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早稲田こどもフィールドサイエンス教室課外授業 in 隠岐


今回ご参加くださった早稲田こどもフィールドサイエンス教室の皆さん。
2日目の朝、海士町の風呂屋海岸でゴミ拾いをした後に。

 早稲田こどもフィールドサイエンス教室が9月23日(金)から9月25日(日)にかけて行った2泊3日の「フィールドサイエンス教室課外授業 in 隠岐」。隠岐ジオパーク推進機構は株式会社島ファクトリー、そしてNPO法人隠岐しぜんむらと共同でプログラム作成から当日の運営までを行いました。

本プログラムにおいて機構が目指したこと
①子供達が自らの興味を探求するための学びの場所を作ること
 隠岐には多くの生きものが住んでいますが私達が目的にしたのは「生き物の名前を沢山教えること」ではありません。隠岐というフィールドを五感で目一杯感じながら「なんで?」を引き出す。「なんでこんな羽の形なの?」という問いに私達は答えをぐっとこらえ、「なんでだと思う?」と聞き返します。たった一匹の生き物から広がる探求の可能性を感じてもらうことこそ、私達が目標とした機会づくりです。

②普段の生活では体験できない環境の中で子供達が新たなまなざしを発見すること
 都心部とは全く違う生活環境に身を置くことは子供達にとって「違い」「同じ」を学ぶきっかけにもなります。ずっと同じ場所にいるのでは獲得できなかった新たなまなざしはこれからの学びに有意義なものとなるでしょう。そして机の上で社会問題を学ぶのではなく、実践から新たなまなざしを獲得することも大事にしました。本当に漂着ゴミに絡まったウミガメが流されてきたこの離島で、カメのダンボール甲羅を背負いながらウミガメの気持ちになってみる。課外授業 in 隠岐だからこそ出来る授業です。

③子供達同士が交流する中でお互いの興味関心を知りながら楽しく学ぶこと
 皆で探求する時間もポイントの一つ。グループワークや全員でのアクティビティを通して子供同士のコミュニケーション・対話を促しました。また「島宿」と呼ばれる、海士町の民宿3つに分かれて宿泊したことも自然と仲良くなるきっかけに。15人という限られた人数だからこそお互いに助け合い、年長さんから小学4年生までお互いに刺激しあいながら、そしてそれぞれのペースでも出来るようにスタッフが寄り添います。

④隠岐から自分の住んでいる地域そして地球にまで疑問を広げること 
 隠岐で起こっている出来事は隠岐の中で完結することではありません。ジオパークに関わる問題の多くは他の地域でも同じように観察できることです。このプログラムが終わっても隠岐で感じたことを自分の住んでいる地域そして地球という大きさで考えを広げる、繋げていってほしいというメッセージも込められたプログラム設計になっています。

【早稲田こどもフィールドサイエンス教室について】 
 早稲田こどもフィールドサイエンス教室は「自然の不思議さを実感できる感性」を育むことを目的として年長から小学5年生までの子供達に開かれているフィールドワーク型の理科教室です。教室で図鑑を眺めるのではなく、実際の大自然の中で五感を使いながら自然を体感します。その中で生まれてくる「なぜ?」「どうして?」を考え、自力で解決できる力を大切にしている教室です。
(詳細についてはコチラから↓)

 早稲田こどもフィールドサイエンス教室では普段、関東近郊をフィールドに置いて野外活動を行っています。しかし今回は課外授業です。参加した子供達と保護者の方々は羽田空港に集合し、そこから隠岐まで足を運んでくれました。世界ユネスコジオパークにも登録されている隠岐諸島島前地域には都会にはない、豊かで壮大な自然が多く残っています。その大自然に実際に足を運びながらSDGsや環境問題を楽しく学ぶことを目的に体感型のアクティビティを多く取り入れました。合わせて32名の方々にご参加頂き、とても賑やかな課外授業になりました。


9月23日(金) 1日目
集合
フェリーくにがにて七類港から知夫里島来居港に到着。現地スタッフが港にて出迎え、一日目の流れを説明します。その後はホテル知夫の里にバスで向かい、家族単位で分かれてお昼ごはんを食べました。

サザエご飯や新鮮なお刺身など隠岐の地産料理が存分に味わえるホテル知夫の里。
参加者からも「美味しい!」という声が上がっていました。

その後バスにて知夫村の観光名所である赤ハゲ山、そして赤壁に向かいます。山頂に登るにつれほとんど霧に覆われていた道中、いきなり現れた牛たちに子供達は興味津々でした。

