フーヴァーとルーズベルトから類推するトランプとバイデン

 今年の11月にアメリカ大統領選挙が控える中、トランプ大統領の政治的基盤が揺らいでいる。「リアル・クリアー・ポリティクス」が7月29日に行った世論調査によるとトランプ大統領の支持率は42.1%とかなり厳しい数字となっている。またブルームバーグの記事によるとトランプ大統領が誇示する経済面での優位性もかなり失われてきているという。トランプ大統領が劣勢に立たされているのはいわずもがな新型コロナウイルスの影響である。

 自らの政権の成果を主に経済面で強調してきたトランプ大統領にとって新型コロナウイルスがもたらした経済的打撃は致命的だった。当然何の対策も講じていないわけではなく戦後稀に見る大規模な経済対策を行ったが国民の支持には直結していないようであり、経済を重視するあまり感染症対策がおざなりになっているのも支持率低下の要因だろう。

このような状況からトランプ大統領の敗色は濃くなってきており、トランプ大統領を高く評価する私としては選挙が迫る中、自然災害?に直面してしまった彼の不運さを嘆くばかりである。

 当然トランプ大統領が敗北すると決まったわけではない。バイデン陣営に何らかの不祥事やバイデン氏自身の健康状態などに問題があればそれを突いて巻き返すことは可能だろう。

 新型コロナウイルスによって経済が悪化し、政権が共和党から民主党へ移行する可能性が高まっているこの状況は1933年に共和党のハーバート・フーヴァーから民主党のフランクリン・ルーズベルトに政権交代した歴史を彷彿とさせる。

 1929年に大統領に就任したフーヴァーは就任直後に大恐慌に直面してしまった。市場は任せておけばよいというアダムスミスから始まる古典派経済学の姿勢をフーヴァーは貫いていたため国家主導で上手く経済対策を行えず、4年後ルーズベルトに歴史的大敗を喫した。

 しかし彼は政界を引退した後も大統領のトルーマンやアイゼンハワーから委員会の議長に抜擢されるなど非常に高い評価を得ており、優秀な人物であったことは確かなようだ。

 恐慌と新型コロナウイルスは経済的打撃を与え、国民を困窮させることで政治基盤を不安定にするという点で同じ現象といえ、正にトランプ大統領は恐慌で窮地に立たされたフーヴァー元大統領と同じ境遇であるといえる。

 唯一異なるのがフーヴァーは当選後恐慌に当たったがトランプ大統領は再選を左右する中間選挙の年にコロナウイルスに直面しているという時期が少し異なり、トランプ大統領のほうが死活問題だ。このように歴史は繰り返すというが現在進行形で起こっている現実が歴史的事実と重なって見えるということは多々ある。だからこそ未来を推測し歴史と同じ道を歩むことを回避することもでき、これが歴史を学ぶことの意義を担保している。

トランプ大統領とフーヴァー元大統領の境遇が似ているという指摘は友人のオカソからいわれ初めて気づいたが、私にとっては歴史の重要性を再認識させられる一幕であり、学習意欲を湧き立たせた。そして文章を通してこの意欲を新型コロナウイルスのように強い感染力で伝染させられないかと思いこの文章を書かせてもらった次第だ。人間が日々積み上げている現実を個人がどのように見たらいいかの指針になったら幸いだ。



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