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#10 シナイ山で死にかけた話⑤

カイロ市内に到着しまずは現地の生活に馴染もうとした私たちは、根がクズなこともあり、あっという間にエジプト人ダメダメオジサンと類似した生活を送り始めました。

安宿で起きると外に出て、露店でコシャリを食べ、適当にふらついて、シーシャ(水タバコ)を吸い、ティーを飲み、バックギャモンをプレイして、夕食(まあまあ1日2回コシャリ)を食べ、適当にふらふらして宿に帰り、寝る。

毎日色んな人に絡まれサブストーリーが発生するので、何もしていないようで色々なことが起こる生活です。
 
とは言え一カ所に留まっていてはバックパッカーではないので、移動はマストです。

この旅は最終的にトルコのイスタンブールから抜けて日本に戻ることだけは決めているので、エジプト国内を回ったら、意識的にはトルコに向かってじわじわと移動をしなければなりません。
 
日常に起こるサブストーリーや立ち寄った各地各国の話をしていては、永遠に今回の本題であるシナイ山には着きません。

すでに「シナイに着かない話」と揶揄され始めたこのシリーズですので、エジプトと言えばやはりピラミッド、ピラミッドに行った話をしてシナイ山シナリオに進みたいと思います。

え?ピラミッドってこんな所にあるの?

ご存じの通りピラミッドはファラ男のお墓です。

ピラミッドは砂漠地帯に広範囲に点在しているのですが、有名どころは「ギザのピラミッド」「3大ピラミッド」と言われるクフ王、カフラー王、メンヘラ王、違ったメンカウラー王のピラミッドで、これらは並んで存在しています。

よく写真で見るスフィンクスもここにあります。
 
最も有名なこの「3大ピラミッド」はカイロの市街地に面した至近距離にあり、市街地が切れて砂漠地帯に入る入口にあります。

写真は背後に拡がる砂漠地帯をバックに撮影することが多いので砂漠の真ん中にあるイメージになりますが、逆サイドはめちゃくちゃ市街地でこれはちょっと萎えポイントになります。

スフィンクスも道路沿いにあり、スフィンクスの向かいにはケンタッキーフライドチキンの店舗があるのは有名な話ですね。

スフィンクスのお出迎え

カイロ市街ど真ん中にいた私たちはバスか値段交渉したタクシーかでピラミッドに向かいました。
 
最初に見えてくるのは前述した通り、道路沿いにあるスフィンクス。
 
思わず出た声は、
 
「小っちゃ!!」
 
シンガポールのマーライオンはよく「世界三大がっかり名所」に挙げられますが、スフィンクスも負けず劣らず小さい。

しかもこの時スフィンクスは改修中だったのですが、日本の工事現場でも良く使う青色のビニールシートがエプロンのようにスフィンクスの首から下に巻かれていて、それが更にがっかり感を際立たせます。

