見出し画像

47.三題噺「死、合格祈願、左右」

「ねえねえマカロンくん」

 授業中、私はこっそりと隣の席の生徒会長のマカロンくんを呼んだ。

 いつも通り予習を済ませていて、別の教科の受験勉強をしてるみたいだ。

「なんだ?」

 マカロンくんは、ふぅと息を吐いてからメガネを外して私を横目で見た。

「好きな人の前で平常心でいるってどうしたらいいんだろうね」

「突然どうした? ……俺は、好きって言う気持ちがすでに平常心じゃないわけだから、諦めた方がいいんじゃないかって思ってる」

 マカロンくんは生徒会顧問をしている女教師のことが好きだと思う。というか絶対好き。

 今も板書してる先生のことを熱い視線でチラチラ見ているもんね。

「……確かに言われてみればそうかも」

 私は大好きだって寝言を言われる前から後輩くんの前でずっとドキドキしていた。

 気持ちに納得がいったことで、私の興味はマカロンくんに移った。

「マカロンくんって、先生のこと大好きだよね?」

「は、はぁ!?」

 驚いてから、マカロンくんはわざとらしくごほんと咳をした。

 左右に目が泳いでいるから隠しきれてないけどね。
 ちゃんと白のチョークで板書してる先生を見てるし。

 目があって動揺したのか、マカロンくんは膝を机にぶつけた。

 ガタッと机が揺れた衝撃で、何か文字が書かれた紙がひらりと、私とマカロンくんの席の間に落ちた。

「何これ?」

 拾って見てみると「才」の文字が書かれていた。

 マカロンくんはとっても居心地が悪そうだ。

「……引き出しの中に「才」の文字を書いた紙を貼ると受験が成功するっていう合格祈願があるんだ……」

 くすっと、私は笑ってしまった。

「意外と子供っぽいところあるんだね」

「何も言うな……」

「あはははは」

 難関大学でも余裕と言われてるけどプレッシャーで不安がるかわいい一面もあるんだなあ。

「そこ、うるさいぞ」

「はぁい」「……はい」

 私とマカロンくんは先生から注意されてしまった。

「恥ずかしすぎて死にたい……」

 マカロンくんは顔を両手で覆った。

 踏んだり蹴ったりなマカロンくんは可笑しい。

 授業中だから静かにしなくちゃいけないのに、笑いを堪えるのが大変だった。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
⤵︎
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?