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雅歌-シュラムの乙女の恋の歌-

日の出とともに目覚めたらまず私は神に祈りを捧げます。

その後着替えながら私は自分の豊かな胸に手を置いて、想い人の彼へ私の思いが届くようにと祈るのです。

どうか今すぐにでも私をあなたが家族にして下さいますようにと。

若き王ソロモンは私に対し恋心を歌にして下さいます。

身分の違う私を若き王ソロモンは褒めちぎって下さいます。

私の美貌を私の香りを、私の身に付けているもの全て一つ一つを彼は褒めちぎって下さいます。

しかし私は彼を受け入れることができないのです。

若き王ソロモンは私をこんなにも好いてくれているのだとわかっているのに。

私は羊飼いの彼が大好きです、愛おしいのです。

彼は若き王ソロモンとは180度違う人間です。

彼からは甘い香りがするわけでもなく、むしろ動物たちと野原の香りがします。

彼の指先に金の指輪がいくつも飾り付けられているわけでもなく、洋服は常にいつも同じものを着ています。

他の羊飼いと共に常に優しく動物に語りかける姿は私の心をとても幸せにします。

私の周りの人間は1人残らず若き王ソロモンと結ばれるべきだと言います。

私は田舎出身で都会で1人きりの生活です。王と結ばれるだなんてまるで夢物語のようです。

けれど私にはそれが全く希望に思えません。金銭的に名声的にも豊かな生活より、羊飼いの彼と共に穏やかに生活をしたいのです。

若き王ソロモンはきっと私を花嫁にいたしても、きっと側妻を作るでしょう。それに対して彼は私だけを生涯愛し続けるでしょう。勿論私も彼だけを生涯愛し続けます。

何より、私の今の若さも永遠ではありません。私も年齢を重ねるのです。

外見の美しさだけで選ばれたらその美しさがなくなった途端に捨てられることでしょう。

私はただ彼と共にたおやかに年齢を重ねたいのです。

恋愛も結婚も一筋縄でいきません。

私の思う人がまた私を思ってくれる、ただそれだけでいいのに。どうして複雑に絡み合ってしまうのか。

何故に人間は恋愛という感情に振り回されるのでしょう。

神様、私の恋心が正しいと周りの人達が認て下さいますように。私の想いが永遠でありますように。どうぞ私が本当に愛する人と結ばれて共に生活が出来るようにお導きください。

彼の柔らかなくせっ毛、日焼けした肌、たくましい手足、羊一頭路頭に迷わさない優しさと賢さ、大きな手のひらの温もり、太陽みたいな香り。

初めて会ったその日から、孤独な私にそっと寄り添い続けてくれたのは、羊飼いの彼なのです。

若き王ソロモンが彼に手をかける事がありませんように。

若き王ソロモンが自分だけの気持ちで私を花嫁としてしまわないように。

どうか彼と私がそれ等の前に神様の前で結ばれますように。

私の彼を思う気持ちが歌声となり、彼の耳に心地よく入りますように。
彼からの返事の歌が私の耳へと早く届くようにと祈ります。

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旧約聖書 雅歌1~8章を元にしております。

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