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53.三題噺「決闘、エンジン、風邪」

「6月なのに、これ、もう夏だな」

「梅雨明け早すぎるよね……」

 生徒会役員として部活動の草むしりの手伝いをしていた僕とマカロンくんは、連日の猛暑にうんざりしていた。

「中庭の雑草はあらかた抜き終わって綺麗になったね」

「次はグラウンドだな」

 マカロンくんと一緒にグラウンドへ行くと、先輩と同クラさんがはしゃいでいた。

「何してるんですか?」

「あ、水遊びしてたの」

 僕が聞くと、同クラさんが答えてくれた。

 言われてみれば髪の毛が少し濡れているし、手に水風船を持っている。

 夏服で首元のボタンを外してあるから結構際どいな。

「後輩くん! 私は君に決闘を申し込む!」

 先輩はいつも突拍子もない。

「すみません、先輩。今は草むしりの手伝いしてるので付き合えないです」

 むぅ、と先輩は頬を膨らませて不満を露わにした。

「……もしかして、日和ってる?」

 完璧に断れたから立ち去ろうと思っていたら、同クラさんが先輩を援護した。

「そうだそうだ〜! まったく後輩くんもマカロンくんも臆病だなぁ〜。がっかりだなぁ〜」

 チラチラとわざとらしい視線を僕達に向けて、先輩も同クラさんに乗っかって煽ってきた。

 安い挑発だ。

「マカロンくん……」

「ああ……」

 僕とマカロンくんのエンジンがかかった。
 やる気満々。臨戦体制だ。

「そこまで言うなら覚悟してくださいよ」

「2人ともタオルと着替えは用意してあるんだろうな?」

「おっ、いいねえ!」

 男女に分かれて、戦いは開幕した。

 わーわーと騒ぎながら、草むしりの手伝いも忘れて夢中になった。

「くらえ〜!」

 終盤、先輩が投げた水風船が地面で弾けて虹ができた。

 決着はつかなかった。

 なぜかみんな僕を集中砲火してきて、一番被弾したせいでびしょ濡れだ。

「楽しかったぁ〜」

「ですね〜」

 先輩と同クラさんが満足そうでよかった。

 青春っぽいことができたと、僕もマカロンくんも笑い合った。

 翌日、僕は目覚めて体の気怠さを感じた。

「これ……。風邪ひいたな」



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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