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好きなものを好きと言えること(後編)

✳︎前編はこちら
https://note.mu/okariday/n/na279c469d132
✳︎以下、ゆずドームツアーのネタバレを含みます

私たちの席はスタンドの上階で、思っていたよりもぎゅうぎゅう詰めだった。右にも左にもみっちりと人が居て、焦る。そうか、ライブはトイレにも立てないものなのか…!

とりあえず開演前に2回トイレへ行き、最善を尽くす。買っておいた自由帳を取り出し、めいろやゆずを描いてもらって時間を稼ぐ。その間も、ドーム内にはゆずの音楽がかかっていて、息子はご機嫌。3分に一回、私の方を見て聞いてくる。「ねえゆずきた?」

そんな地味な登場しねえよ!と思うが、「来るときはね、どーんって音が大きくなったり、暗くなったりするからわかるよ」とにこやかに繰り返し対応する。

隣に座る若い女性が、どうやら息子を嫌がっているので、足をバタバタしたりしないか細心の注意を払う。元々、反対側が1席あいていたようで、しばらくすると1つ向こうに移動していった。それを見て、ちょっと落ち込む。

そりゃそうだ。大好きなライブに集中するのに、見ず知らずの子どもの隣はきつい。申し訳ない。やはり、4歳にライブは周りに迷惑なんだろうか…無事に2時間半乗り切れるだろうか…気弱になっていく。

▷▷▷

開演時間になり、おもむろにラジオ体操第一が流れる。ゆずのライブでは恒例らしい。
「このこえはゆずのこえなの…?」完全なるおじさん声に戸惑いながら、息子は小さな手足で一緒懸命に体操の真似をする。真顔なのが可笑しい。まあ、いけるとこまで頑張って、無理なら今日は帰ろう。そう心を落ち着ける。

そこからは怒涛だった。
ゆずの2人が、華麗に登場する。遠い席でもちゃんと見える!場内に、美しく伸びやかな声が響き渡る。幻想的な演出効果もあり、実に神々しい。

「ゆずだよ、ゆず見えるね?歌上手だね?」興奮して至近距離で問いかける母親をよそに、息子は素晴らしい笑顔のまま、目も口も見開き硬直している。

その後、拍手をしたり、タンバリンを振ったり、見よう見まねで声援を送る。ああ、ライブの動画撮影禁止だとしても、息子の動画は撮らせてもらえないだろうか…そう思いながら肉眼に焼き付ける。

が。
開始20分後、あっけなく飽きる。
「まま、もうかえりたい」
…!
「おとがうるさい」
…!!!
「もうねる。つぎのうたになったらおこして」
…(白目)

4歳はね、所詮4歳。これはやっぱり何に付き添うにしても、肝に銘じておくべきだ。子どもは子ども。大人の思うようにはいかない。ハレの日だって、いつも通りにすぐ飽きる。

とりあえず膝枕して、好きな歌は起きたり、光の演出に見入ったり、だましだまし過ごす。私が生歌の美しさに魅了されていたから、正直まだ帰りたくない。

それでも周りの邪魔にならないよう、1時間くらいしたらキリよく帰ろうと腹を決める。グズグズモードで泣いてしまう前に。

「マボロシ」という歌が始まり、会場が青い光に包まれる。私は息子を膝に乗せたまま、噛みしめるように聴く。CDで聴くよりも、ずっと胸に響く声だ。ライブって、心地良いものなんだ。知らなかった。ああ、でもそろそろ1時間…

そこからが、さすがゆずだった。
息子の限界が来る前に、演劇コーナーが始まり、可愛い車に乗ってのメドレーがはじまり、瞳に輝きが戻る。指をさし、けたけたと笑う。

ゆずって、あんなに歌が上手くて、名曲をたくさん生み出して、それだけで充分すぎるのに、気さくなエンターテイナーなのである。

だから会場の空気もフラットで、若い人やカップルだけでなく、母世代のおばさま集団や子連れ家族、なんとおばあさんと中年男性の親子までいる。これってすごいことだと思う。私だって付き添いのはずが、息子を差し置いてすっかり魅了されている。

再びテンションがあがり始めた息子は、
マスカット
タッタ
サヨナラバス
栄光の架け橋
好きな曲のイントロが始まるたびに、ハッとして笑顔でこちらを振り返る。そして少し照れながら、小さく口ずさむ。

そうこうしているうちに、なんと2時間半が経っていた。一時は諦めかけた、ゴール。感無量だ。息子は、「ゆず、ばいばい、たのしかったよぉ…」と眉を八の字にして手を振っている。

そろそろ出ないとさすがに時間がまずいな…と荷物をまとめ始めたとき、アンコール2曲目で「少年」のイントロが流れた。ああ、エースコックの歌だ!懐かしい、と完全に油断した。

つまずく事もたくさんあるだろう
だけどただでは起きない心に決めてる
強くなんてなりたくない
自分らしく温かく生きていこう
いくら背伸びをしてみても
相変わらず地球はじっくり回ってる
今自分に出来る事をひたすらに流されずにやってみよう

ぐわー
それ、それですね…!
胸の奥深くに、染み渡るような歌詞。それだけ聴き終わると、渋る息子を説得してライブ会場を後にした。

▷▷▷

帰り道、ドームを出て、デッキを歩く。「たのしかったね。いっしょにこれてよかったね。パパに、つれてきてくれてありがとうっていう。」思わず、繋いだ手をぶんぶんと振る。「ママもめちゃくちゃ楽しかったよ。ゆずが大好きになったよ。ありがとう。」

そんないちゃいちゃトークをしていたら、後ろから若い女の子がやってきて、
「あの、これ、取れたんで。良かったら。」と、アリーナ席で取ったであろう虹色のテープを息子に手渡し、走り去っていった。ふんわりと優しい余韻を残して。

息子が私の目を見て、左手をあげる。
なにー?と聞くと、にっこり笑って「まま、ゆずライブ、せいこう」とハイタッチしてくれた。人生初ライブ、成功で良かった。

好きなことを、好きなだけ。
2019年は、家族のwishリストをひとつずつ叶えていきたい。身ひとつで、自分の中に幸せを。

#令和元年にやりたいこと
#子育て #好きなこと #ライブ #ゆず #ゆずドームツアー


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