
　働かなくても生きていけるくらいのお金が欲しい、とか？

悪魔
　あぁ〜……そのお願いは魂もらっちゃう範囲になりますね。もっと、軽い感じで！

男性
　軽い感じ……。え〜っと……。
　──あ！　疲れて帰ったときに癒してくれる彼女が欲しい。

悪魔
　はい！　わかりました！　それなら大丈夫です！
　　　＜悪魔、咳払せきばらい＞　

　おかえりなさい！　お疲れ様！　ごはん、できてるよ。それともお風呂にする？

男性
　え？　え？

悪魔
　わたしは今すぐにギューってしたいな。ギューってすると疲れが取れるよね。
　ギュー！

　　　＜悪魔、男性に抱きつく＞

男性
　わ、わ！　どういうこと？

悪魔
　わたしが彼女だよ？

男性
　あ、ああ。そういうこと？　うーん、歳下としした……ていうか子どもは、ちょっと……守備しゅび範囲外はんいがいっていうか。

悪魔
　え？　だめ？

男性
　んんん！　上目遣うわめづかいい可愛い！　けど背徳感はいとくかんがヤバい！
　いや、俺はロリコンじゃないはずだ！

悪魔
　ふふ、わたし、いい彼女になれると思うけどなぁ。

男性
　ちょっとまって！　やっぱダメだ。
　仮に本当に彼女になったとして、外を一緒に歩いたら犯罪者はんざいしゃか、親戚しんせきの子のお世話かどっちかだろ。下手すりゃ変態扱いだわ。
　もっと、年齢的につり合った人がいいんだけど？

　　　＜悪魔、大人の姿になって、少女の声から大人の声に＞

悪魔
　それは、二つ目のお願いでいいかしら？　この姿ならどお？

男性
　え？　さっきの悪魔ちゃん……？

悪魔
　ええ。見た目の年齢操作そうさくらい、カンタンですもの。この姿の方がお好み？

男性
　そ、それは、もう……。
　──て、な、ななななんでさりげなく　腕組うでくんでんの⁉︎
　＜小声で＞　豊満ほうまんな胸がばっちりあたってるんですけどっ。

悪魔
　ドキドキしてくれるかなぁ？　と思って。

男性
　至近しきん距離きょりの破壊力はかいりょく、ヤバいです……

悪魔
　気に入らなかった？

男性
　気に入らないんじゃなくて！　びっくりしただけっていうか、混乱こんらんしてるだけっていうか！

悪魔
　よかったぁ。　あなたに好きになってもらいたくて、実はニンゲンの男の子が喜びそうなこと、ちょっと勉強したの。

男性
　めっちゃドキドキ……して、ます。

悪魔
　ふふふ、嬉うれしい。　──さあ、三つ目のお願い、なにかある？

男性
　うーん…… すぐには思いつかないから、今はいい、かな……。

悪魔
　そう？　じゃ、ごはんにしましょ？　手料理作って、帰ってくるの待ってたんだから。

男性
　う……ううん……。これは、受け入れちゃってよかった　のか……？

　　　＜間＞

男性
　それからしばらく。
　悪魔との甘ーい同居どうきょ生活せいかつは続いている。
　疲れて仕事から帰ってきたら、ごはんを作って待っててくれる。おかえりと言ってくれる。すごく甘やかしてくれる。部屋まで片付いている。
　そして見た目がよい。声も良い。一番人気の職場のアイドル、可愛いあの子が　もはやモブに見える。
　──だめだ、このままじゃきっとだめだ！　ある意味、悪魔に魂抜ぬかれてしまっている！

悪魔
　何をぶつぶつ独り言いってるの？

男性
　あ……いや、なんでもないよ？

悪魔
　お疲れみたいね。今日もクレーム対応しんどかった？

男性
　うん、まあ、しんどかったかな。

悪魔
　じゃあ、こっち来て。癒してあげる。

男性
　う……うん……ありがと。

悪魔
　もう、遠慮しなくていいのに。わたしは彼女なんだから。
　ほら、甘えてきていいんだよ？

男性
　あー……こうやって胸に顔うずめてると、本当に疲れが取れる気がする。

悪魔
　ふふふ。そろそろ、わたしなしではいられなくなってきたんじゃない？

男性
　んー……頼たのんだらずっと一緒にいてくれたりするの？

悪魔
　それは、三つ目のお願い？

男性
　えーっと……じゃあ、うん。そうなるのかな。

悪魔
　わかった。ずっと一緒にいてあげる。
　──けどね、魂をもらう契約けいやくじゃないから、完全にあなたのものになることもできなくて……。あなたが働きに出てる時間とか、わたしも悪魔のお仕事しにいったりするから、それは許してね。

