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昭和の小学生の「クチコミ」がすごい。

時代環境で育つもの


昭和の小学生だった私。

友達の間の情報は遊びでも怖い話でも、基本クチコミだった。

よく覚えているのは「口裂け女」か。
「本当にいるなら、ニュースなどでもやるはずだ」という存在否定派もいたし、「いやいや、実際に見た人がいる(→と噂で聞いた)」と真剣な子もいた。
口裂け女に出会った時、何を言われ、どう答えるとどうなるか、どうすれば回避できるかなどの情報も全てクチコミだった。

「○○から聞いたんだけどさ~」とか
「▲が、□から言われたらしいんだけど~」とか、
「隣の学校の友達によると~」とか
「友達の友達のいとこが~」とか、
「会話」を通して情報が少しずつ、確実に広がっていくのだ。


今は、流行がマスコミ主導になるきらいがあるが、当時は大きな話題は口コミから広がったものにマスコミが追随する感じだったかと思う。
小さな話題は、地域の中で留まったり、もしくは、地域によって少しずつ内容が違っていたりで、「口コミ」の神髄っぽいではないか。


中学生になり、違う学区だった子に出会うと、「ドロケー」だったか「ケイドロ」(刑事と泥棒の略。今思うと「逃走中」の原点)だったかと話したりしたものだ。(「マック」か「マクド」か問題的な)。

方言がどのエリアを境にして発生しているのか?! ではないが、文化的な区切りが、まだらというかグラデーションというか、そういう伝言ゲーム的な部分を経て変化しているのが、身近でわかるのがおもしろかった。

そして昭和に幼少期を過ごした人は、幼いころから「コミュニケーション能力」や「情報選択能力」が試され、必要とされていたように思う。

口コミで多くの情報を得るためには、対面の会話が必要だし、内容によって相手からの信頼も必要だ。
情報を単純に与え、受け取るのではなく、そこにはリアルな人間関係がある。

口コミ情報には目に見える形の根拠がないので、それを信じるか信じないかの判断が必要になる。
日頃の様子から、相手が正確なことを言う人か、二次情報、三次情報なのか等、信ぴょう性のスケールは必要だった。(親兄弟にも話して反応を見たりもあったな)

「そうなの?! わたしはこう聞いたよ」「でも○ちゃんと▲ちゃんは、こう言ってた」「○ちゃんなら信じられる」とか、「■ちゃんは大げさだから」とかを繰り返し、情報を集め、精査していく。

場合によっては、その情報が巡り巡って、情報源にまた戻っていく。
「△ちゃんが、誰かから聞いたみたいだけど…」って前振りのあとされた話の発信元が実はその話をされた子で、(あたしが話したことじゃん)って思ったりとか(→経験あり)。



ともかく、そういった情報の輪がいくつも出来て、一番重なり合っている情報が固定化されていく。
他の部分は淘汰されたり、もしくは地域差とか世代差にもなったり。(上に兄弟がいると上の情報が基準になりがち。また、「中学生のお姉ちゃんが言ってた」と主張されると重みが増して反論しにくくなる)

多数派が基準になるのは当然だが、そこに至るまでの過程で、多くの人のふるいにかけられている感はあったと思う。

だから、今、ネットで、根拠に乏しい情報さえも曖昧さが排され、文字として瞬時に広がることが恐ろしい。
しかも、昭和の口コミとちがって、発信元は誰にも身元を明かさず、なんの責任もリスクも負わず、意図的な発信が簡単に出来てしまうのだ。


にもかかわらず、「みんなが言っている」とか「これが常識」と書かれると、それが実は「責任を持たない匿名の一意見」かもしれないことが見えにくくなるのがネットの怖いところだ。

「多様なものの見方」や「判断基準」が自分の中で育つ前に、ネット環境に触れる子供が心配になるのは当然と思う。(中学からスマホを持たせた娘にもそう思う)

ネット情報をネットで精査することもどうかと思うのだが、実際のところ、わたしも含めて多くの人がその手段を使っている。
もちろん正しい情報もあるので、そこに辿り着ければいいのだが、それをするのも経験や知識が必要で、また、結構な手間だったりする。


本や新聞は、責任の所在が明らかなうえ、形として残されるものだ。
それに、長年培ってきたルールがある分、オワコンと言われても、今でもわたしのなかでの信頼は大きい。(というか、そこに大きな存在意義があると思うので、業界には矜持を持っていて欲しい!)

ともかく、今できる抵抗は、信じられる情報源を複数持つことだと思うが、これもそれも、一人一人の意識次第だ。

メディアリテラシー教育がもっともっとネット上で叫ばれないと、無法地帯で誰が何を守るべきかすら、わからなくなりそうだ


はっきり言えるのは、わたし自身は、ネットもスマホもない時代に多感な時期を過ごせてよかったということだ。


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#コミュ力 #新聞が好き





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