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続・「憧れのアメリカ」の終焉 ー 「アジアの時代」到来か?

 「憧れのアメリカ」の終焉。ー「音楽」「映画」等のソフト産業の変遷と共に。|損切丸 (note.com) の続編。

 今日(1/7)NHKスペシャルで "YOASOBI" のロス公演を特集していたが、アメリカやアジアの国々でみんな「日本語」で歌っている姿に衝撃を受けた。BTSが "Dynamite" でビルボードで1位を取った時も歌詞は「英語」だったので「さすがあの国はマーケッティングに長けている」と思ったものだが、*随分時代が変わってきた

 そもそも「アイドル」の歌詞はがっちり日本語で固められており、英訳すると曲相が崩れそう。そう言う意味では日本語での歌唱は不可避だった訳だが曲の魅力がそれを上回ったということなのだろう。そういえば英語が基調とは言え ”New Jeans" なんかも歌詞が一部韓国語だったりする

 筆者がバンド活動を始めた1980年台後半はそれこそアメリカ全盛期小林克也さんの「ベストヒットUSA」が大人気だった。マイケルジャクソンのミュージックビデオの新作は出る度に大騒ぎになり、” Thriller" が出た時はまるで一本の映画のようなその出来に度肝を抜かれた。当時はアメリカの曲を随分コピーしたりして、まさに「憧れのアメリカ」「完全プロ志向」(苦笑)の若者がギターケースを背負って闊歩する姿が格好良いと見做され、「イカ天」なんてバンドオーディション番組もあった

 筆者が年を取ったせいもあるが、"American Rock" はニルバーナからメタリカ、レッチリ(Red Hot Chilli Peppers)辺りで "認識" が止まっている。ポップミュージックでもブルーノマーズ、ジャスティンビーバー、テイラースイフトぐらい。改めてダウンロードしたい曲もあまりないし、気が付けば新しい曲は日本勢ばかり。明らかに日本のバンドがやっている事の方が面白い。選択肢が増えた今、若い世代も(ラップ系が好きな人を除けば)わざわざアメリカの音楽を聴こうとは思わないのではないか

 サカナクション以降だろうか、とにかく日本のミュージシャンは「センス」がいいと感じる。1曲の中で数回の転調(それもプログレ級に気持ち悪いやつ)をサラッと織り交ぜていたり、それでいてポップさも保っている。かと思えば*「アイドル」のメロディーはペンタトニック、日本で言う「ヨナ抜き音階」=ファとシを除いた音階で出来ていたり、聞きやすいように工夫も凝らされている。音大出の King Ngu もそうだが、髭男とか Vaundy とか藤井風なんかも膨大な才気を感じさせる

 楽器で弾いてみるとわかるが、演歌なんかで多用されている音の並び。だがリズムを変えると古典的ヘビメタの曲に変わったりする。ギターの初心者なら一度通る道だが、適当にギターソロを弾こうと思えばペンタトニックにしておけば大抵大丈夫。半音上がりのファとシを除くことで安定した音階が出来る仕組みだ。これから楽器を始める人、試しにどうぞ

 元々日本ラーメンとかアンパン、カレーパンなど外来のモノを独自のアレンジで進化させるのが得意な国。それでもエンタメ業界ではまだまだ "アメリカのマネ" という扱いに過ぎず大きな壁に阻まれてきた。筆者が大学生の頃は「日本のバンドなんて…」という一種の蔑みがあったのも事実で、人気絶頂のピンクレディーがビルボードに挑戦してあえなく撃沈、なんてこともあり "彼我の差" はなかなか埋まらなかった

 それが今になって**昭和歌謡やユーミンなどの「ニューミュージック」に脚光が当るのは興味深い。紅白で50年振りに演奏されたキャンディーズなんかも実際コピーしてみるとえらく難しい。当時のアレンジも聞き返すと、ブラスなんかガンガン吹いていてど派手。ある意味驚く

 **そういえば昨今流行っている ”新しい学校のリーダーズ”(賛否両論あるようだが筆者は好き)も昭和歌謡がベースだが、火が付いたのは国外。まあそれも演奏力など実力が伴ってこそ。K-POPが典型だがやはりダンスや楽曲に力が無いと海外では売れない。その点は一部芸能事務所が牛耳っていたこの国のエンタメ界にも「失われた30年」があったということだろう

 ”不幸は芸術の母”

 昨今の日本プームの "種" になったのはやはり「平成デフレ」か。確かに好景気で浮かれている国ではエンタメは育ちにくい。決定的役割を果たしたのが「アニメ」だ。かつては海外にも一部のカルト的ファンがいたが、それがジブリ作品をきっかけに一気に大衆化。近年のCGなどを駆使した作品を見ていると、かつての "マイケルのMTVの衝撃" を想起させるものがある。どっぷり嵌まる人が続出するのも当然だろう

 未だに「米ドル」が中心のマーケットに話を戻すと ”何かが壊れそうな気配” は強く感じる。「プラザ合意」(1985)以降「ドル安」をテコに繁栄を極めてきたアメリカだが、ここに来ての「ドル高」転換はそれだけ「売る物」が減ってきた証拠GAFAMの支配力は相変わらずだが、エンタメなど米ソフト産業の衰退は目を覆うばかり。取って代わると目されてきた中国も自らコケて、いよいよ世界は混沌としてきた。インドでは世界を統べることは不可能だし、これは日本にとってはある意味チャンスでもある

 「ソフトを制する者が世界を制する」

 「損切丸」も退職して7年。最近感じるのはようやく "体の芯" の疲れが取れてきたこと。やっと新しい音楽を聴こうという気になってこんな note. も書いている。娘が聞く曲も日本のものが中心だし確かに面白い。エンタメ産業は経済のごく一部には過ぎないが「アニメ」を切り込み隊長に「日本復活」の狼煙になることを強く期待している。筆者も含め還暦を超えるロートルは「Z世代」の邪魔だけはしない事。彼らは本当に「センス」がいい

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