51.三題噺「ハイライト、名簿、蒸し風呂」
日曜日だからって外に出てきたけど、直射日光と湿気で蒸し風呂のような暑さだ。
「あれ……?」
僕は前方に見知った女の子がいることに気がついた。先輩でも同クラさんでもない。
「こんにちは、後輩ちゃん」
後輩ちゃんは生徒会役員を目指しているちっちゃい女の子だ。
細身なのに主張するところは控えめに主張していてちゃんと女の子している。
真っ白な肌と人形のような顔立ちは可愛いと噂になるのも納得だ。
「……せんぱい」
振り向いた後輩ちゃんは覇気がない。
瞳のハイライトを無くして僕をじっと見てきた。
「どうしたの?」
「せんぱい、ずるいです」
「……え、何が?」
「私、やっと出番がきた! と思ったらこの扱いですよ……」
後輩ちゃんの足元を見ると、何か茶色の、たぶん犬の……があった。
ぐすっと、後輩ちゃんは涙目だ。
「後輩ちゃん、相変わらず不憫だね」
「う、うるさいですよっ! 用意周到完璧超人の後輩ちゃんを舐めないでください! 必殺兵器だって用意してるんですから、油断してたらせんぱいの生徒会役員の地位なんて簡単に奪っちゃうんですからね!」
後輩ちゃんは生徒と教師の詳細情報が詰まったお手製の名簿を自慢気に見せてくれた。
「へえ、他のページも気になるな」
「あ、それ以上近づかないでください。半径3メートル以内に入ったら悲鳴をあげます」
「もう隣に立ってるんだけどね」
「……先輩に近づかれると私の鼓動の高鳴りがやばくて倒れちゃいそうなんですよ」
「え、何か言った?」
「なーんでもありませんよーだ。鈍感難聴系主人公の先輩なんて知りませんからっ!」
なんだか、今日はやけにあたりがきつい気がする。
……もしかして。
「後輩ちゃん……」
「なんですか? ついに私に恐れをなしましたか?」
ふふん、と後輩ちゃんはふんぞりかえる。
汗でキャミソールが透けてるけど気にならないのかな。
「今まで寂しかったんだね……」
「ち、違いますよっ! 出番がないせいで先輩と会えなくて寂しかったとか、ぜ、全然そんなこと思ってないんですからね!? ほんとですよっ!?」
「わかったわかった」
「生暖かい眼差しやめてくださいよぅ……」
「で、後輩ちゃん。靴どうするの?」
「……あ」
「運がついたって思えばいいんじゃない?」
「もぅやだぁ〜〜〜」
今日も後輩ちゃんは不憫可愛い。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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