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リリカル・スペリオリティ! #14「君は友達」

※前回までのお話はこちら


第14話 君は友達

「はー、今日も一日乗り切ったね!」
 園子はあくびをしながら、自分の席で伸びをした。
 放課後の教室。リリカや園子など、部活に入っていない生徒は少なく、教室に残っている生徒は数人しかいなかった。
「そろそろ帰ろっか。リリカ、今日は図書館で宿題やっていく?」
「うーん、今日はいいかな」
 今日は「あくまちゃん」の新作グッズが発売される日なので、リリカは早めに帰りたかった。
「オッケー!じゃ、私も帰ろっと」
 園子がスクールバッグを肩にかけ、廊下に向かった。リリカも「あくまちゃん」の白いリュックを背負うと、後を追った。
「渡辺さん、佐藤さん、また明日ね」
 教室を出る時、今井桜に声をかけられた。
 今井桜は、今日の英語の授業で出された宿題をしている。
「バイバーイ!」
「今井さん、バイバイ。また明日ね」
 今井桜はにっこり笑うと、再び宿題に取り組み始めた。

「佐々木、教室に戻って来た時、なんかスッキリした顔になっててよかったよね。落ち込んで戻ってくるんじゃないかと思って、心配だったよー」
 教室を出て玄関口に向かう途中、園子が思い出したように言った。
「昼休みに田中先生に連れて行かれた時は心配だったけど、佐々木、5時間目の現代文の授業は普通に受けてたよね」
 リリカは特に心配ではなかったが、心配だったことにしておいた。どのみち、「実験」の効果は今日には切れるはずだ。佐々木がこれ以上問題行動を起こすこともないだろう。

「そういえば、今日の現代文のじゅぎょ…」
 園子の体がぐらりと傾いた。すんでのところで廊下の壁に手をついたが、呼吸が酷く乱れている。
「ちょっと、園子!?大丈夫!?」
 園子の額からは、汗が次から次へと流れている。園子は座り込んでしまった。
 しゃがんで園子の様子を伺うと、すごく顔色が悪い。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう。こういう時、どうしたらいいんだ!?
「佐藤さん?」
 リリカが焦っていると、後ろから声が掛かった。
 美術科の鈴木先生だ。
「あの、園子、えっと、渡辺さんが、急に座り込んでしまって、苦しそうなんです」
 自分でもしどろもどろになっていることがわかった。とにかく、園子を助けて欲しかった。
 鈴木先生は園子のそばで屈むと、「渡辺さん、目を閉じて、ゆっくり呼吸して。無理して立たなくていいからね」と声をかけた。
 園子は鈴木先生の言葉通り目を閉じた。そして、ゆっくり息を吸い、吐いた。

 しばらくすると、園子の呼吸が落ち着いてきた。園子が目を開け、リリカと鈴木先生を交互に見た。
「リリカ、心配させちゃってごめんね。なんか、急に目の前が真っ暗になっちゃって」
「ううん。でも、すごくびっくりした。私も、何もしてあげられなくてごめんね」
 心底、鈴木先生が通り掛かってよかった、と思う。
 園子はまだ青白い顔をしているが、さっきよりも頬に赤みが差している。
「だいぶ落ち着きました。鈴木先生、ありがとうございます」
 鈴木先生は「それはよかった」と言って笑った。
「でも、念のため保健室で休んだ方がいいと思う。渡辺さん、立てる?」
「はい、大丈夫です」
 鈴木先生が立ち上がると、座っている園子に手を差し出し、園子は手を借りるようにして立った。
 …きっと私のせいなのに、何も出来なかった。
 リリカは両手を強く握りこみ、その場に立ち尽くしていた。
 歩き始めていた鈴木先生が、くるっと振り返った。
「佐藤さんも保健室に来てくれる?きっとその方が、渡辺さんも安心すると思うから」
「…はい」
 鈴木先生はにっこり笑うと、園子を支えながら歩き始めた。

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