「相変わらず誰も人が居ないね」

一人旅で撮った写真の数々。
それを見た友人がぼそりと呟いた。

一人で、自撮りをしないのでそれもそうだろう。でも、次の瞬間。
「あ、居た」
「え？居た？」
首を傾げ覗き込めば、海と、人の後ろ姿が写っていた。

その写真を撮ったのは茨城旅行の終盤。
バスが遅れ、大洗磯前神社に五十分遅れの到着になった。

予定は崩れ待ちぼうけに草臥れて。
さてどうしようと岩礁に立つ鳥居を見る。

その内、目の前で夫婦らしき二人が海を背に互いを撮り始めた。
歳は六十位だろうか。

「良かったら撮りますよ」

気ままな一人旅の途中、出会った人の記念撮影を手伝うのが好きだ。
声を掛けて断られたことは無い。
この日もカメラを借りて写真を撮り、少し話をする。

「時間が出来たから、行ったことが無い場所に二人で行こうと思って」
「大洗は私が来たいって言ったの」


この後は那珂湊に、明日は宮城へ。

そう聞き別れた後、睦ぶ二人の後ろ姿を
『楽しい旅になるように』とカメラに収めた。