牛が子供達を乗せたバスを通せんぼしています。
島前地域では見慣れた光景です。

アクティビティ①【ジオの島オリエンテーリング 1部@赤ハゲ山】

 子供達はほぼ初対面の状態。これから2泊3日を共に過ごす仲間となるためにアイスブレイクの時間を取ります。年齢によって分けられた二つのチームに分かれて輪になり、自己紹介ゲーム。
「次は喋っちゃだめなゲーム!喋らずに年齢順に並んでみよう!」
最初は少し恥ずかしがっているような子達も、そんな声掛けがあると一斉に動き出しました。

初めての記念撮影。濃霧で後ろに広がるはずの絶景が全く見えません。
小学校3-4年生の大きい子チームと未就学児ー小学校2年生の小さい子チームに分かれてアイスブレイクのゲームを行います。
こちらは小さい子チームの様子。

赤壁見学
1日目は曇り時々雨の天気でいつも壮大な景色が広がる赤ハゲ山・赤壁も多くは霧で覆われていました。しかし霧が薄くなり半島が顔を出す瞬間もあり、参加者からは「見えた!」と声があがっていました。

赤ハゲ山にてうっすらと半島が見えている様子。
次は赤壁での一枚。親子仲良く並び写真撮影です。

アクティビティ②【ジオの島オリエンテーリング2部@長尾海水浴場】

 仲間の紹介が終わった後は、これから2泊3日を過ごす隠岐という地域がどんな場所なのかを知る時間を過ごします。長尾海水浴場から観察できる地形から隠岐が溶岩で出来た火山島であることを学びます。その後は磯に生息する生き物を「見る」「触れる」「知る」をテーマに観察します。子供達は実際に海に入りながら岩や水辺にいる生き物に夢中になり、あっという間に時間が経っていきました。

「見る」「触れる」「知る」五感を活用します。
「見て!○○がいたよ!」と次々に生き物を見つける子供達。
岩場にひっそり潜んでいることも。

その後は海士町の島宿である但馬屋、なかむら旅館そして和泉荘の3つにそれぞれ分かれて宿泊するために移動して一日目が終了です。内航船に初めて乗る子達も多く、水しぶきをあげながらスピードを出して進む様子に興味津々でした。

9月24日(土) 2日目

アクティビティ③【漂着ゴミ探検隊@風呂屋海岸】

・海を深く知る~海とわたしのつながり~ 
 2日目の朝は海岸清掃から始まります。時にはロシア語や韓国語で書かれた容器、注射器、大量のペットボトルなど総勢30名を超える人数で拾っても拾いきれないほどの漂着ゴミが日々海岸には流れ着いています。これらと私達の今の生活にどんな関係があるのか、みんなで考えます。

1人ずつゴミ袋を持っても「次のゴミ袋ください!」という声多数。
1日目とは違い晴天模様で気温も上昇。日差しが強い中でのゴミ拾いでした。
子供達には大きすぎるゴミもありましたが、力を合わせて運んでくれました。

・きれいな海?海をよく観察しよう
 拾ったゴミの中で「なんだろう?」と不思議に思ったゴミを各自発表しながら、一見きれいに見える海にはどんなゴミが浮かんでいるのか考えます。講師を務めたNPO法人隠岐しぜんむらの福田貴之さんが持ち出したのはプラスチックのボールと小さな木材。「どっちが長く海に浮かぶと思う?」という質問に子供達は「プラスチックの方が長い!」「木はいつかなくなるんだよ!」と口々に手を挙げます。

お父さんお母さん方も興味深く話に聞き入ります。
プラスチック黒ボールと立方体の木の破片を比べて見せる講師の福田さん。

・マイクロプラスチックと私たちの食べる魚
 次に出てきたのは朝から綺麗にした海岸の砂が入ったトレーとピンセット。自然の海藻や木くずは取らず、人工で出来た欠片だけをとって砂をきれいにしていきます。更に出てきたのは水が入った水槽。どんな実験が始まるんだとワクワクした表情の子供達。
 福田さんは「じゃあさっき綺麗にした砂を水の中に入れてみよう!」と全体に声をかけます。すると取り切れなかったマイクロプラスチックが次々に上澄みに。「これを間違って食べてしまうお魚はどうなるだろう?」という問いを子供達に与え、全世界で起きているマイクロプラスチックの海洋生態系への影響を考えます。

トレーにある砂から自然物以外をピンセットで取り出します。
3~4人のチームになって協力して実験を行います。
大きい子チームが小さい子チームに教えている姿が印象的でした。
「海で暮らす生き物が海洋ゴミを食べたらどうなるだろう?」
福田さんの話は続きます。

・ウミガメの気持ちになってみる
 絵本「リブと海」は隠岐の島に流れ着いて保護されたウミガメの実話を基にしています。どんなお話なのか子供達が交代で読み聞かせをし、絵本「リブと海」を題材にウミガメ体験をします。段ボールで作ったウミガメセットで仮装し、漂着ゴミを模した漁網を絡み付けられると全然取れない...! 一匹だけ脱出に成功しましたがその他のカメさんは諦めることに。実際に体験をすることでその困難さが分かったようでした。

