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国家が衰退する時、政府権力は拡大している

 「失われた30年」を経験した日本に対して「日本は発展途上国になる」「日本は衰退途上国だ」という指摘をする人は増加しています。

海外の金融エコノミストやトレーダーの中には日本の長期停滞を解消するために提言をしていた人もいましたが、それは無視されるか、実践しても効果がなかったので大きな変化のないまま、日本は今日に至るまでの停滞を続けてきました。

 今ではこの経済の長期停滞を「日本化」という言葉で表現するほど、世界から見た日本は長く経済成長を忘れた国として見られています。

日本は世界から見ても、国際人から見ても衰退しています。なぜなら経済成長を忘れ、国民の平均年収は変わっていないからです。

国民の社会保障などにおける負担も増加しています。日本国民は衰退の中で実感のないまま苦しんでいるのです。今回は「衰退」の要因について考えていきたいと思います。

・今の日本と同じ財政状況-準戦時体制

 大日本帝国が亡んだ理由は戦争で連合国に敗北したことが理由です。敗戦した時の日本国民は「欲しがりません、勝つまでは」というスローガンなどにも見られるように、非常に苦しい生活状況にありました。

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その理由は膨大な軍事費を賄うための「増税」と貨幣供給量の増加による「インフレ」が原因です。

 戦争を継続するために物資を戦地に送り、軍事費は戦争を継続している間はどんどん増加、そして物資と軍事費の財源を国債で賄い、日銀に国債を買わせて、さらに増税も行うという横暴が戦中の悲惨な国民生活の要因でした。あげくそこまで国家のために国民が我慢したのに敗戦するのです。

 この永遠に増税と物資の統制などによる統制経済の基礎を作ったのが馬場鍈一氏です。

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馬場鍈一

彼が財務大臣になってこの構図を作り、この構図は準戦時体制と呼ばれました。日本が戦争に向かう財務状況とそれに伴う苦しい国民生活を招いたのはこの馬場財政が要因です。

 この馬場財政の特徴は果てしない財政出動(予算拡大)と日銀・国民への負担の押しつけです。そして政府権力を拡大して国民生活・市場に介入をしまくることです。これは今にも似たようなことが言えます。

 日本の一般予算は「福祉元年」と呼ばれる1973年からずっと増加しています。補正予算を組む回数も段々と増えました。

財政問題に関連して増税議論がされ、消費税は平成の間で3%から10%まで上がりました。他にも環境保護の名目で森林保護税といったよくわからない税金、レジ袋は有料化しました。

※日本の財政拡大については下の記事に細かく記載しています。

 かつての軍事費は今では社会保障費です。インフレにはなってないと思うかもしれませんが、日銀の異次元の金融緩和から約10年、コロナ対策や経済対策として巨額の財政出動が起き、今現在物価は徐々にですが上がっているという指摘も出てきています。

日本はいつか来た道をまた軍事と関係なく歩んでいるのです。今の日本はデフレと戦うという名目で準戦時体制に突入していると言えます。

・衰退の理由は制度にある

 「国家はなぜ衰退するのか」という本を書いたダロン・アセモグルとジェイムズ・A・ロビンソンは国家が衰退する理由を「収奪的制度」(下巻の203-204に記載)だと指摘しています。

大多数の国民の財産を収奪する制度を権力者が作り、私腹を肥やしているから貧しい国は貧しいままだというのです。

日本が「失われた30年」、貧しい国でい続けたのはこの収奪的制度を権力者が作り上げていたからではないでしょうか。

 ここで勘違いしてはいけないのは、これは「反資本主義=富裕層が悪い」ではないということです。政府権力を利用して豊かになった企業が悪いということです。ようするに政治と一部企業の癒着(縁故資本主義)です。

 今回のコロナ対策としての補助金を見ればわかりやすい気がします。日本政府はコロナによる医療体制に逼迫を防ぐために巨額なお金を用意して医療業界に投じました。

ですが、未だに医療逼迫の声はなくなりません。この補助金を受け取っているけれどもコロナ診療をしない、または不正な補助金受給を行っているという話は出てきています。

このような事例が30年間続いてきたからこそ、日本は衰退しているのです。

・政府権力の拡大と衰退の関係性

 題名にもありますように、政府権力の拡大は国家の衰退の理由です。

政府権力の拡大とは何かと言いますと、個人の財産を税金として搾取することや企業に補助金を投入して支援することです。

政府は立法・行政・司法・軍事など国民の生活に影響を与える権力を持っています。これが暴走するのはとても危険なことです。ですから、政府には誠実であることが求められます。

先ほどの医療業界と政府の関係性の例のように、国民全体から税金として集めたお金を医療業界に投じるのであれば、効果について報告する必要があります。

国民の財産を政府は権力を利用して税金として納めさせます。税金を納めないと、国税庁から督促状が届いて脅迫を受けるかのように(言い過ぎかもw)、納税をさせられます。

政府権力はこのように個人の生活・財産・自由を簡単に侵害できるのです。

 そしてこの政府権力が拡大を続けると、国民は多くの税金を取られ、予算が配分される業界は何の努力もせずに儲かり、国民と国家は衰退し、一部の人たちだけが豊かになるという状況が生まれます。

政府権力の拡大は社会にとっていいことがないのです。

・政府を監視することと政府が誠実であること

 今の日本は衰退しています。社会保障費ということで個人の財産は税金として搾取され、その税金がどこに消えているかは報じられないのが現状です。

政府は税金を利用しているということの重大さを理解して、国民に対して誠実でなければいけません。

会計検査院は毎年政府の支出の無駄を指摘していますけど、日本の一般予算は全然減少する気配がありません。やはり、政府が国民に誠実であることは難しいのでしょう。

 ですから、国民や民間機関が政府を監視して指摘し、問題化させていかなければいけないのです。自分の財産を守るためには自分で準備をしなければならないのです。

準戦時体制の日本においても「内心嫌だったけど、、、我慢してた」という話があったりしますが、自己主張せずにただどうにかなるのを待ってるだけだったら、何も変わりません。行動あるのみです。

・皆が豊かになるために

 現在、財政支出が足りないという主張(MMTやリフレ派)や健全財政だから増税しかないという主張(財務省や自民党)が平然とあります。両方共、準戦時体制と同じ議論です。

挙句の果てには首相が「政府が分配して賃金上げる」という日本全部国営企業的な話をし始めました。立派な統制経済です。全てが衰退への道です。国民の財産を収奪する制度の中の議論です。

 日本が衰退しないためには日本に住む一人一人の財産が自由であることが重要です。ですから、政府権力の拡大には警鐘を鳴らして戦い、自分の財産を守り、個々人が豊かな繁栄した国家になる努力が必要なのです。

・参考にした本と興味のある人向けのBook Guide

1.『国家はなぜ衰退するのか(上・下)』ダロン・アセモグル/ジェイムズ・A・ロビンソン(共著)/鬼澤忍(訳)

2.『なぜ国家は衰亡するのか』中西輝政(著)

3.『検証 財務省の近現代史』倉山満(著)

4.『福祉国家亡国論』山本勝市(著)

5.『隷従への道』F・A・ハイエク(著)/西山千秋(訳)


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