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18.三題噺「すまし顔、好き勝手、地上げ」

 盛り土をして地上げされた青い桜並木を歩く。
 日差しが木の葉の隙間から差し込む気持ちのいい爽やかな朝だ。

「おはよっ。後輩くん」

 声と同時に僕の左肩がとんとん叩かれた。
 そこには笑顔の先輩がいた。

「あ、先輩。おはようございます」

「うんうん、今日も元気そうで何よりだよー!」

「先輩は朝からハイテンションですね」

「元気が取り柄だからね」

「流石先輩」

 元気が有り余ってるからいつも猪突猛進ぎみな行動力なのかな。

「登校時間被るなんて珍しいですね。僕少し早めなのに」

「会えてうれし?」

「そんなことないですよ」

「私はかわいい?」

 う、それは否定したいのに否定できない………。

「後輩くんは今日もかっこいいね」

「え!?」

「あ、照れてる〜」

 かわいい、と髪を耳にかけた先輩はくすっと笑った。鼓動のバクバクがおさまらない。

「好き勝手言ってからかわないでください。僕がかっこいいなんてことないですよ」

「そんなことあると思うけどね」

 反撃するには仕方がないけど、これしかない。

「先輩だって今日も、か、可愛いですよ……」

 お返しのジャブを食らわせようとして吃った……。本心だから尚更恥ずかしい。

「ふ、ふぅ〜ん?」

 先輩はすまし顔をしてる。

 けど、さっき耳に髪をかけてたから真っ赤な耳も横顔も丸見えだ。

「……」
「……」

 途端に何も話せなくなってしまった。

 朝からなんだろうこの空気。くすぐったい。

 攻撃した僕の右肩にかけた鞄と、くらった先輩の左肩にかけた鞄がぶつかって、お互いダメージを受けた。

 その日一日、先輩と僕はなんだか顔を合わせる度にぎこちなかった。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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