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詩集

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#母と息子

朝の戦争

朝の戦争

「七時やで」二十歳の次男を布団の上からゆすって起こす。

続いて隣の十八歳の三男の部屋に行ってまた起こす。返事はない。

二分間、次男と三男の部屋を行ったり来たりする。たいがい次男が、この間に起きてくれる。かけ足で台所に下りて、みそ汁を温めて、テーブルに置く。

「弁当忘れるんやないで」と声をかけつつ、二階に上がって三男の布団をたたんでゆく。いつもなら掛け布団はすぐたためるのに、今日はしっかりとつ

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散らかっていても

散らかっていても

部屋にはカセットテープや灰皿、マンガに楽器が散らかり放題、開け放った窓から雨風が吹き込んで、びしょぬれになっても大いびきで寝ていたことのある息子。安物の赤いマットレスが色落ちしだして、シーツは真っ赤。ベッドから血のように赤い水がしたたり落ちていました。

その部屋を整理していたら、恋愛と結婚をめぐる本が出てきて、息子がその中のアンケートに回答を書き込んでいます。「部屋のインテリアをコーディネートし

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息子を想う短歌

息子を想う短歌

口数は 少なくなれど吾子の弾く テンポ早きベースに我も和みぬ

厨房の 仕事を語る吾子は今 少年期を過ぎ 青年の面差し

幾あまたの 豪華な花を踏みにじれば 失意の吾子の 希望とならぬか