観光資源なのにそれを全く意にも介さないのもエジプトらしいところです。

皆さん、ピラミッドを見に行くことがあったら、スフィンクスへの過度な期待は厳禁です。

ピラミッドまでの道のり

エプロンスフィンクスにお出迎えされてバスかタクシーを降りると、ピラミッドまでは歩いても行けなくもない距離だが、少ししんどそうな距離でもある。

流石に世界的な観光地ということもあり、この界隈は観光客相手の商売人ばかり。
 
「俺が案内してやる」と空港と同じく現地の方が次々に群がってきます。

公式な入場料や案内の相場をリサーチしてからでないと絶対ボラれるので、基本はスルーです。

だいたい相場感が解ってきたころに、ラクダを連れた業者が接近。「俺たちのラクダで行かねえか?」うーん、悪くない。
 
しかし値段がなんとなくの相場感よりも高い。

値下げ交渉を続けるも中々こちらが期待する値段まで下がらず不毛な数字のぶつけ合いが続きます。そうこうしていると、横から別の業者が横やりを入れてくる。

「俺たちの馬に乗って行こうぜ!値段もこうだ!」

破格の値段。

ノロいラクダよりも馬で疾走する方がクール。

変に安い場合は結局罠られるパターンが多いのですが、わずかな期待を胸にこれにしようと心が動きました。
 
マナブとTは怪しんでやめとくと言う。

ユウキを振り返ると、

「俺、馬乗りたいっス!!」

二手に分かれて私とユウキは馬ることに決めました。

業者の兄ちゃん付いてひとけの無い方に進む。
 
開けた場所に出ると、そこにはその業者の兄ちゃんの仲間と、馬。

サラブレッドサイズの馬を期待していたけど、そこにいるのは2回りくらい小さな痩せた馬、それに申し訳程度に簡易な鞍(クラ)が載せてある感じ。

まあ、値段的にも仕方ない、完全な嘘じゃなくて良かった。
 
よくある乗馬体験のようなレクチャーは当然ない。
進むはこう!止まるはこう!くらいの雑な秒の説明を受け、ライドオンです。

業者の兄ちゃん、おっさん達はいきなり全速で走り出す。私とユウキも戸惑いながらそれに付いていく。

不思議なものでこのくらい雑な方が乗れたりするものです。
 
乗馬体験のように、轡(クツワ)を取られるわけでもない、前の馬にパカパカついていくわけでもない、ピラミッドを横目に砂漠の中を自由に爆走できるのは控えめに言って最&高です。

気分は暴れん坊将軍か騎馬武者で、当時の日本の馬は当然今のサラブレッドクラスの体格でないことを考えるとよりリアリティもあります。

リフレインが止まらない 松田聖子

先ほど横目でと言いましたが、業者の兄ちゃんの100メートル以上離れた遠巻きの先導は、ピラミッドに向かっていると思いきや方向がずれている。

ピラミッドを過ぎて、嫌な予感がしつつ付いていくと、着いたのは平屋の建物。

中に入ると、絵や絨毯が置いてあります。
 
業者のおっさん
「どれにしまっか?」
 

(でた~~!これありきの値段ね!まじいらねーーー!)
「ワイらは貧乏学生やし、この後もリュックひとつで旅があるから買えんのやで。」
 
おっさん
「なるほどね!ならいくらなら買いまっか?」
 

(話通じてませんやん・・・)
「いや~~、申し訳ないけど買えませんねん。。。」
 
おっさん
「この絨毯とかどうでっか?ペルシャからの舶来もんでっせ~。これ彼女さんに買って帰ったら喜びまっせ~!ZIGIZIGI(ズィギズィギ)も盛り上がりまっせ~(にやぁ)。」
 
どうもこのZIGIZIGI(ズィギズィギ/ジギジギ)というのは、日本語で言うところの「チョメチョメ」と同義語のようである。


「確かにこれは良いペルシャ絨毯、、、いや、いらんて!」
 
おっさん
「まあまあ、美味いティー入れますさかい、とりあえず飲んで、ね!」
 
睡眠薬でも入ってるかと思えば先におっさんが飲むし、飲んでみると普通に美味い。

この不毛なやりとりが30分から1時間ほど繰り返され、解放されたいメンタルはマックス、ため息をつきながら振り返るとユウキが金を払っている、え??
 
ユウキ
「岡野さん、俺、家族とか長崎大の友達にキムチ買って帰るって約束してたんで、代わりにこのターバンをお土産にするっス!!安いし!」
 
ガーゼみたいな布切れと頭に付ける輪っかがセットになった低品質ターバンセット、日本で言うとちょんまげセットみたいなのをユウキが8セットくらい買っている。
 
それ、いるかね??ユウキが家族そろってそのターバンを付ける姿を想像すると相当にシュールな絵面である。キムチの代わりがターバンもよく意味がわからない。


 ともあれ、何かを買ったということに業者のおっさん達も一応は満足。

再度馬に乗って小屋を離れ、ピラミッド真下に到着することができました。

Egyptian Family

別れの儀
 
おっさん達は馬で去りながら涙の別れです。
 
私とユウキ
「ZIGIZIGI~~!!」

おっさんS
「ZIGIZIGI~~!!」
 
下ネタを知ると世界が平和に


ここからの記憶はあんまり無かったのですが、ユウキに確認すると、北斗の拳サウザーごっこをしたり、ピラミッドの中に入ったりはしたみたいです。

記憶に無いということは、そこまでガッカリもしなかったけど、想像以上でも想像以下でもなかったのでしょう。

ちなみにこれ以降、ユウキのVUITTONボストンバックの3割くらいはターバンセットで占められることになりました。

ピラミッド編、如何だったでしょうか?書き終えてピラミッドにほとんど触れてないことに自分で驚きました。
 
いよいよ次回からはシナイに向かいます。
それでは、ZIGIZIGI~~。

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