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組織立ち上げのメカニズム―自己啓発・組織運営に効く文化人類学入門#11

第6章 組織や団体の立ち上げ文化人類学

 さて、文化人類学の応用編です。

 だれかのリーダーシップによって組織、団体などが立ち上げられるときのことについて考えます。

組織や団体の始まり方

 組織や団体には、いろいろな始まり方があります。草の根から自然発生的にできるケースもあれば、特定の個人が何かを始める場合もあります。
 草の根的発生は、意味・形態論を理解し、意味・形態のミスマッチがないかを見ておけば、それほど大きな問題は発生しません。しかし、特定の個人、たとえばカリスマリーダーが何かを始めるときには、少し様態が変わります。

カリスマリーダーの場合

 カリスマリーダーが運動を始めるのを、Revitalization Movement と言います。

 Revitalization Movement は、ある程度法則に則った、独特の動きをします。

Revitalization Movementのステージ

 第1ステージ 安定状態 ―社会の均衡がとれている状態。

 第2ステージ 個人的ストレスの増加 ―気候の変化、天災、伝染病、戦争、あるグループの社会支配などで社会がバランスを失い、人々がストレスを感じ始める状態です。自己中心的・反社会的な行動が散見されるようになります。

 第3ステージ 文化的歪み ―アルコール症、暴力など、ネガティブな現象が顕著になります。

 第4ステージ 復興運動 ―カリスマリーダーが登場し、新しい動きを始めることを表明します。以下のようなステップを踏んで進みます。

1 コードの規定 ―カリスマリーダーは、新しい青写真、コードを提示します。

2 コードのコミュニケーション ―規定されたコードを周囲に伝え、同調者が起きます。

3 組織化 ―リーダーの周りに同調者が集まり、組織になります。このステップになると速度はスローダウンしますが、組織化がうまく行くと動きは持続します。

4 適応 ―コードの再調整を行います。この段階で、反対者からコードが不適格であるという指摘が出されることもあります。

5 文化の変容 ―規定されたコードが実現し、個人のストレスも解消されます。

6  慣習化 ―沈静化し、いつしか守りに入ります。

 このような段階を踏んで、組織や団体が形成されます。

Revitalization Movementの限界

 さて、このような動きには、ものごとを力強く進めることができる反面、限界もあります。

 第1に、自己肯定するジレンマです。

 このような運動には前提があります。それは、こういった動きは、すばらしいとしなければ進まないというジレンマです。

 かりにうまく行かないことがあっても、自分がやっていることを肯定し続けなければ、維持できません。

 うまく行っていないことは横に置いて、前進しようと号令をかけます。

 そうすると、本当はうまくいっていないにもかかわらず、問題は隠蔽されます。

 また、ナルシシスティックになります。

 Revitalization Movementは、ネガティブな面を修正しにくいという弱点を抱え込んでいます。

差別化したコードと伝統

 第2に、このような動きは、他との違いを差別化しなければ運動になりません。他と同じでよいならば、運動を展開する必要はそもそもありません。

 差別化して可視化した違いは、動きがあるときには強烈なコードになります。ところが、次の世代になると、それはただの伝統になります。

 伝統は、ものごとを推進させるエネルギーにはなりません。

 このように、カリスマリーダーが強いリーダーシップをもって何かを立ち上げるやり方は、最初から限界を内包している方法だということを知っておく必要があります。

 特定の個人が新しい動きを始めるときには、このような文化人類学的発想を知っておくと助けになります。

 続く ―次回も、文化人類学の応用編です。


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