73.三題噺「はざま、チャンピオン、男気」
「え、なんで!?」
私の前にはボクシングのリングがあった。
ライトアップされて後輩くんが出てきた。
「っっっっっ!!!!」
その姿を見て、私は手で両目を塞いだ。
好きな人が男気溢れる筋肉を惜しげもなく晒してるなんて、衝撃的すぎる。好き。
直視してしまったら私は物語の世界のように鼻血を吹き出して気絶してしまうだろう。
でもっ、見たい!!!
私は指の隙間から後輩くんをちらっと見た。
「はうっ……!」
だめだ。あまりの破壊力に耐えきれない。
いや……。見るのだ。
脳裏に焼き付けて記憶しなければ。
私は理性が吹き飛ぶのもお構いなしに欲望に従った。
試合が始まり、後輩くんは敵との激闘の末、勝利した。
チャンピオンの6文字がレフェリーから告げられ、後輩くんは右手を上に掲げた。
汗が滴る後輩くんの姿は素敵だ。
きっと私はハート目だ。
「先輩。勝ちましたよ」
一瞬で、後輩くんは私の目の前にいた。
「えっ、なんで!? ち、近いよっ……」
私はガチ照れして後輩くんを遠ざけようとするも、逞しい肉体に触れるはずもなく……。
行き場を失った手は右往左往。
「先輩!」
後輩くんがそんな私の手をガッと握った。
暑く情熱的な眼差しが私を射抜く。
ハートはとっくに後輩くんのモノだ。
後輩くんはそのまま私に顔を近づけてきた。
シチュエーションとか、私の心の準備なんて些事だ。
これはチャンスだ。
そこで不自然な流れに一瞬冷静になった私は、いつの間にか私の部屋に移動していることに気づいた。
後輩くんもいつもの制服姿になっている。
……あれ? 後輩くんが瞬間移動してたことも、一瞬で景色が変わったのも変だ。
「これって、まさか……」
夢であることを自覚した私の意識は急浮上。
後輩くんの姿も、私の手を握る両手の温もりも遠ざかってしまう。
夢と現実のはざまのふわふわ状態で、私は必死に抵抗した。
それを支えるのは後輩くんとキスしてみせるという鋼の意志。
でも、いつまで経ってもキスは無かった。
目を開けると見慣れた自分の部屋の天井がある。
夢から覚めちゃったんだ。
「夢オチなんてサイテー……。私のドキドキを返してよ……」
高鳴る鼓動のまま、私は愚痴をこぼした。
冷静になるにつれ、夢の中とはいえどはしたなかったかもしれないと気づいた。
私はお姉ちゃんが帰ってくるまでモジモジと悶えて「うわあああああ」と叫んだ。
当然、帰宅したお姉ちゃんから変な目で見られた。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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