男性
　いや、それはもう、全然！　仕事辞めてずっと家に閉じこもっててとか、そんな束縛そくばくするようなこと言わないし！
　……て、んん？　そもそも、悪魔に仕事させるのは人間にとっていいことなのか？

悪魔
　まあまあ、そこはほら。わたしみたいな低級の悪魔は、せいぜい召喚されて魂と引き換えに多少の願いを叶えるくらいしか　できることないから！　むしろニンゲンに望まれてやってる仕事だし？

男性
　じゃあいいのか……。いいのか？

悪魔
　それからもう一つ。　あなたの声をちょうだい？

男性
　声？　ちょうだいって……え？

悪魔
　三つの願いを叶えた代償だいしょう。

男性
　え！　でも、代償はいらないって、はじめに言ってただろ⁉︎

悪魔
　魂はいらないっていったけど、まったく見返りなしでは願いの契約はできないのよね。

男性
　は……？

悪魔
　だから、声をちょうだい。あなたの声、とっても素敵すてきだから、女性相手の仕事の時に使いたいな。

男性
　いやいや。なにそれ。　声を渡わたしたら、俺はどうなるわけ？　喋しゃべれなくなんの？

悪魔
　そりゃあそうでしょ。わたしのものにするんだから。

男性
　けど、声がなくなるのは困る。生活に影響が大きすぎるだろ。

悪魔
　うーん……魂を取られる代わりの、破格はかくの条件だと思うんだけどなぁ。

男性
　けど、はじめは見返りはなにもいらないみたいな言い方だっただろ⁉︎　話が違う！

悪魔
　──じゃあ……特別大サービス。わたしの説明が足りなかったし、恩返しなんだからあなたを困らせたいわけじゃないもの。でも、これっきりだからね？
　あなたの声はもらっちゃうけど、代わりの声をあげる。正確には、これ以上あなたから何か代償をもらわないために　新しい声は呪のろいって扱あつかいにでもするね。

男性
　の、呪い⁉︎

悪魔
　あ、こわくないよ？　あなたが何も差し出さずに受け取れるものが呪いしかないってだけだから。　だから、あくまで形式上ね？
　これ以上の譲歩じょうほはないし、三つの願いを叶えた以上、拒否権きょひけんはないわ。

男性
　どんなに普段優しそうに見えても、悪魔は悪魔なんだな……

悪魔
　ええ。悪魔との契約は　絶対。わたしを受け入れた時点で、あなたに逃げ道はないの。

男性
　もし逃げたら？

悪魔
　聞かないほうが、いいかも？

男性
　……わかった。逃げられないなら、覚悟、決めるしかないな。

悪魔
　じゃ、声、もらうためにキスするね。

　　　＜悪魔、男性にキス＞

悪魔
　さ、どう？　なにかしゃべってみて？

　　　＜男性、この先のセリフはここまでとは別人の声色で＞

男性
　なにかしゃべってっていわれても……あ、あれ、ああああ

悪魔
　うん、大成功。

男性
　うわぁああ、自分の声じゃないって、なんか気持ち悪い……。

悪魔
　それでも、なるべく根っこは似た感じの声質、選んだんだからね。
　あなたのこと大好きだから、うっかり甘やかしちゃった。

男性
　明日からの仕事とか、この声で大丈夫かな？　家族や友達にも変に思われるだろうな。

悪魔
　ああ、あなたの声を使ってお仕事する日が楽しみだなぁ。はやく誰か召喚してくれないかなぁ。

男性
　なあ。やっぱり……、今までのお願い全部なかったことにして、とか……無理だよな？

悪魔
　契約破棄はきはできないって言ったじゃない。
　それとも、わたしのこと　嫌いになった？

男性
　嫌いとかは……ないけど……ちょっと、怖くなってきた。

悪魔
　怖がらせてごめんね。でも大丈夫。わたしなりに、あなたのことは絶対に幸せにするから。
　ずっとずっと一緒にいようね。



終

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（ランチタイム以上）

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