マガジンのカバー画像

超短編小説もどき

10
小説もどき?のもの。
運営しているクリエイター

#超短編小説

7月8日

7月7日。七夕。 織姫と彦星は会えただろうか。 憎いくらい綺麗な星空へ思いを託す。 逆さま向いたてるてる坊主と共に。 「1年に一度くらいがちょうどいい」 そう言って出て行った人を待つ私はおかしいのか。 「晴れてないと会えないらしいから、てるてる坊主作った。私のは効力ないみたいなんだけど」 あれから一年が経つのか。 本当に効かないてるてる坊主は、逆さに吊るしても綺麗な星空。 晴れようが雨がふろうが会えてるはずの私たち。 織姫と彦星だって、雲の上にいるからほんとは天

上っ面に針

パァン、と破裂した水風船みたい、その下にはそれぞれ、隠した顔があるってさ。 非常事態が長く続けば続くほど、破裂してゆく水風船。生温い水がポタポタ落ちて、水滴辿ればあんたへたどり着く。 「自分だけは大丈夫だって思ってた?」 「ちっとも変わってない。強いて言うなら、騙すのが少し上手くなっただけ。」 「いつまでも、自分だけが主人公のつもり?」 だからあなた、嫌いなの。底が浅いからって、クスクス笑う、私だってあんたは嫌いだ。 何もかもわかったフリして、全部を打ち消していく

冷たい優しさ

「僕は何も変わらないよ。どうしたの?」 大好きだった優しい目が、とてつもなく冷徹で、まるでアンドロイドみたいだな、計算している、と思った日から、離れようと決めた。 わたしは、利用されたくない。あなたの優しさを誰かに見せつける格好の相手なだけになりたくなかった。こっちは傷ついて、あなただけが得をする。そんなバカなことを許せなかった。 好きだった。大好きだった。あなたの優しさに確かに救われた。 でもわたしじゃなくてもいいなら、他でいいじゃない。きっとまた同じように騙されて