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米国債市場で繰り広げられる「仁義なき戦い」。ー「高金利国」でも続く ”小噴火” 。

 英国人の同僚に ”お勧めの日本映画” を聞かれて迷わず答えたのが深作欣二監督の「仁義なき戦い」。理由は日本社会の特異な企業文化を知るのに最適だから。金子信夫氏が演ずる ”とぼけた親分” はその象徴であり、JGB(日本国債)を理解するのにも役立つはず。 ”ドス” を ”ペン” に置き換えればまさに日本の銀行そのもの。別に暴力映画が好きな訳ではない(笑)。

 さて米国債市場が荒っぽい。特に2年債を起点とした「イールドカーブ」は無茶苦茶であり、2年債は昨日(10/28)@0.56%まで売り込まれ、10年、30年は逆に@1.54%、@1.95%に低下する有様。それが引けに掛けて、2年債はしれっと@0.47%まで戻し、2-30年のイールドスプレッドは半日で@139BP → @149BPと+10BPも動いた。まさに「仁義なき戦い」

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$  FF- 2- 5- 10 -30y(グラフ)28 Oct 2021

 @0.40%台から2年債を買っていた向きや「イールドカーブ」平坦化の行き過ぎを狙った逆張りの「スティープニング」取引の「損切り」を巻き込んだのだろうが、それにしても酷い相場付だ。株やFXに比べると "お上品" と思われている金利市場ではなかなかお目にかかれない動きである。まあそれだけ注目されている訳で、ニューカマー(新規参入者)が "洗礼" を受けたのかもしれない。「中途半端な "レベル感" は危険」の典型とも言える。

 最近話題のTIPS(物価連動債)も強烈5年BEIは半日で@301BP → @293BP▼8BPも動いており、こちらも「仁義なき戦い」

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 アメリカ以外に目を向けると世界各地の「金利山」で ”小噴火” が起きている。特に注目されるのは「高金利国」と認識されている国々。既にブラジルやトルコは2桁金利で ”炎上中” だが、各地に ”飛び火” している。

 まずは「オセアニア」ニュージーランドのCPIが4~6月@+3.3% → 7~9月@+4.9%と急伸したことからにわかに「利上げ」機運が台頭

アジア国債@10.29

 一時米国債金利を下回っていたオーストラリア国債もさすがに経済的結びつきが強いニュージランドがそういう状態だと引っ張られる。RBA(Reserve Ban of Australia、オーストラリア中銀)が債券買取予定額を明示しなかった事が「利上げ」への憶測を呼び、本日(10/29)10年国債は@2.04%@2%を突破ニュージランドの背中を追っている

 そしてヨーロッパ、特にラテン国家の多い南欧だ。昨日発表となったスペインのCPIが@+5.5%と29年ぶりの高騰となり、市場がざわついている。

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 南欧の「高金利国」ドイツスイスと違って財政基盤が弱く、長らく「インフレ国」と位置づけられてきた。今は「ユーロの城壁」に守られているが、逆に言えば「通貨安」による輸出回復ができず、政策の柔軟度は失われている「通貨安」の圧力が「金利高」に転嫁する形で市場が形成されているが、ギリシャがドイツと ”喧嘩” する理由にもなった。ブラジル、トルコのようになっていないのは ”僥倖” なのか、それとも ”不幸” なのか...

  ↓ 2020年10月の国債金利と主要株価

実質金利G11(after CDS)@21 Oct 20

主要株価 30 Oct 20

 この1年を振り返って見ると金利も株価も随分高くなった(中国以外)。特に国債金利の低さは ”異常” であり、おかしいのは株価ではない、金利だ!! ↓ (2020.11.25)という「損切丸」の主張も納得頂けると思う。

 「イールドスプレッド」が算定の根拠ともなる株価「過剰流動性」とも相まって多分に「金利」の影響を受けてきた。その意味で ”主犯” は「金利」であり中央銀行株価は資産価格上昇を含めた「インフレ」を先取りする形で上昇しており、それ自体が「バブル」かどうかは今のところ不明。むしろ ”真のバブル” は国債といっていいだろう。

 2018~2019年に「金利は死んだ」とまで言われたが、ここに来て「金利」が相場の主役になるのは隔世の感はある。「仁義なき戦い」もある程度はやむを得まい。だが実はこれは単なる「序章」の可能性もある。

 一体どんな ”地獄” (天国?)が待っているのやら...。

 1つバロメーターとして注目するのはダンマリを決め込んでいる "JGB" 。何だかんだ言っても米国に次ぐ巨大な国債市場である。今は「1,000兆円もの巨額預金」をバックに "日銀-財務省-邦銀" の強力タッグで金利を押さえ込んでいるが、縮小し始めた「日銀バランスシート」。↓(10/11)も気になる。。ここに ”火” が回るようだと大火事になるかも。本当の「仁義なき戦い」はここからかもしれない。「円安」は1つのきっかけにはなる。


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