こんなの間違っている

「こんなのおかしい!!」の罠 ー 「餌食」を求め続けるマーケット。

 「新型コロナウィルス」後のアメリカ主導の株価の急反発。NYダウは1月末に▼600ドル急落したと思ったら、その後たったの3営業日で△1,000ドル急反発。ナスダックやS&Pに至っては過去最高値を更新である。筆者も含め、これをどう解釈して良いのか困っている方も多いと思う。

 危機終息の目処がたったならいざ知らず、実需の減退から原油やガスの価格が下がったり、サプライチェーンの分断から各国で工場が操業停止したりと、危機はむしろ今も拡大の途をたどっているのに、である。「現実と株価の乖離」という観点からは、今回の「違和感」が凄い

 思えば「損切丸」現役中も、この「違和感」は増え続けていたが、これが「今のマーケット」なのだろう。ネット中心の証拠金取引に加え*HFT(高頻度取引、High Frequency Trades)やAI取引が広がっている株・為替取引がその代表だ。前稿で「人間的取引」「機械的取引」の2パターンを提示したが、今回の相場を見て、特に短期間の相場については「人間的な考え方は有効じゃない」とつくづく思った。その代表が「感情」だと思うが、「こんなのおかしい!!」とムキになるのが1番危ない

 株のHFTの担当者に話を聞いた事があるが、このシステムは顧客の買い注文の先回りを基本に設計されているため、買いにバイアスが傾き易い、という。どうも「実需」の買いが減少する売り局面では機能しにくいらしい。この点も近年の大幅な株価上昇に一役買っているのかもしれない。

 このマーケットの変質には今の「過剰流動性」が大きく関係している。つまり機械というものは、**構築された「プログラム」にお金の投入が続けば稼働し続ける、と言う側面。ギアの入った車にガソリンを補給し続ければずっと走り続けるのに似ている。

 **例えばこの2~3年の投資実績に基づけば、株では「下がったところを買う」が正解だったわけで、この「最良のプログラム」が多く稼働している蓋然性が高い。それらが一斉に稼働すれば、今回のように下落前よりも株価が高くなるような事態は起きうる。上手くいく限り今後もっと極端になっていくかも。つまり「売られたら買いプログラム」。分析も何も関係ない。

 過去の相場では銀行などの金融機関がお金を供給してきたので、一定量に達すれば上げ相場は終わった。いわゆる「弾切れ」である。しかし今は過去のどの時点よりも巨額なお金がマーケットに供給されており、しかもその供給元が通貨発行権を保有する国家だ。「弾切れ」の見通しが立たないのである。プログラムは「弾」が続く限りマーケットに投入し続けるだろう。そこに「分析」や「感情」は存在しない

 そんな中、「損切丸」では金利市場に比重を置いている。専門だったこともあるが、証拠金取引HFTが浸透していない分野であり、比較的「機械的相場」の影響を直接受けにくい(株式市場などからの副次的影響はある)。今回の金利上昇局面で動きが顕著だったのが、**アメリカ、イギリス、オーストラリアのいわゆる「アングロサクソン国家」だ。

実質金利G8(after CDS)@06Feb20

 確かに中国から地理的に遠いこともあり、サプライチェーン分断の悪影響もアジア諸国よりは軽い。イギリスについては、このタイミングでのBREXITはラッキーだったとも言える。政策決定の自由度が増し、中国との緊密さを増したユーロ圏経済の打撃をもろに受けずに済むからだ。アメリカに関しては、中国への打撃はむしろ覇権争い上有利、といえることもあろう。

 **この3国はイギリス起源のいわゆる Commonwealth であり、(特に軍事などの)情報共有が密な国だ。穿った見方だが、今回のパンデミックについて何らかの事前情報を共有していた可能性がある。だから対応は迅速かつ落ち着いており、日本などに比べると自信満々だ。そういえばアメリカのワクチン開発はあまりに早すぎないだろうか? 実は既に作ってあって、高く売れるタイミングを探っていたりして(あまり笑えない話だが...)。

 「プログラム」なのでNYダウが上がれば日経も買い、となるのだろうが、果たして大丈夫か。3営業日で+1,000円。確かにお金はうなっているが、「人間」が見ると、中国だけでなく日本でさえ外出する人の数は減っているし、株価が急反発する事態には見えない。もし全てひっくり返すとすれば、それはデフォルト、つまり企業などの倒産が起きた時だろう。ただ、ある銘柄の株価が「0」になっても「機械」は痛くもかゆくもない。被害を被るのは投資家である。

 しかしこうなると「米中貿易戦争」も「イラン空爆」も「パンデミック」も、極論すれば株価には何の関係もないことになる。いくら「こんなのおかしい!!」と叫んでも無駄。「損切丸」「罠」にはまらないように気をつけていこうと肝には銘じている。特に短期的な動きについて多少いらいらするのはしょうがない。

 ただマーケットがいかに「機械的」になっても、全てのものはいずれあるべき価格に戻ってくる事だけは間違いない。気をつけなければいけないのは「過剰流動性」の影響などでタイムスパンが伸びている可能性だ。オーバーシュートの度合いなどを測る手法は少し変えていく必要がある。あとはそれを利用するか、見送るかの判断だが、そこは各々の好き好きになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?