桜餅に思いを馳せる
好きな食べ物は桜餅。
しょっぱ甘いしか勝たん。
僕の人生は、甘くもしょっぱくもない、
無味寄りのほろ苦いものだけど。
そんな僕の日記。
僕以外誰も見やしないが、誰かに読まれることを前提としてるようで痛いのではないか、と危惧した時期はとうにすぎた。それはもう仕方ないことだ。
僕の生きた証はこのくらいしか残らないんだから。いつかの僕がこの日記を見つけて苦笑いしてることを祈る。
僕はとにかく結論に辿り着くのが遅い。
回りくどく、蛇足が本筋になっている。
夏休みの宿題で絵日記を書かなくてはいけなくて、絵も日記も苦手でマスが埋まらなかった、あの夏以降に、苦肉の策でこうなったのだ。
「今日もうちの花がきれいでした」だと一行で終わってしまうから、
『今日もうちの庭とは呼べない、自転車一台分のスペース置かれた花壇の花が綺麗でした』と書けば、三行は埋まる。
明日になれば、花壇の花がのあとに昨日よりを足せばいい、そんな姑息さを身につけることしかできないやつなのだ。
さて、本題だが、一向に面白くはなれていない。
そもそもなり方がわからない。
参考にしたくとも、
テレビもない、ラジオも聞かない、ネットにもあまり詳しくない。
(スマホは一応持っている。)
オラこんな生活嫌だ♪と歌い出したくなるほど何もないから調べようがない、スマホだって外で一回動画見たら制限かかる、連絡のみ使用。(連絡は来ない)
働きたくないだけなんだ、
楽しそうなことをやってみたいだけなんだ。
そのやり方がわからない、と悶々と過ごして夜が明けた。
ああまた、
単純作業のお出ましだ。
僕の人生は毎日がベルトコンベアの上を流れて流れて。ただ流れてるだけの単純作業。
何にも楽しくはないが、
大きなジャムパンが攻めてくることはないし、
きゅうりの数で怒鳴られることもないからいいのよ、っていつか母が言ってたからいいのだ。
ぼんやり母の背中を見つめながら、
桜餅の口だが、販売時期は当に過ぎている。
サクラモチタベタイ、と呟いてしまった僕に、
母親が、近所の人からもらったらしい夏みかんをくれた。
夏みかんをよっつもらったの、と何故か嬉しそうに語る母。誰かの何かだ、母が好きだった人だ。
子供ながらにこの人癖強いんだなって思ってた。
夏みかんはすっぱくてほろ苦い夏の味がする。
桜餅を食べることに特に意味がないのなら、年中売って欲しい、と願いをこめて。
もう一度。
あまじょっぱいしか勝たん。