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34.三題噺「クレーター、ボルト、ジャンクフード」
体育祭の準備が一通り終わった放課後、僕が鞄を取りに教室へと戻ると、同クラさんが夕暮れの教室でひとり静かに本に夢中になっていた。
その表情はとても綺麗で、集中している同クラさんに声をかけるかどうか悩んだ。
でも、ずっと見ているのも変だよね。
「同クラさん」
「ひゃぁ!」
同クラさんは予想通りびっくりして飛び跳ねた。
「ごめんね、突然」
「ううん。私が夢中になってて気づかなかっただけだから」
同クラさんは乱れた髪の毛を整えてそう言った。
「何読んでたの?」
「イギリスのロバート・ボルトっていう劇作家さんの和訳書を読んでたの」
と、本の表紙を見せてくれる。
不思議なチェリー色のイラストが描かれていた。
「君は本読んだりするの?」
「うーん、あんまり読まないかな。文章に触れるのも授業以外だとオカルト的な話を時々ネットで調べて満足するくらい」
「あ、それならさ!」と同クラさんは意外にも話に乗ってきてくれた。
「オレゴンの神秘の湖って知ってる?」
「え、なにそれ」
「クレーター・レイクっていう休火山のクレーターに雨水ができてできた湖なんだよ。不可解な事件とか幽霊との遭遇、架空の生き物がいるって言い伝えがある場所なの」
同クラさんはワクワクとした擬音が体の周りに浮かんでいるように見えるくらい興奮して話してくれた。
「面白い場所なんだね」
「うん! いつか私も行ってみたいんだー」
笑うと同時に、夢を膨らませる同クラさんのお腹がかわいい音で鳴った。
一気に顔を沸騰させる同クラさん。
「……何か食べに行こっか?」
「う、うん。そうしようかな」
「何食べたい?」
「本を読んでるとカロリーを使うから、ジャンクフードが食べたいな」
その後、僕らはチェーン店のハンバーガー屋に行った。
同クラさんは、小さいお口でハンバーガーに齧り付きながらも終始照れを引きずっていた。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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