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コミュニケーションのコツ―自己啓発・組織運営に効く文化人類学入門#8

第4章 コミュニケーションは受け手本位!?(続)

 さて次に、コミュニケーションが効果的に行われるための原則をいくつか確認します。

伝え手は受け手の環境に

 第1に、伝え手と受け手の環境は、類似したものであるほうがコミュニケーションはうまく行きます。

 わかってほしいと思うあまり、伝え手が受け手を、伝え手の世界に引き込もうとしますが、それではうまく行きません。

 伝え手の側から、受け手の環境に近づく努力が必要になります。

 受け手本位です。

 日本語を理解できないアメリカ人に、日本語というコードを採用してコミュニケーションしたら、受け手は伝え手が採用したコードを理解できないため、コミュニケーションは成り立ちません。

 若い人にメッセージを届けようと思ったら、受け手である若い人が理解できるコードを採用しなければなりません。

 アメリカ人には英語で、若者には若者がわかるツールを使ってコミュニケーションする必要があります。

人対人を大切に

 第2に、インパクトのあるコミュニケーションは、人対人の関わりによって行われます。

 人と人が接する中でコミュニケーションした方が効果的です。

 今はSNSの時代です。

 このようなツールがコミュニケーションをどのように補うのかはこれからの課題です。社会は大きく変わって行くかもしれません。

受け手の信頼を勝ち取る

 第3に、伝え手が受け手の信頼を勝ち取っているとき、コミュニケーションは効果的に行われます。

 信頼を得るためには、どうしたらよいでしょうか。

 受け手の側に立って、受け手の環境の中に自分との共通点を見いだすことです。

 メッセージは同じでも、伝え手がだれか、伝え手がどのようなアプローチをするかによって信頼度は変わります。

 コミュニケーションは、受け手が伝え手をどれくらい信頼できるかで決まります。

 受け手に信頼してもらえる伝え手になりたいと思います。

  ヒント 仕事をしたければ、相手からの信頼を得なければ始まらない。

 信頼をいただくためには、組織が信頼に足る組織であることを知ってもらわなければなりません。

 伝え手としての組織が信頼されていなかったら、そもそもコミュニケーションは成り立っていないということです。

 人対人の場合、計算高いと取られたり、うまく立ち回るという印象を与えたりすれば、決定的に信頼を損ないます。

 人対人のコミュニケーションでは、けっこう本質でないところが落とし穴だったりします。これが文化の問題なのです。

 受け手の文化に鈍感なだけで、信頼は失われます。

 敏感であれば、以下の2つのことは気をつけてもよいかもしれません。

 1つはお辞儀の角度。

 「エッ、そんなことが問題になるのですか」。

 社会で活躍しておられる方はしっかり頭を下げます。

 突っ立ったまま「うん。そう」などと、タメ口は使いません。

 「申し訳ございません。よろしくお願い致します」と、もったいないくらい腰を折って挨拶します。

 もちろん社交辞令の部分もあるでしょう。しかし、その人の人柄は出ます。地も出ます。人はそれを感じ取ります。

 2つ目は名刺の交換の仕方です。

 名刺ケースに重ねるように、左手も添えて、腰を折るようにして差し出します。

 これは文化の問題です。コミュニケーションをうまくやりたかったら、文化はどうでもよいことではありません。

 ヒント お辞儀の角度と名刺交換。人柄を感じ取られる。地が出る。

固定観念から飛び出す

 第4に、伝え手が、受け手が伝え手に対して持つ「固定観念」(stereotype)の殼から飛び出すとき、信頼は増加します。

 たとえば大学教授が、教授のイメージの殼を破って、人として学生とつきあうと、コミュニケーションが効果的に行われる可能性が高くなります。

 続く ―次回は、効率的なコミュニケーションのコツ、残りの4つです。

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