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24.三題噺「円運動、愛想笑い、化けの皮」

「ふわぁ……」

 暖かい朝日を体に受けながら、僕は口を手で押さえながら大きな欠伸を漏らした。

 目尻の涙を指で拭って、下駄箱から靴を取り出そうとする。

「……あれ?」

 中にはシンプルなハートマークのついた一通の手紙が入っていた。

 これ、もしかしなくてもラブレター?

 とりあえず中身を見てみよう。

「おっはよー。後輩くん」

 手紙に指をかけたとき、パシっと僕の背中が叩かれた。

「えっ。先輩!?」

 僕は咄嗟に手紙を両手で隠した。

「何か隠したな〜?」

「い、いえ? なにも隠してなんていませんよ」

 ぎこちない愛想笑いでどうにか誤魔化す。

 けど、先輩はニマニマとお見通しの目をしていた。

「目が泳いでるもんね〜」

 円運動のごとく先輩が僕の周りをくるくると。
 僕も合わせてくるくると。

 2人して回転している。

 先輩は「あ」と言ってピタッと止まった。

「もしかして、ラブなレター???」

「えっ!?」

「あ、後輩くんの化けの皮が剥がれたー。見して見してー!」

「あ、ちょっと! 先輩!」

 くるっと僕の背後に回り込んだ先輩は僕の手から手紙を抜き取った。

 カサカサと音を立てて手紙を開き、目を動かす先輩。

 ラブレターが見られるのは、少し気まずい。

「ん?、これってどういうこと……?」

「え?」

 先輩から渡された手紙を見ると、それは仕事を僕に押し付けてくる怠惰な女教師からだった。

 僕が仕事をする代わりに先輩との仲を応援してくれるよう頼んでいる協力者だ。

 内容を見てみる。

「この前相談してくれた例の件について話がしたい」と書かれている。

 ……これ! ラブレターよりも先輩に見られたらまずいやつ!

 僕は手紙をくしゃくしゃに丸めて近くにあったゴミ箱に捨てた。

「捨ててよかったの?」

「大丈夫です。ただの悪戯ですから!」

「そ、そう?」

 朝から変な汗をかいてしまった……。

 でも昼休みに女教師のところに顔を出しに行こう。

 もうすぐ、先輩の誕生日だから。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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