「もうちょっと右に腕を回して!」「分かってるけど出来ないよ!」
カメさんと口々に言い合います。
リタイアするカメさん続出。人間とは骨格や仕組みが違うカメさんの身体は難しい。
絵本「海とリブ」の読み聞かせ。
子供達が順番で読んでいきます。

午前中のアクティビティを終えた後は海士町のご飯屋さんであるきくらげちゃかぽんさんのお弁当で一休み。ご飯が終わったらすぐ海で遊ぶ元気いっぱいな子供達。
その後、海の駅松島がある豊田港に移動します。

お昼ごはんを食べ終えると
すぐさまマリンシューズに履き替えて海に入る子供達。

アクティビティ④【陸と海のつながりフードハンティング@海の駅松島・豊田港】

・食べるを知る:自然~口にする食べ物、自分の身体とのつながり
松島に到着すると中学年チームと低学年・未就学児チームに分かれ、行動します。中学年チームは先に竹竿で釣り具を作り、岩場に隠れる魚をターゲットに魚釣りを行いました。低学年・未就学児チームはその間にしいしびづくり体験で、イカの一夜干しを作ります。2チームが交代で入れ替わりながら普段食べているものを実際に釣り、調理する体験を通してその繋がりを体感しました。

・しいしびづくり体験:捌く、干す
しいしびとはイカの一夜干しのことです。島のおばちゃんおじちゃんに教えてもらいながらイカを捌いていきます。少し怖がる子供もいましたが、慣れない包丁さばきながらも器用に一人一匹捌くことが出来ました。

お手本のやり方を興味深く見つめます。
小さい子チーム。丁寧に開いたイカを洗っています。
一夜干しには欠かせない回転乾燥機。
「なにこれー!」新鮮な感想が続出。

・魚釣り体験:竹竿の釣り具、魚を釣る
今回挑戦したのはボッカ釣りと呼ばれ、岩場に隠れているカサゴを狙います。想定よりも多く釣れたカサゴは夜のBBQの材料となりました。「釣れたー!」という声があちこちから聞こえ、終了時間になっても岩場でじっと魚を待つ子供達でした。

岩場で行う体験のため危険が伴います。
講師福田さんから「気を付けること」を事前に伝えられます。
お父さんと協力して大きいカサゴが釣れました。
「ここらへんにいないかな?」と覗き込む様子。

その後はなかむら旅館に移動してBBQ。昼間に釣った魚や子供達が捌いたイカも並び、自然から頂いた恵みを実感できたのではないでしょうか。また宿の女将さんやスタッフとの出会い、また同じ宿に泊まったことで子供達が自然と交流しぐっと仲良くなったことも伝わってくる賑やかなBBQとなり、今回の課外授業の魅力の一つでした。

9月25日(日) 3日目

アクティビティ⑤【あまんぼうで海中探検】

 最終日は海中展望船あまんぼうに乗って海の中を観察します。観光名所である三郎岩付近まで到着すると展望室に下り、陸とは違う海の世界を観察します。「昨日食べたお魚みえるかな?」「クロダイがいる!クラゲだー!」。大興奮の子供達は窓に張り付いて眺めていました。あまんぼうガイドのお話を聞きながら、今まで見てきた浜辺、磯そして海の繋がりを感じる時間です。

この日は比較的波は穏やかで揺れも少ない海中展望船でした。
ずっと窓に張り付いて海の中の世界に夢中でした。
Entôや港の方面に手を振る様子。
同じ船でも内航船とはまた違った魅力があったようです。

アクティビティ⑥【振り返り 自分のこと】

 最後はEntôジオラウンジにてこの三日間を振り返りを行いました。一枚の白い紙に自分の感じたこと、印象に残ったこと、今までの出来事を思い出しながら文字や絵でそれぞれの気持ちを表現しました。

出来上がったら保護者の前で発表会です。
保護者の皆さんも2泊3日の感想を述べてくださいました。

発表が終わった後はチャーター船で西ノ島町へ。磯四季さんでえりやき定食を食べた後、1時間ほどの自由時間ではお土産を買ったりそれぞれの時間を過ごしました。

最後の集合写真。船に乗るまでスタッフとお別れの挨拶をしたり、写真を撮ったり。
すっかり打ち解けた様子でした。
乗船後も窓から手を振ってくれていました。
スタッフは見えなくなるまで船を見送ります。

解散

超高速船レインボーが到着するといよいよお別れの時。2泊3日共に過ごした運営スタッフからの挨拶を受け、無事に課外授業は終了しました。ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。またいつでも隠岐へいらしてください!