81.三題噺「価値観、変わらない、コンパクト」
私は夏休みを満喫して平日の昼間からリビングのソファでダラダラと過ごしていた。
「時間が過ぎるのも早いもので、明日は夏休み明けの登校日、なんてことないかな……」
「あるはずないでしょう」
私の独り言にお姉ちゃんが反応した。
今日はお姉ちゃんも仕事が休みだ。
「都合よく時間飛ばせたら苦労しないわよ」
「だって後輩くんに全然会えないんだもん! もっと遊びたい! 毎日会いたいぃ〜!」
「夏休み始まって数日なのに……」
お姉ちゃんは私を憐れんだ。
「後輩くんが私のこと忘れちゃうんじゃないかって不安なんだもん……」
「そんなすぐに人は変わらないわよ」
「でもでも! 夏休みデビューって言うでしょ? 後輩くんが夏休み明けに真っ黒に日焼けして、髪も染めて、ピアス開けてたら流石に私もびっくり仰天だよ?」
「そういう価値観の子じゃないって知ってるでしょ?」
「うん……。後輩くん、すごい真面目」
でしょうでしょうとお姉ちゃんは頷いた。
「でも、ちょい悪でオラオラな後輩くんも悪くないなぁ。ちょっと振り回されてみたい」
「うわぁ。我が妹がまた惚気た……」
「別にいいでしょ!?」
「あなたの後輩くん談義が始まると話が長くなるのよ。もっとコンパクトにしなさいよ」
「できない!」
「自信満々で即答するのね……」
「むしろ語り足りないくらいだよ。私の好きはそんなものじゃないんだよ」
「……まずい。なんか嫌な流れ来てる」
「聞いてくれる!?」
「……急用を思い出したな〜……」
お姉ちゃんはわざとらしく口笛を吹こうとして、失敗して唇を窄めて息をふぅふぅ吹くだけになっていた。
あ、恥ずかしそうに目を逸らした。
「お姉ちゃん、今日は完全にオフでしょ? 愛しい大切な妹の話に付き合ってよ〜」
「駄々をこねるな。わかった。わかったから肩をガッツリ掴んでゆするな」
「やたー!」
私は両手を上に挙げて万歳。
お姉ちゃんはゲンナリ。
ご飯の時は控えつつも、たまには姉妹仲良くと、一緒にお風呂に入って語り続けた。
「仕事してた方がマシだったかも……」
疲弊したお姉ちゃんがボソッとつぶやいた。
「その勢いでアタック・アピールすればいいんじゃない?」
「少しは頑張ってるよ? でも、がっつき過ぎて嫌われるのは怖い……」
お姉ちゃんはため息をついて呆れつつも、「大丈夫よ」と頭を撫でて励ましてくれた。
「えへへ」
文句は言いつつも付き合ってくれる自慢のお姉ちゃんだ。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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