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54.三題噺 ラムネ、同い年、玉突き事故

「よかった。明日は学校に行けそうだ」

 昨日の水遊びでずぶ濡れになり、風邪をひいていた僕は、学校を休んで安静にしていた。

 窓の外はもう夕方だ。

 暑いからすぐ乾くだろうと体を拭かないで帰ったのは悪手だったな。

 スマホを見ると、メッセージが来ていた。

「マカロンくんだ」

 幼馴染で生徒会長のマカロンくんから「大丈夫か?」と一言来ていた。

 素気ないように見えるけど、マカロンくんなりの気遣いが見えて僕は嬉しい。

 返事をしたところで、もう一件のメッセージに気がつき、同時に来客を知らせるチャイムが鳴った。

 妹が家に上げてくれたらしく、そのまま僕の部屋までやってきてノックをした。

「入っていいですよ」

 そこには僕が好意を寄せている先輩と隣の席で同い年の同クラさんがいた。

 さっきのメッセージはこの2人から「お見舞いに行くね」という連絡だった。

 先輩がすぐに僕に近づいてきてビニール袋から何かを取り出した。

 僕はそれを受け取り、頭に疑問符が浮かんだ。

「……なんで全部ラムネなんですか?」

 ガラス瓶の中にビー玉の入ったラムネの飲み物以外にも、ラムネ味のゼリーとかラムネ味のアイスとかたくさんだ。

 先輩はラムネ推しなんだろうか。

「あはは、夏っぽいからいいな〜、って衝動買いしちゃったの」

「なるほど、先輩らしいですね」

「わ、私もフルーツゼリー買ってきたよ……。食べれそう?」

 不安げにそう言う同クラさんは、両手でゼリーとプラスチックのスプーンを持っている。

 ちょうど僕のお腹がくぅと鳴った。

「ありがとう。今食べてもいい?」

「もちろん!」

 同クラさんは嬉しそうにベッドに近づいてくる。

 だけど、足がもつれて「きゃっ」と小さな悲鳴を上げて体制を崩してしまった。

 慌てて先輩が支えようとするも、玉突き事故になり、2人一緒にベッドにいる僕の上へ。

 2人の柔らかな体とか、髪の毛からするいい匂いとかで、意識がくらくらしてきた。

 他に誰もいなくてよかった……。

 そう安堵している時に限って、「お兄ちゃーん」と、ドアがノックされてしまう。

 妹にこんな所を見られたらまずいっ!

 焦りも虚しく妹はドアを開けてニヤニヤ。

「お兄ちゃん、お盛んだねえ」

 盛大に勘違いをされてしまった……。

「違っ……!」

 否定しよう伸ばした僕の手は空振り、「ほどほどにね〜」と残して立ち去ってしまった。

 先輩と同クラさんは微熱のある僕以上に、夕焼けと同じように赤く頬を染めていた。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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