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花でなくとも、ゐとオシイ
重ったるい空気が体の表面を撫で、肺にぬるりと入り込む。
太陽に焼けたアスファルトは夜に取り残されて、てんで爽やかとは掛け離れた焦げ付く匂いを薄明かりに持ち越すのだ。
道路脇に咲く百日紅は暑さに負けて、紅い花はすっかり醜く灰色に項垂れていた。
心がこうも靄に掛かったように燻るのは、如何したものか。
情景が蘇るのだ。生ぬるい風に当てられた昔むかしのことを。
当時私はまだ高校生で。
そして彼女もま
ショート・ネコ・ショート
令和六十一年。日本では何度目かのペットブームが人知れず去り、春の終わりに盛るネコたちの押し付け合いが横行していた。
古く遡れば、人の子も同じ憂き目にあっては『間引き』のように捨てられることもしばしばあったそうだが、最早人間より機械で溢れた現代社会では、いっその事その頃の子らが降って来れば良いのにと政治家が冗談を言う程である。
しかし、そんな戯言さえアッという間に水に流されてしまう。
なぜなら世界